スタートアップへの転職、やめとけ言われる理由と志望をあきらめないために準備すべきこと

スタートアップへの転職、やめとけ言われる理由と志望をあきらめないために準備すべきこと

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転職は人生の大きな転機のひとつであり、新しい環境に飛び込むには不安がともないます。迷いが生じて、家族や友達に相談する人も多いことでしょう。スタートアップ企業への転職では、「その会社で大丈夫? やめておけば?」と引き止められることがあるかもしれません。ここでは、それでもスタートアップに転職したい人のための対策を考察します。

1.スタートアップの転職、やめとけと言われる理由

スタートアップ企業への転職「やめとけ」とアドバイスをする人たちの多くは、転職者に対する親切心から意見を述べています。しかし、スタートアップに対するうわべの印象から言っている場合もあります。

転職の決心が揺らいで、せっかくのチャンスを逃してしまうのはもったいないことです。慎重に企業研究と自己分析を行い、成長の転機をつかむべきです。

まず、スタートアップの転職はなぜ「やめとけ」と言われるのか理由を挙げていきます。

1-1. 理由(1):年収が大幅に下がるケース

まず「ぜったいに年収が下がるよ、これまでのような生活ができなくなったらどうするの?」と言われるケースです。

30代で結婚して家庭があり、子どもの教育費が必要になるときには、家計への影響を考えないわけにはいかないでしょう。転職先のスタートアップに魅力を感じていても迷うのは当然です。そもそも転職自体がリスキーであり、転職によって年収が上がる成功パターンばかりではありません。スタートアップは多忙であることから、年収に見合った仕事かどうかを判断することも必要になります。

1-2. 理由(2):企業の名前が知られていない

次に「そんな会社は知らないよ。みんながよく知っている会社に転職すれば?」というケースです。

世間体を気にするタイプの両親から言われがちな言葉かもしれません。有名な大企業に勤めていた経歴があれば不安にもなるでしょう。知名度の高いメーカーに勤務する友人や知人から言われた場合には、肩身の狭い思いを感じたりもするでしょう。

しかし、スタートアップには創業したばかりの企業であることから、知名度がないのは当然です。日本のトヨタやソニーも小さな町工場からスタートしました。世界的に有名なアップルやグーグルも同様で、どんな大企業も最初はスタートアップです。



1-3. 理由(3):不安定でリスクが高い

続いて「すぐに会社が倒産してしまうんじゃない? ブラック企業かも」というケースです。

スタートアップのサクセス・ストーリーが語られる一方で、成長路線の軌道に乗ることができずに倒産してしまう会社が数多く存在することも事実です。輝かしい成功は大きくメディアで取り上げられますが、失敗は闇の中に葬られます。

創業時のスタートアップは不安定であり、経営者の手腕や資金繰りによって成功が左右されるものです。しかし、上場を目前としたスタートアップは安定しています。すべてのスタートアップ企業が不安定ではないと認識し、企業の成長フェーズを見極めることが大切です。

1-4. 理由(4):人間関係がキツイ

企業にもよりますが「社長の個性が強すぎる。デキる社員ばかりで大変そう」というケースもあります。

個性的で熱意にあふれる創業者だからこそ、スタートアップは劇的な成長を遂げます。また、そうした創業者の魅力、会社のミッション・ビジョン・バリューに賛同した人間が集まることがスタートアップの特長です。高度なスキルを持つ少数精鋭のメンバーで、スタートアップは構成されています。

こうした社風があるからこそ転職先としての魅力がありますが、仕事のストレスの多くは人間関係です。創業したばかりのスタートアップはオフィスが狭い場合も多く、社長を含めた経営陣と直接ミーティングを頻繁に行います。したがって、社員との相性が悪いと居心地が悪くて続かないといえます。

1-5. 理由(5):教育や制度が整っていない

最後は「福利厚生や教育制度がなさそう。仕事ばかりで余裕のない人生になりそうだね」というケースです。

大企業のような充実した福利厚生や教育制度は期待しないほうがよいでしょう。しかし、社員の自主的な取り組みを推奨しているスタートアップもあります。また、日々の仕事自体がいわゆるOJTであり大企業では受けられない教育です。必死で学ばなければならないため、実践的な学びがあります。

スタートアップでは、困難を乗り越えて企業を成長させていかなくてはならないため、自主的に学ぶことが求められています。

2.スタートアップの先入観を取り除く3つの視点


5つの理由について考察しましたが、「スタートアップへの転職はやめとけ」という言葉に揺らいでしまうのは、自分の中に反論できる確かな答えがないからかもしれません。あるいは、スタートアップに対するネガティブな先入観にとらわれている場合もあります。

したがって、スタートアップ独自の特性を押さえ、志望する企業を見極めることが大切です。具体的には成長段階、成長スピード、プロダクトの多様性という3つの視点から「やめとけ」に反論できるかどうか検討します。

2-1. 成長ステージによってスタートアップは異なる

スタートアップには、シード、アーリー、ミドル、レイターと呼ばれる成長ステージがあります。それぞれの段階において資本金、売上高、従業員数など会社の規模が異なり、社内の雰囲気もがらりと変わる特性を持っています。

創業時のシード期は、事業の種(シード)となるアイデアやコンセプトの仮説検証を行う段階であり、創業者を含む3人程度で運営しているような非常に不安定な状態です。一方でレイター期は、上場を目前として従業員数は100人以上になり、組織や社内制度も確立して安定しています。スタートアップの成長フェーズを見極めることが重要です。

人間にも幼少期から大人までの成長段階があり、容姿や雰囲気、考え方が変わります。自分の志望する会社がどの成長ステージにあるかを把握するべきです。

2-2. スタートアップは急激な成長を遂げる

さらにスタートアップは成長が速いことが特徴です。SaaSのスタートアップの理想的な成長モデルとして「T2D3」があります。年次経常収益(ARR)の推移で毎年3倍を2年間連続、その後、毎年2倍を3年間連続の勢いで右肩上がりに増加させていくことです。

このように短期間で成長ステージを駆け上っていくのがスタートアップであり、3年後、5年後にはまったく別の企業になっている可能性を持っています。

創業時期には辛かったとしても、苦境を乗り越えて安定をつかめることがあります。逆に創業時の組織や制度が整っていないカオス状態にやりがいを感じていても、安定したスタートアップに魅力を感じられなくなって辞めてしまう人もいます。

2-3. スタートアップのSaaSには多様なプロダクトがある

消費者向けにビジネスを展開している飲料や食品などBtoCのメーカーはよく知られています。というのは、コンビニなど身近な場所やテレビCMなどでプロダクトを見かけることが多いからです。

しかし、SaaSのスタートアップ企業の多くは、法人向けのBtoBのサービスを展開しています。企業向けであること、クラウド上のサービスであることから一般にはあまり知られていません。

SaaSの中でもよく知られているのは、Sansanのような名刺管理やSFA(営業支援)のサービス、SmartHRのような人材管理のソリューションです。一方で介護、医療、不動産など特定の業界に特化したSaaSはバーティカルSaaSと呼ばれています。バーティカルSaaS企業のプロダクトは一般的には知られていないかもしれませんが、業界内における知名度が高く、多くの企業に導入されているものもたくさんあります。

このように、SaaS業界には多様なプロダクトがあることを知っておくべきです。

以下の記事では、スタートアップに抱きがちな誤解を解きながら、魅力やメリットを解説しています。参考にしてください。

3.スタートアップ企業への転職で大切な3つの軸


スタートアップの特性を踏まえて、スタートアップ企業が自分に適しているかどうかを検討するときのヒントとしては、「安定」「活躍」「キャリア」の3つの軸から考えるとよいでしょう。

上場目前の安定期に入ったスタートアップは組織体制が整い、大企業のように仕事が分業化されています。教育や福利厚生も充実しています。しかし、逆に教育によってスキルが平準化され、社員数が多いことから個性が埋もれてしまう可能性があります。安定したスタートアップは活躍の場が少ないかもしれません。

一方でまだ安定段階に入っていない創業期のスタートアップはカオス状態ですが、職種の枠にとらわれずに、さまざまな仕事にチャレンジできます。つまり、自分で会社を作り上げていく面白さがあります。

安定軸と活躍軸を踏まえた上で、どのようにキャリアを築いていくか考えることをおすすめします。3つの軸による考え方は、マーキャリのYouTube動画も参考にしてください。


4.スタートアップへの転職ですべき3つの対策

3つの軸を考えた上で、具体的にすべき対策を解説していきます。

4-1. 企業研究を徹底し、第三者からの意見も収集する

コーポレートサイト、採用サイトのチェックはもちろん、企業名で検索してプレスリリースやメディアに取り上げられた記事に目を通しておきます。業界別のメディアは企業研究の情報源として役立ちます。資金調達など投資家向けの情報にも注目するとよいでしょう。

さらに、SaaS関連のイベントやセミナーに参加すると、業界における位置づけを理解できます。みずから動いて収集する1次情報は貴重です。転職関連のエージェントに登録して、コンサルタントからの情報収集することもおすすめです。

ポイントとしては可能な限り複数の情報源から、企業像を明確にしていくことです。「やめとけ」という理由のひとつひとつに反論できるように情報を収集します。

中途採用の転職者によるインタビュー記事も参考になります。以下は、広告代理店からSaaS企業に転職した株式会社メタップス、山本京子さんの経験談です。

4-2. カジュアル面接などを通じて実態を知る


会社説明会のほか、カジュアル面接を実施している場合は積極的に活用すべきです。

SaaS企業ではセキュリティのためにオフィス内に入れない場合もありますが、できれば面接で使う会議室以外に実際の職場を見せてもらい、働いている人々の表情をチェックします。きれいなオフィス環境のスタートアップもたくさんありますが、社員の顔や目に注目することが大切です。覇気のない会社は、注意したほうがよいでしょう。

転職の場合は新卒採用のようなインターンがないため、なかなか職場体験ができません。新卒採用時のインターン経験者の話が参考になることもあります。

4-3. 自己分析を掘り下げ、成長の適性を見極める

企業研究を踏まえた上で、自分と会社のマッチングが最重要です。

例えば営業には、さまざまなスタイルがあります。クライアントの成功のために伴走支援するカスタマーサクセスが特徴の営業組織であれば、傾聴力が求められます。他にも、スタートアップのすべてが熱血的な企業というわけではなく、堅実な営業が成果をあげている会社もあります。

自分に合わない環境で努力しても報われないことが多く、せっかくの熱意やスキルを発揮できません。もちろんみずから成長して環境に適応させる努力も必要ですが、企業の成長環境に適応できずに辞めてしまうケースは避けたほうがよいでしょう。

つまり、企業の成長環境と自分の実力と成長意欲がマッチする会社を選ぶべきです。安定した大企業に勤めていたのなら、過去の安定を捨てても飛び込む価値のある環境であり、これから自分がどれだけ変われるか、成長できるかを思い描くことが必要です。

以下の記事では、スタートアップへの転職で後悔しないためのポイントを解説しています。参考にしてください。

5.志望動機の確認がスタートアップへの転職を成功させる


精神論だけで転職対策を行うのはリスキーですが、徹底的に情報を収集して企業分析を行い、客観的な自己分析をした上で、最終的にスタートアップへの転職を支えるのは「何のためにその企業に転職するのか?」という志望動機です。

以下の4つのうちで該当するものがあれば「やめとけ」と言われたとしても転職を前向きに検討してもいいかもしれません。

5-1. 志望動機(1):起業家をめざしている

自分自身で会社を立ち上げ、新たなビジネスを展開したい動機を持っている場合です。

創業期から事業拡大期のスタートアップでは、仕事が分業化されていないため、営業とともに雑務など他の業務までひとりでやらなければならないことがあります。さらに新規顧客獲得のためのマーケティングや広告展開、組織の整備、採用活動なども自主的に進めていきます。

責任が重く大変な仕事ですが、分業化された大企業では得られないメリットです。特に創業期のスタートアップで得た経験ノウハウは起業に役立ちます。ビジネスや事業について考えが深まり、起業家に必要な基盤づくりができます。

5-2. 志望動機(2):自分を成長させたい

スタートアップの急速な成長にともなって、自分自身の成長も求められます。スタートアップでは、みずから考えて行動して、さまざまな課題を解決しなければなりません。こうした課題解決の繰り返しによって、大きな成長を遂げることができます。また、経営者と話す機会が多いため、自然にビジネスの視座が高くなります。

成長するためには常識にとらわれず、時には馬鹿になれる素直さも必要です。何度も困難な状況に直面することで自分の無力さを実感して挫折を繰り返しながら、殻を破ったときに大きく成長を遂げられます。

5-3. 志望動機(3):貴重な体験をしたい

大企業で歯車のようなタスクをこなすだけの仕事を繰り返していたのであれば、スタートアップの仕事は貴重な体験です。

試作段階のプロダクトが市場や顧客に受け入れられる前にはトラブルが発生しやすいものです。一方でビジネスが軌道に乗ると状況はがらりと変わり、対応できないほどの問い合わせや申し込みが集まるようになります。この急激な変化を体験できるのは、スタートアップ転職の大きな醍醐味です。

スタートアップ企業の多くは上場を目標にしています。創業時には10人ほどだった企業が100人もの社員を抱える企業に成長し、上場するプロセスもまた貴重な体験です。

5-4. 志望動機(4):世界を変えたい

オーバーな言葉のように思えますが、スタートアップ企業の多くは大きなミッションを掲げています。例えば株式会社カミナシのミッションは「ノンデスクワーカーの働き方を変える。」です。この言葉を原動力として理想の実現のために努力しています。

転職の志望動機にはさまざまなものがあり、年収アップや前職への不満が動機であっても構いません。しかし、スタートアップ企業のミッションに共感し、大きな目標達成が動機付けになれば、スタートアップへの転職は意義があります。挫けそうになったときに支えてくれるはずです。

6.「やめとけ」に揺らぐのであれば転職の再検討を

スタートアップに限らず、転職では「覚悟」が必要になります。特にスタートアップ企業に転職するのであれば、中途半端な気持ちで転職を進めるべきではありません。これまでにない困難な課題解決には心身ともに消耗することがあり、思っていた以上にハードな仕事が待ち受けていることがあります。

徹底的に調べて考え抜いた結果「やめとけ」に対する反論がみつからず、気持ちが揺らいだままの場合は、一度転職自体を再検討すべきかもしれません。あるいはスタートアップの中で、ほかの企業の選択肢がないか考えてもよいでしょう。

求人に対する応募者は企業から採用される側ではありますが「自分の人生は自分で決める、自分で進路を選択する」姿勢で臨むことがスタートアップの転職を成功に導きます。応募段階、面接段階、内定をもらった段階のそれぞれにおいて問い直すとよいでしょう。


今回は、スタートアップ転職について解説してきましたが、スタートアップ企業が多いSaaS業界の転職実態に興味を持つ方は、下記の記事も合わせてご覧ください。

7. まとめ

スタートアップ企業への転職に対する「やめとけ」というアドバイスは、その反論を用意することによって転職のための強い動機に変えることができます。徹底的な情報収集、企業研究、自分のスキルや実績と適性の見極めが必要です。

マーキャリでは、SaaS業界のスタートアップに詳しいキャリアアドバイザーが企業情報や転職のノウハウを提供するとともに転職活動のサポートを行っています。スタートアップへの転職を考えているなら、ぜひご相談ください。



マーキャリ 編集部

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