スタートアップへの転職は後悔する? 転職時に注意したいポイントも解説

スタートアップへの転職は後悔する? 転職時に注意したいポイントも解説

スタートアップやベンチャーは転職先として注目を集めています。一方で、入社後に「こんなはずじゃなかった」と後悔することが少なくありません。特に大企業から転職するときには、企業文化がまったく異なるため要注意です。

本記事では、営業職の方がスタートアップやベンチャーへ転職する際、どのような後悔をしがちなのか、後悔しないためにはどうすればいいのかというテーマを取り上げます。

1.スタートアップの転職の後悔は「勘違い」から生まれる

転職の後悔の大半は「勘違い」から生まれます。

勘違いを別の言葉にすれば、理想と現実のギャップといえるでしょう。スタートアップやベンチャーに抱いているイメージには、やりがいがある、情熱的なカリスマ経営者がいるなどがあります。一方で、ノルマがきつい、年収が大幅にダウンするなど負の可能性を考慮すべきです

成長のめざましいスタートアップ、冒険的な事業で新たな市場を開拓するベンチャーに転職を考えているのであれば、入社前の勘違いは禁物です。

勘違いから生まれる後悔について、可能な限りピックアップして次の3つに分類してみました。


・【前職との違い】あらゆる面で前職と違い過ぎた
・【ハードワーク】プライベートな時間がなくなるほど質と量ともにハードだった
・【待遇の変化】年収ダウン、福利厚生がなかった

それぞれ詳しく見ていきましょう。

2.スタートアップへの転職:前職との違いによる5つの後悔

転職に際しては「As is(現状)」と「To be(理想)」を検討した上で、そのギャップを埋めていくことが大切です。しかし、結局のところ「入社しなければ分からない」現実があります。

後悔は、理想と現実のギャップが開きすぎたときに生じます。転職は前職の経験があることから、これまで勤めた会社との違いから後悔をしがちです。例えば、大企業からスタートアップ、ベンチャーへの転職では、あらゆる面で前職と大きく異なるため次のような後悔が生まれやすくなります。

2-1.大企業の名前と肩書が外れたとき、あまりにも無力だった

ビルの最上階に行かなければ社長に会えない大企業と異なり、多くのスタートアップやベンチャーでは、ワンフロアのオフィスで物理的に社長や役員と近い距離にあります。憧れの創業者と顔を合わせる時間が長いことは、至福といえるでしょう。

しかし、経営陣と近い場所にいるからこそ自分の実力不足を突きつけられやすく、「この会社の器ではなかった」と挫折することがあります。例えば、大企業の名前や肩書を外したとき、まったく無力だった場合です。自信や実績は大切ですが、自己の過大評価が後悔を生みます。

2-2.研修や教育がなく、入社したその日から実務が始まった

大企業では、新卒採用で入社すると数カ月は研修期間を設けています。転職経験がなく30代に初めて転職すると「新卒のときのように先輩から教えてもらって、少しずつ慣れていけば大丈夫だろう」と考えがちです。

しかし、極端なことをいえば、スタートアップやベンチャーでは、入社したその日から単独で営業に行かされる会社もあるでしょう。

また、中途採用では即戦力が求められますが、特にスタートアップやベンチャーでは、入社後すぐに結果を出すことを要求されます。スピードに適応できず、転職の初動から落ち込んでしまう人がいます

2-3.会社の基本的な仕組みができていなかった

創業したばかりで数名しか従業員がいないスタートアップやベンチャーには、総務部や人事部といったスタッフ部門がない場合もあります。社長が兼務したり、開発しながら営業に出かけたり、ひとりが会社の複数の機能を果たしています

困ったときには、できる人間、解決方法を分かっている人間がやる状況です。就業ルールの朝令暮改も当たり前。このようなカオス状態に耐性がないとストレスを感じます。「前の会社はきちんとしていたのに、ひどすぎる」という愚痴や不満が増えてしまいます。

2-4.離職率が高く、どんどん人が辞めていった

成長がめざましく独創的な事業を展開しているスタートアップやベンチャーは、あまりにも急速に成長するので、仕事の内容や会社の経営方針についていけない社員が出ます。

企業規模(従業員数)の統計では、必ずしも小規模の企業の離職率が高いわけではなく、全体的に離職率は13~17%程度といわれています(参考:https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003398546)。

しかし、10人以下のスタートアップやベンチャー企業では、ひとり辞めただけで精神的にも仕事面でも大きなダメージになります。「この先大丈夫だろうか、企業選びを間違ったのではないか」という不安から去っていく人も少なくありません。

2-5.入社したら赤字経営、業績のアップダウンが激しかった

入社してみたら、とんでもない赤字経営だった」というスタートアップ、ベンチャーがあります。そもそも中途採用で営業を補充するときには、売上を伸ばすことが死活問題です。しかしながら、さすがに入社早々赤字では、責任が重くのしかかります

あるいは、社長がメディアに取り上げられただけでサービスの利用者が急増したり、社会的に大きな事件の反動を受けて利用者が激減したり、大嵐の中で波にもまれる小舟のようです。業績の振れ幅が大きくアップダウンします。

3.スタートアップへの転職:ハードワークによる5つの後悔

次にハードワークから生まれる後悔を見ていきましょう。「どんなに厳しい仕事でもこなします」と面接でアピールしたにも関わらず、入社後に「さすがにこれはムリかもしれない」という弱音が生まれる後悔です。量が多い、責任が重いことに加えて「辛い」という感情面も見過ごせません

3-1.やりたいこと以外の仕事に追われた

情熱を持ちモチベーションも高く入社しても、やりたかったことができないと後悔が生まれます。バリバリ新規開拓の営業をしたいと考えていたのに、入社してみると慣れない資料作成やExcelを使った計数管理の時間ばかりで、大きな負荷になるといった場合です。

毎日雑務に追われて、「何のために転職したのか?」と疑問を抱くようになり、次第に入社当初の熱意を失ってしまうかもしれません

3-2.ノルマやプレッシャーがきつかった

営業であれば売上の責任を負うことは基本ですが「ここまで売れないとは思わなかった、こんなに苦労するとは思わなかった」というケースです

道のない場所に道を作るのがスタートアップやベンチャーであり、創業したばかりはノルマや責任が重くのしかかります。

SaaS業界では、とにかく新規顧客を獲得し、獲得したら解約率を下げることが大きなミッションです。想定外の問題解決をしなければならないプレッシャーもあります

3-3.ゼロから立ち上げる仕事が多かった

開発ではスクラッチという言葉が使われますが、ゼロから立ち上げる仕事は大きな負荷がかかります。情報を収集して最適な方法を得る仮説検証が求められるともいえるでしょう。

「やりたいこと以外の仕事に追われる」は量に関するハードワーク、「ノルマやプレッシャーがきつかった」と「ゼロから立ち上げる仕事が多かった」は質に関するハードワークです

スタートアップやベンチャーでは、量と質の両方から厳しい仕事が要求されます。

3-4.裁量の範囲が広かった

スタートアップやベンチャーでは、ときには営業以外の仕事を兼務しなければなりません。しかも、みずから意思決定を行います。裁量の範囲が広いことから生まれるハードワークがあります。

大企業では、必要なソフトウェアの購入は稟議書を作成して上司の判断を仰ぎ、承認してもらいます。

しかし、少数精鋭のスタートアップやベンチャーでは自分で購入の判断をして承認しなければならないことがあります。手続きをショートカットできる機動性が強みではありますが、意思決定力がないと的確な判断ができません

3-5.プライベートの時間がなくなった

ビジネスや社会環境の変化に対応し、スタートアップの急速な成長を支えるためには、絶えず情報収集して学び続けることが必要です。営業先を飛び回り、オフィスに戻って残務処理をして、さらに休日もスキルアップのためにウェビナーなどで学習している人がいます

プライベートの時間を削って忙しさを楽しむ余裕がある場合はよいのですが、家族から不満が出て言い争いになるなど、次第に日常生活に悪影響をもたらします。辛いという意味でのハードワークです。

4.スタートアップの転職;待遇の変化による5つの後悔

前職とのギャップや仕事の側面に触れましたが、最も現実的な問題は「お金」ではないでしょうか。30代で家族を養う必要があれば、収入が減ることは生活を維持するために大きなリスクになります。待遇面の後悔をピックアップします。

4-1.年収が大幅にダウンした

転職を考えている理由や動機は人それぞれです。スキルアップや年収アップなどが考えられますが、スタートアップ、ベンチャーを志望する場合は、企業や経営者の魅力、何よりも仕事の面白さ、やりがいを求めているのではないでしょうか。

ある程度年収がダウンしても面白さとやりがいが得られたら「トレードオフとして仕方ない」と考えるかもしれません。場合によっては予想以上に大幅の年収ダウンになってしまうこともあります

4-2.残業代や諸手当がなかった

年収の大幅ダウンに関連して、創業間もないスタートアップやベンチャーは、大企業のように手当が厚く整備されていません。裁量労働制の場合にも残業時間をみなして給与に含むため、残業代がありません。

20代で初めて転職するときには、給与の仕組みを理解していないことから「えっ、深夜まで働いているのに給与はこれだけ?」と後から気づくことがあります。入社前にしっかり給与や手当を確認すべきです

4-3.ストックオプションが期待外れだった

ストックオプションは一定の自社株を取締役や社員が取得できる権利です。多くのスタートアップやベンチャーがめざすゴールは株式公開(IPO)であり、投資家の期待によって株価がはねあがります。自社のストックオプションによって大きな資産を得られます。

ところが、株式公開の準備には時間がかかり、会社や自分の環境が変化します。株式公開を待たずに辞めなければならなかった、ストックオプションを行使するタイミングを誤ったなど、期待外れの結果になることがあります。

4-4.役員になれなかった

成果主義によって20代や30代であっても役員になれることがスタートアップ、ベンチャーの魅力のひとつですしかし、役員になることが保証されているわけではありません

成果主義であればこそ、実力がなければ年齢が下の若い役員社員の下で働くことになります。最悪の場合は屈辱的な思いをして「こんなはずじゃなかった」と後悔します。

4-5.家族のために利用できる福利厚生がなかった

スタートアップやベンチャーの転職で、福利厚生を入社の最優先条件とすることはあまりなさそうですが、大企業と比較して失望することがあります。

格安でレジャー施設などを利用できる制度がなくなってしまうことは残念です。多くの企業では育児休暇や女性のための制度を備えていますが、入社してみると実態は利用が困難だったという声も中には聞かれます

5.スタートアップの転職、なぜ後悔してしまうのか?

スタートアップ、ベンチャーの転職に関して、さまざまな後悔を取り上げました。では、なぜ後悔してしまうのでしょうか。その要因を3つに整理します。

5-1.事前の情報収集が不十分だったから

ホームページの中途採用向けコンテンツや転職エージェントの紹介ページなど、Webによる情報収集は転職活動の基本です。ただし、このような情報が企業の実態をすべて表わしているわけではありません

ある程度の脚色が加えられていると認識したほうがよいでしょう。入社の思いが強まると、よいイメージばかりが先行して、ネガティブな側面が見えなくなります。偏った情報から転職を決めてしまうのは問題です。

魅力のある企業だからこそ盲信的になるのではなく、入社のデメリットや入社後のリスクもリストアップしておくと冷静な判断ができます

5-2.転職先の企業で求められる実力を満たしていなかったから

ひとつの会社の勤続年数が5年以上になると、勤務先の常識を社会全体の常識のように思い込んだり、プロジェクトの成果を自分ひとりで成し遂げた実績と考えたり、いわゆる「井の中の蛙大海を知らず」になりがちです。

マンネリを打破するために転職する人もいますが、前職の大企業のやり方をスタートアップやベンチャーに持ち込もうとしてもうまくいきません。

スタートアップ、ベンチャーでは、混沌の中で生き残る勘や行動力が求められます。成長フェーズと呼ばれる段階によって、必要な人材の資質も少しずつ変わります。せっかく転職したのに評価されないばかりか自信を失うのは、自分のやりたいことと企業が求めている能力に乖離があったからです。

5-3.スタートアップやベンチャーに期待しすぎたから

人生全般にいえるかもしれませんが、後悔しない最善の方法は「期待しすぎないこと」です

理想と現実のギャップが大きいときに後悔の感情が生まれやすくなるため、転職先に輝かしい人生を描いて成功イメージを膨らませすぎるのは考えものです。

6.スタートアップ企業への転職、後悔を最小限にするには?

スタートアップ、ベンチャーへの転職で後悔する理由を探りましたが、どうすれば後悔しないか対策を考察します。

6-1.後悔を前向きにとらえる

まったく後悔しない転職は希少であり、後悔は「次のキャリアのステップに進めない、成長の踊り場にある状態」とも考えられます。後悔自体は自然な感情であり、執着することが問題なのです。

「あの頃はよかった」と振り返ってばかりいる自分を許容できるかどうかが、将来的に自分を成長させるカギになります。このように、まず後悔自体を前向きにとらえることが、後悔の気持ちを軽減させます

6-2 自分を知る、企業を知る、妥協点を探る

続いて転職前に徹底的に検討することです。検討の方法としては「自分を知る(自己分析)」「企業を知る(企業分析)」をもとに「妥協点を探る」という3つの観点から進めます。

転職はマッチングがすべてです。相手(企業)と自分を比較検討して、妥協できないこと、妥協すべきことを洗い出しましょう。

「ほんとうにこの企業が最適なのか、苦労はするけれどなんとかなりそうか」検討します。当然のことながら入社しなければ分からないことがたくさんありますが、仮説検証を用いてシミュレーションを行います

検討すべき項目の例を箇条書きにまとめます。


【自分を知る(自己分析)】
□前職の経験や実績の棚卸し
□仕事の内容、自主的な活動、どのような問題解決をしたか
□数値による成果や実績
□社内における表彰の実績
□自分の強み、得意分野、自信がある領域
□自分の弱み、短所、改善が必要なウイークポイント
□取得資格、認定
□やりたいこと、キャリアプラン、キャリアシフト など

【企業を知る(企業分析)】
□業界によるポジショニング
□MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)
□企業概要(創業年月、資本金、従業員数)
□事業領域と強み/弱み
□創業者の経歴、夢、ビジネスに対する思い
□企業文化や社風
□待遇や福利厚生
□入社後に考えられる問題、転職先としてのデメリット など

【妥協点を探る】
□その企業で発揮できる能力は何か?
□自分に足りない部分、努力しなければならないことは何か?
□どうしても譲れないものは何か?(給与、役職、やりがい、勤務時間など)
□妥協してもよいことは何か?
□想定される課題や最悪の状況
□想定される喜びやよい変化
□うまくいかなかったときの対処方法 など

7.スタートアップに向いている人

自己分析の参考として、一般的にスタートアップ、ベンチャーに向いている人の3つの特徴をあげます。

7-1.自分独自の羅針盤を持ち、混沌と変化に動じない人

スタートアップには、シードステージ、アーリーステージ、ミドルステージ、レイターステージという4つの成長段階があります。企業規模が小さいアーリーステージのような段階はカオスであり、激しく変化します。

混沌状態や変化に動じず、自分自身の羅針盤を持って進むべき道を決めて行動に起こせる人が、スタートアップやベンチャーには向いています

ときには企業と個人ともに軌道修正が必要です。経営者の方針により、これまでとはまったく違う領域の事業をスタートすることがあります。そのビジネスに乗るか、それとも降りるか、自分自身で判断しなければなりません。

7-2.ワークライフインテグレーションの人

ワークライフインテグレーションは人事関連の用語で、仕事とプライベートをはっきり分けるのではなく、統合(インテグレーション)する働き方と考え方をいいます

しかし、仕事のためにプライベートを犠牲にするのではありません。仕事が趣味、趣味が仕事という生活ともいえます。

かつてワークライフバランスとして、仕事の時間と趣味の時間をしっかり分けてバランスのいい生活をすべきだという考え方が提唱されました。このワークライフバランスを進展させた考え方がワークライフインテグレーションです。

新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークが浸透したことから、新しい働き方が模索されるようになりました。これまでの常識を覆すイノベーティブな価値観やライフスタイルで働く人は、スタートアップやベンチャー向きです

7-3.数字の責任を負い、競争をいとわない人

営業経験者であれば、自分の売上の数字に説明責任を持つ重要性は認識していることでしょう。スタートアップ、ベンチャーで求められるのは即戦力であり、数値目標の達成を問われます。

SaaS業界では先端技術を使って顧客の業務効率化を支援し、いわゆるDXといわれるように、よりよい社会に変えていくミッションがあります。しかし夢物語だけを追いかけるのではなく、行動を起こして結果を出す現実的かつ実践的な能力が必要です。

製品やサービスによっては、熾烈な競争を強いられることがあります。競争にひるまない、果敢に戦っていくメンタルが求められます。競争をいとわない人、むしろ競争に燃えてゲーム感覚でスコアを上げていく人が、スタートアップやベンチャーで活躍できる人材といえます

8.スタートアップに向いていない、転職して後悔しがちな人

スタートアップやベンチャーに向いてない、転職後に後悔しがちな人はどのような人でしょうか。タイプを3つ挙げますが、あくまでも傾向に過ぎません。転職を諦めてしまうのは早計です。

スタートアップには多様な企業があり、創業間もない企業と株式公開を実現して成長を遂げた企業では、求める人材が異なります。

繰り返しますが、転職で重要になるのはマッチングです。どのような会社か見極めた上で、向き不向きを検討するようにしましょう

8-1.的確な指示にもとづいて任務を遂行したい人

スタートアップ、ベンチャーは、個々人が経営者といえます。先行きの見えない環境でみずから意思決定を行い、行動を起こします。したがって上司から言われたことしかやらない、言われるまで待っている姿勢の人は向かないかもしれません

「明確な指示をしない会社や上司が悪い」「きちんと方針を決めてくれないと困る」と、自分が動かないことを棚にあげて、責任転嫁しがちな人は注意が必要です

成熟した市場に事業を展開している大企業は、経営が安定しているため、秩序を重んじて指示通りの働きを求めがちです。先走って自発的に行動すると煙たがられ「あいつは協調性を乱している」と評価されることも少なくありません。

このような社内文化に浸っていると危機感が薄れて、余計なことは何もしないのがいちばんと考えるようになります。しかし、スタートアップ、ベンチャーでは逆に動かないことが大きなリスクになります

8-2.安定志向で家族やプライベートを大切にしたい人

価値観は人それぞれであり、仕事を中心に考える人もいれば、家族と過ごす時間を大切にする人もいます。どちらかを犠牲にしたくないのであれば、妥協点や解決策を考える必要があります。

スタートアップやベンチャーで活躍するリーダーには、仕事とプライベートを充実させているすごい人がいます。何気なくやっているように見えますが、日常業務を片付ける集中力が人並み外れていたり、時間管理を徹底していたり、生産性を高める工夫をしています。

そもそも転職自体がリスキーです。年収の大幅ダウンやハードワークという、望まない状況になり得るリスクをはらんでいます。安定した生活や家族と過ごす時間、プライベートの時間を尊重したいのであれば、転職そのものを検討し直す必要があるかもしれません。優先順位を見直すとよいでしょう。

8-3.行動より考えることを重んじる人、完璧主義者

IT業界の一般的な開発の手法として、アジャイルやラピッドプロトタイピングがあります。これらは全体を部分に分けてトライアルを繰り返しながら完成に近づける手法です。

一方、ウォーターフォールという手法が古くから使われていました。こちらは要件定義やシステムの全体設計を完璧に行い、そこから滝が落ちるように開発していきます。ところが古いウォーターフォール型の開発は時間がかかり、修正が発生すると柔軟に対応できない欠点がありました。

スタートアップ、ベンチャーの仕事も、ウォーターフォールよりアジャイルやラピッドプロトタイピングのような手法が適しています。つまり、考えながら行動できる人、不完全な状態を改良しつつ完全に近づけていくやり方のできる人が力を発揮します。

マーケティングでいえば新しもの好きのイノベーター、アーリーアダプターといった人たちが適しているといえるでしょう。石橋が完全に叩かれて安全が確認できてから渡るようなレイトマジョリティは、待っているうちにチャンスを逃します。

9.転職先として注目!成長が期待できるスタートアップ

次に企業研究の視点です。ここまでの考察で触れてきた要点も含めて、転職にチャレンジしたいスタートアップ、ベンチャーのチェックポイントを3つあげます。

9-1.創業者に魅力がある

スタートアップは何より社長のビジョンや熱意に支えられています。企業にはヒト、モノ、カネ、情報が重要といわれますが、最終的にビジネスを行うのは人間であり、創業者の経営手腕やビジョン、人間性は重要な検討事項です

創業者の信頼があるからこそ大規模な資金調達を実現でき、優秀な人材が集まります。かっこよさに着目せず、SNSなども含めて言動に共感できるかどうかを判断することが必要です

9-2.市場規模が大きく、成功したビジネスモデルがある

ひとり勝ちができるブルーオーシャンやニッチな市場をねらうスタートアップ、ベンチャーもありますが、そもそも市場の規模が小さかった場合には成長の幅が限られます。成熟した市場に参入するとパイの取り合いから過当競争になり、営業が苦戦を強いられます。

シンクタンクの予測などを参考にしながら、現在の市場規模にスケールがあり、将来的に拡大が期待される市場に事業を展開している企業であることを確認します。国内だけでなく、海外に既に成功したビジネスモデルがあるかどうかも重要です。

成長を続けることが予測されているSaaS業界の企業は有望といえるでしょう

9-3.大規模の資金調達に成功している

VC(ベンチャーキャピタル)が注目しているスタートアップ、ベンチャーは見込みがあります。大規模の資金を投資しているようであれば、投資家たちがIR情報などから総合的に判断しているお墨つきの企業と考えられます。

急成長している企業は、従業員の増加とともに広いオフィスに移転します。沿革などからオフィスの移転状況もチェックします。

10.応募を慎重に検討、見送ったほうがいいスタートアップ

ホームページや資料を見ただけでは一概にいえませんが、応募を慎重に検討したり、場合によっては見送ったほうがよいスタートアップ、ベンチャーの特徴を挙げます。

10-1.トップの身なりや言動が派手、オフィスが華美

創業者の魅力は、高級な外車を乗り回し、ブランド物のスーツやアクセサリーを身につけることでしょうか? SNSで毒舌を振りまいて炎上させて注目を集めるカリスマ経営者もいますが、その「口撃(言葉による攻撃)」が部下として働いている自分に向けられたとしたら、どんな気持ちになるでしょう。冷静に考えてみる必要があります

オフィスも同様です。クリエイティブ系のスタートアップやベンチャーは、創造性を発揮するためにおしゃれなオフィスで仕事できることに注力しています。

しかし、テレワークが浸透した現在、代表番号を廃止したり本社を簡素化したり、オフィスの在り方が見直されています。あまりにも華美なオフィスの企業は注意が必要ですが、質素すぎるオフィスも事業内容や待遇面を確認したほうがよいでしょう

10-2.ビジョンや事業概要が明確ではない

ホームページは取引先や見込み客、従業員、新卒や中途採用における応募者、投資家など、さまざまなステークホルダーが閲覧します。

めざましい成長を遂げる企業のWebサイトのコンテンツは、事業概要が明確であり、将来に向けたビジョンをはっきり打ち出しています。業績の推移を公開し、プレスリリースで戦略的な取り組みを告知するなど、情報発信に積極的です。

ビジョンや事業概要が明確ではない企業は、将来性を疑問視すべきです

10-3.年収が高すぎる、募集人数や採用人数が多すぎる

業界の平均年収よりも高い場合は、業務内容を確認したほうがよいでしょう。応募数を集めるために、高い年収を告知して志願者を釣ろうとしている可能性も考えられます。

また、募集人数や過去の採用実績が多すぎるスタートアップやベンチャーは、採用してもすぐに辞めてしまう傾向があるかもしれません。

11.スタートアップへの転職を成功させるための心構え

最後にスタートアップへの転職を成功させ、後悔を最小限に抑えるために必要な3つの心構えを示します。


・人生のオプション(代替案)を拡げておく
・覚悟を決め、1カ月、3カ月、6カ月、3年などのスパンで見直す
・変化や混沌を楽しむ、それ自体を勉強の機会と考える

人生のオプション(代替案)を拡げるというのはどういうことかといえば、「この会社しかない」と可能性や選択肢を狭めず、自分の将来の可能性の幅を拡げておくことです

20代や30代の転職はやり直しがききます。レアなケースとはいえ、失敗したらもとの会社に再就職する出戻り転職も考えられます。円満退社を心がけて、転職後も先輩や上司とコンタクトを継続すると、相談にのってもらえる可能性があります。経験を積んで起業したり、フリーランスとして働いたりしてもよいでしょう。

ただし、短い期間に何度も転職するような転職ぐせがついてしまうと、その後は書類選考で落とされる可能性が高くなるので注意が必要です。1カ月、3カ月、6カ月といったスパンを決めて働き、後悔を乗り越えながら自己分析×企業分析×妥協点による見直しをはかるとよいでしょう。

最終的にはスタートアップやベンチャーならではの変化や混沌を楽しみ、転職先の起業の仕事自体を勉強の機会と考えることです。40代以降になって「あの頃はきつかった、最悪だった」と笑って話せるようになれば、ひとりの人間として大きく成長できたことを実感できます。

まとめ

SaaS業界には将来性があり、創業間もない企業から株式公開をはたした企業まで、さまざまなスタートアップやベンチャーがあります。後悔しない転職をするには、事前に十分な情報収集や検討を行う必要があります。理想と現実のギャップは必ず生じるものですが、事前に最悪な状況を想定して覚悟を決めておけば大きな挫折を回避できるはずです。

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マーキャリ 編集部

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マーキャリ 編集部

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