大谷選手の未来ノート
~成長課題の因数分解~
⇒第133回「活躍する日本人プロスポーツ選手~真面目と主体性の融合~」はこちらから

スポーツネタが続きますが、ドジャース大谷選手の「未来ノート」をネットなどで見たことがある人もいるかもしれません。将来自分がMLBのスター選手になる夢を叶えるため、課題を9つ設定し、その一つ一つに対する対応をさらに9つに因数分解したものです(計81個ということですね)。課題のテーマとしてはピッチャーとしての球速160キロや変化球の充実、体づくりやメンタル的なものは当然あるのですが、その中に「運」というテーマがあります。そしてこのテーマを実現するために因数分解した内容に「あいさつ」「ゴミ拾い」といったことや「審判さんへの態度」「応援される人間になる」といった項目が書かれています。これを高校生の時に作成しているのは自分にとっては考えられないし、素晴らしいと心からリスペクトしてしまいます。
特にこの「運」というテーマの本質ですね。大人になって成功した人に会って話を聞くと、多くの人が「自分は運がよかった」と言います。実はその人たちは結果的には運がよくなる日常の言動やふるまいをしているのだと思います。大谷選手は、そういった「運」の本質を理解して高校時代から実践していることが素晴らしいですし、今のMLBでの活躍を見ていても、その側面は十分に表れていると思います。
私自身が経営者としての夢、それも2~3人の会社ではなく、100名規模以上の社長を目指そうと志したのは二十歳になった頃でした。大谷選手ほどではないですが、100名規模の経営者になるためには何が必要なのかを考えました。中小企業で働く営業として、それなりの実績を出していた私は、1.優秀な人材の中で働く経験をすること、2.その中でリーダーシップやマネジメントの経験をすること、3.物売りではなく考えて提案できる企画力を身に付けること、の3つを課題として設定しました。そういった考えもあり、正社員の営業を辞めてリクルートにアルバイトとして入社し、その後のキャリアアップを通じて、自己課題を解決する様々な経験を積むことができました。
若い人とコミュニケーションをとるのが好きなので、私と同じように経営者を目指す人や役者や音楽の道で成功を目指す人たちと話す機会があります。そうした時に、その夢を果たすための自己課題をどう設定しているのかなと思い、聞くこともあります。そういった時漠然とした課題感になっていると感じることが多いですね。
大谷選手レベルとは言いませんが、ある程度自分の頭で考えて、腹落ちした課題設定をして行動レベルまで因数分解できていること。またどういう課題をテーマとして設定するかが、夢の実現にはとても重要だと思います。
自分が設定した複数の成長課題に対して、因数分解したアクションプランを実行し、結果を振り返る。さらに仮説を立てチャレンジする。そういったことを何年も続けていくことで夢は近づいていくのだと思います。大谷選手の高校時代からの十数年間もそうだったと思いますし、これからもそうなのだと思います。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。