
MLBワールドシリーズでドジャーズの日本人選手の活躍すごかったですね!いつの頃からか、日本人プロスポーツ選手の海外での活躍が目覚ましくなりました。
ヨーロッパサッカーではかつてのカズや中田、そしてMLBでは野茂、イチロー、そして大谷、山本等ですね。私たちの子どもの頃には全く考えられない夢のような状況です。
私は小学校の頃に野球をやっていましたし、サッカーにも関心はありました。中学からは当時野球部に入ると丸坊主になるのが嫌でサッカー部を選択しました。メキシコオリンピックでの日本サッカーの銅メダルの影響もあり、サッカーが多少なりともブームになりかけた時代です。
先日お亡くなりになったメキシコオリンピックで得点王になった元日本代表の釜本選手も小学校時代は野球もやっていたのですが、「サッカーをやればオリンピックで世界に行ける(野球はオリンピック競技ではなかった)」と当時の先生に言われてサッカーを選択したようです。五輪後釜本選手にも海外からオファーはあったようでしたが、彼は日本でのプレーを選択しました。その後、海外で活躍する日本人選手は少しずつ出てきましたが、大きなインパクトを最初に残したのは、サッカーだと中田、野球では野茂投手でしょうか。
個人的に感じていることですが、私たちの世代が子どもの頃のスポーツ指導は根性主義で、先輩や先生に言われたことを言われた通りにやることが美徳だったと思います。先輩や先生の言うことは絶対的な空気がありました。一部の子どもたちが自分なりの意見をもって練習方法などを提言しても、「君は言われた通りにやっていればよい」といった対応でした。そんな中でも勇気を持った若者が自分なりの意志や主体性を持って、海外に飛び出していきました。カズは10代で単身ブラジルに渡って、その後の日本サッカー界に大きな影響を与えました。前述の野茂は、独特の投球フォームで何人かの指導者からフォームの改造や練習法などを指示されたようですが、自分の考えを信じ、周りの反対を押し切ってMLBに挑戦し、今の日本野球からMLBへの流れをつくる大きなインパクトになる活躍をしました。大谷も二刀流に反対する指導者もいたようですが、あくまでも大谷流を貫いて現状に至っています。もちろん彼らは指導者の助言を無視しているわけではなく、一つの意見や情報としては受け入れた上で、自分の選択として責任をもって前に進んでいったのだと思います。
今、日本のスポーツ界は私が子どもだった頃に比べて、やっとプレーヤー個人の特性や意志をよい意味で活かした指導方針が広まりつつあると思います。私自身、サッカーコーチの経験があって、40歳くらいの頃に日本サッカー協会の認定コーチ合宿に行ってコーチライセンスを取りました。その時に初めてサッカーのコーチングスキルを学ぶことになるのですが、テクニカルなことよりもべースとなる考え方に共感した記憶があります。よく覚えている内容が二つあって、一つが「グッドボディシェイプ」です。これは当時の日本サッカー協会の指導方針になっていて「広い視野の確保」という意味です。ボールを受ける時に体を半身にして、自分の周りの状況がよく見えるような状況にするというものです。これはサッカーの本質を表していて、一般的にドリブルやシュートなど結果的なボール扱いのテクニックに目が行きがちですが、サッカーにおいては試合中のよりよい判断、そしてそのための視野の広さが重要、というものです。
もう一つは「意志を持ったプレーであれば、結果がどうあれ選手を否定してはいけない」というものでした。コーチが結果だけを見て否定してしまうと、怒られないようにプレーをするようになってしまい、自分で判断できる選手に育たないからです。
私が少年サッカーのコーチをしていた時、ミッドフィルダーの3年生の子がフォワードにパスを出そうとすると一瞬ためらって、敵にボールをとられてしまいました。他のコーチに「パスは出せる時に出しとけばよいんだよ!」と怒られて沈んでいました。その子に声をかけ、「なんでパス出さなかったの?」と聞いてみると「だってフォワードの○○君まだ準備ができていなかったから」と、そこまで見えていた上での判断だったのだと感心しました。「その判断自体は間違っていないから、自信持ってやってね」と言いました。その後その子はチームに欠かせない視野の広いボランチとして育っていきました。
日本人は国民的な気質としては真面目な人が多いのだと思います。ただ以前は真面目=上の人の言うことを一生懸命やるだけで自分の意志を出すと否定される、そういった環境が多かったと思います。何十年も経ちその真面目さがあった上で、自分の意志を出せる環境が少しずつできてきたのだと思います。「真面目さと主体性の融合」ですね。海外で活躍している日本人プレーヤーはそれぞれのスポーツに対する取り組み方、真摯さについても賞賛されることが多いですね。
私が仕事として関わっている営業の世界も依然として昔からの精神論的な部分が多く残っています。昨今は多少なりとも新しい考え方が普及しつつあります。これも指導者層の意識変革が重要で、そういう意味では、まだ昭和の経済成長時代の成功体験を持つ人たちが会社の経営層や指導層に残っているので、スポーツ界のように変革していくのにはもう少し時間がかかるかもしれないですね。私も世代的にはそちら側の一員ですが、少しでも変えていけるように取り組んでいきたいと思います。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。