商品を購入しようとする際に、全く知らないブランドのものを買おうとはなかなか思わないもの。逆に、いつも購入しているブランドから新商品が出たら、ちょっと気になったりしますよね。このようにブランドに対するイメージは、製品やサービスの購入、ひいては売上にまで結びついていると考えられています。ブランドのイメージが消費者からどのようなステップを経て抱かれ、固まっていくのかについて、図に表したものが「ブランドエクイティピラミッド」です。
この記事ではブランドエクイティピラミッドは何かについて、基礎的なところから丁寧に解説しています。ブランドエクイティピラミッドは、企業のブランディングにおいて重要な考えの1つ。ぜひ参考にしてください。
ブランドエクイティとは
ブランドエクイティピラミッドの説明の前に、「ブランドエクイティとはそもそも何か」について解説します。エクイティ(Equity)とは、株式資本を意味し、金融や不動産業界で一般的に使われている言葉です。そのため、ブランドエクイティとは直訳すると「ブランド資本」となります。「ブランド資本」という言葉を使う際は、ブランドエクイティと同じ意味で用いられます。
ブランドエクイティとは、アメリカの経営学者であるアーカー教授が論文で提唱したものです。従来ではブランドやそれを表すロゴは、あまり重視されていませんでした。しかしアーカー教授は、目に見えずかたちのない「ブランド」を土地や店舗、不動産のように資産として定義しようとしたのです。つまりブランドエクイティとは、ブランドは企業価値を左右する資産であると捉え、資産価値を高めていくために積極的に育成や投資していこうとする考え方だと言えるでしょう。
今の時代、必ずしも良いものであれば売れるとは限りません。たしかに品質は大事ですが消費者に手にとってもらうためにはそれと同様にロゴや名前も重要なのです。
ブランドエクイティピラミッドとは
ここからはブランドエクイティピラミッドについて説明していきます。ブランドエクイティピラミッドは、ブランド価値を高めるためのルートを段階別にピラミッド型に示すマーケティング手法で、ケラー教授によって考案されたものです。
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図を見れば分かるように、ブランドエクイティピラミッドでは、ブランド力について、4階層6要素に分けて考えています。上の段階に行くほど消費者との関係が強いことになります。1つずつの要素について下の階層から詳しくみていきましょう。
セイリエンス(Salience)
一番下のアイデンティフィケーションの階層は認知の階層です。Salienceとは突出性と訳される言葉ですが、ブランドをイメージさせる特徴と考えると分かりやすいでしょう。ブランドに対する認知度やそもそもそのブランドを知っているかどうかなどの意味が含まれています。商品やサービスはそもそも知られていないと購入するという選択肢にすら入ってきません。セイリエンスはブランドエクイティピラミッドにおいては土台となる重要なものです。
パフォーマンス
パフォーマンスとは機能・効用のことです。商品やサービスの機能やスペックそのものだけでなく、顧客の機能的ニーズをどれほど満たしているかを測る基準です。単純に機能がたくさんありスペックがよくても消費者のニーズを満たしていなければ購入にはつながりません。
イメージ
イメージとは、ブランドイメージのこと。消費者がブランドにどのようなイメージを抱いているかを考えるものです。会社から打ち出しているブランドイメージと、消費者から抱かれているイメージに違いがないかを知ることは、その後の方向性を決める上でも重要なものです。
パフォーマンスとイメージは同じ階層にあり、ブランドについて連想をする段階とされています。
ジャッジメント
ブランドエクイティピラミッドにおけるジャッジメントは、理性的判断と訳されます。消費者がブランドの商品やサービス、機能や品質、をどのように評価するかを基準とするものです。ジャッジメントはパフォーマンスの発展形で、消費者とブランドの距離が近づいた状況で行われるもので、ブランドへの関心度合いや信頼の度合いを問う項目となっています。
フィーリング
ジャッジメントが理性的判断と訳されるのに対し、フィーリングは感情的判断と訳されます。こちらもイメージの発展形と言えます。安心感や信頼感があるか、といったブランドの商品やサービスに対する印象だけでなく、「それを使っている自分を好ましいと思うか」といった消費者自分自身に対する感情も含まれているのが特徴です。
ジャッジメントとフィーリングは、ブランドエクイティピラミッドの3段階にあたり、「反応」の階層となっています。
レゾナンス(Resonance)
ブランドエクイティピラミッドの最上位にあたるのがレゾナンスです。レゾナンスとは共鳴性や、忠誠心などを意味するロイヤルティと解釈されるのが一般的です。ブランドと消費者の絆の強さや感情移入の度合いを示すものになっています。具体的には自分の価値観と合致している、このブランド製品を持っている人や使っている人は信頼できる、友人に薦めたいなどのように感じられるかどうかを見るものです。
ブランドのイメージは一朝一夕にできるものではなく、まずは認知の段階から始まります。ブランドエクイティピラミッドを常にイメージしておくことで、消費者との関係性が現在どの段階にあるのかが調査しやすくなるでしょう。有効なマーケティング手法として知られるブランドエクイティピラミッドをぜひ活用してブランディングの戦略やコンセプト、そもそもどのようなブランドイメージを抱いてほしいかについて考えてみてはいかがでしょうか。