
理系というわけではありませんが、中学生の頃から物理系の本を読むのが好きでした。相対性理論の本を読んだ時、内容を理解することは難しかったものの、「光速はどんな場合も一定である」という事実から、時間や空間が変化するということを発見したアインシュタインの考え方に驚愕した覚えがあります。
学校で習うニュートンなどの古典物理学では、宇宙に存在するすべての物体の位置と運動量が完全に分かれば、理論上は未来も過去も計算できるという考え方がありました。これを決定論といいます。
実際に、多くの星の動きはすでに予測されています。日本で大きな地震がいつ来るのかもすでに決まっていて、それを私たちが知ることができないだけ、ということなのだと思います。
その考えを突き詰めていくと、人生もビリヤードの玉のように、計算すれば未来を測定でき、すでに決まっているということになるのだと思っていました。人間の判断も突き詰めれば、脳の中の量子の動きによって起こると考えられるからです。
二十歳くらいの時に『不確定性原理』の本を読んで、初めて量子力学に触れる機会を持ちました。原子より小さい物質の最小単位である量子の世界まで行くと、日常の私たちの生活で感じている物理法則では考えづらい法則があります。
その中で特に面白いと思ったのが、「現在の量子状態が完全に分かっていても、個々の測定結果は確率でしか予測できない」ということです。未来は予測できない、という事ですね。なんとなく漠然と「運命は決まっているのかな」と思っていた私にとっては、衝撃的な理論でした。
また、3次元の空間と時間をあわせた4次元的な宇宙論では、時間は流れているものではなく、過去と現在と未来はすでに一緒に存在していると考えるようです。そうすると現在とは、本を読んでいて今は物語のどこの部分を読んでいるか、ということになるので、結末は知らないだけですでに決まっている、という感じになりますね。
これに対しては、多世界解釈という考え方もあって、瞬間、瞬間で世界は分岐して無数の世界が生まれ、観測者はそのうちの一つしか認識できない、とされています。自分の判断によって、自分の世界は無数に分岐していくけれど、自分ではそのうちのひとつの世界しか認識できない、ということですね。
そういったことを学んでいくうちに、自分の人生はビリヤード台の上でぶつかり合う玉のように未来が決まっている訳ではなく、自分の選択によって変えていくことができるのだと感じるようになりました。
未来の結果は決まっていないし、コントロールすることも出来ない、でも、よい結果に繋がる確率の高い判断と行動を、今することはできる。そう考えて生きるようになってから、未来への不安から解放されて、自分ができることに集中できるようになったと感じています。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。