AIがどんなに進化しても天気予報は100%当たらない!
~大谷選手の準備の意味~
⇒第143回「経験を成長に繋げること~ひとりよがりでアバウトな振り返りにならない~」はこちらから

最近読んでいる哲学と科学の本に出て来るカオス理論による初期値鋭敏性が面白いなと思いました。この考え方によると、どんなにAIが進化しても100%当たる天気予報は実現できないようです。これは、複雑性の高い問題においては、初期値のほんのわずかな違いがその結果に大きな影響を及ぼすという性質(初期値鋭敏性)です。よく言われるバタフライ効果(南米で蝶が羽ばたくと日本で台風が起きる、というような話)ですね。
前提として、人間は厳密に言うと1メートルの長さも正確には計測できません。その物体の長さが1.00001メートルなのか、1.000000001メートルなのかを厳密に測定することは不可能だからです。一方、その0.00000001メートルの誤差が、複雑性の高い問題の場合には大きな差になります。天気予報の予測をする時に、まず初期値としての現在の天気の状況を人間がAIに入力する必要がありますが、これを100.00000000∞の精度で計測・入力することは不可能です。そのため、そのちょっとした違いによって、1週間後の天気予報は晴れにも雨にもなってしまう、ということですね。
これってスポーツやビジネスでも重要な視点だと思いました。大谷選手が日々の練習で、細かいルーティンをとても大切にしているとニュースで見たことがあります。投球練習では、マウンド上の足の着地位置のほんのちょっとした違いをとても気にするようです。また、慣れない球場ではマウンドの高さや土の固さなどを入念にチェックします。これは、マウンド上での足の降りる位置のちょっとした違いが、ボールを投げた後18メートル先にあるホームベース上では2cm、3cmの違いになり、それがストライクとボールの違いや、相手バッターのバットのどこに当たるかの違いにつながり、ヒットになったり凡打になったりすることを大谷選手が理解しているからですね。
バッティングも同じで、大谷選手はいつも同じスタンス、同じ腰の位置で構えることをとても重要視しています。バッティングというと、バットの振り方に目が行きがちですが、そもそもどういうスタンスで立っているのか、自分が今日どういうコンディションにあるのかが結果に大きな影響を及ぼすということだと思います。
これはビジネスでも一緒ですね。どういうプレゼンをするかなどやり方に目が行きがちですが、メンタルとフィジカルの両面で自分が今どういうスタンス、コンディションにあるかが結果に大きな影響を及ぼすのだと思います。そういう意味では「再現性」という言葉にも、最近違和感を覚えることが多いですね。やり方を標準化してマニュアル化すれば再現性が実現できると考えがちですが、前提条件(初期設定)の重要度の方が高いのではないかと思うことが多いです。登場人物も多く、複雑性の多いビジネス現場では、初期設定が同じということはほとんどなく、やり方が一緒で再現性を担保するのは難易度が高いのではと思います。
経験情報は、仮説を立てる上での参考情報にとどめるのが現実的かもしれません。一方、こういった状況での活動はAIだけで解決できる可能性は低く、まだまだ人間の介在価値が発揮される場面も多いのではないでしょうか。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。