• 2022/06/10
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はりこらむ 第56回「会社の理念 ~浸透させるのか?結果的に浸透するのか?~」

  • 萩原 張広  
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会社の理念

~浸透させるのか?結果的に浸透するのか?~


⇒第55回「BtoBサービスにおける収益の根源とは? 〜顧客満足が営業コストを下げる〜」はこちらから


 企業理念や経営理念、ミッション、社訓などいろいろな言葉で言い表されますが、それがちゃんとその会社で浸透しているかどうかは様々だと思います。

 会社の中に貼り出したり、朝礼で唱和したり、理念的な研修をたくさんやっているから浸透しているのかと言うと本質的にはそうでもない場合もありますし、社員一人ひとりは理念をちゃんと暗記している訳ではないけど、カルチャーやその会社の人々のふるまいで、価値観をよい意味で共有できているんだなと感じる会社もあります。

 サラリーマン時代から起業を考えていた事もあって、当時からそういった理念的な事に関心がありました。自分がその会社にいる意味や仕事をする価値を感じたかったのだと思います。当時の他の社員の人に比べると、自分が働いている会社の理念をちゃんと知っていたし、自分なりに解釈していたと思います。

 リクルートに入る前に働いていた建築資材の商社は社員数が50人くらいだったと思いますが、ある時突然社長が経営理念を作成し社員に発表しました。今でもその内容を覚えていますが、「お客様第一主義経営 1にも2にもお客様、3.4がなくて5もお客様。我々はお客様のニーズに混乱し、その混乱の中からお客様のニーズを満たすサービスを提供していく。」と言った内容のものでした。混乱する社員一人ひとりが良いか悪いかは別にして、実際に顧客に建築資材を届けるための新しい物流の仕組みとかを開発して実践し、その地域の中で業績を伸ばしていました。

 働いている社員がその言葉をどのくらい覚えていたかは疑問ですし、日々の営業活動や納品活動では、理念に沿わないひどい事もあったかと思います。会議などでお客様のわがままを単に断るのではなく、どうにか出来ないかと真剣に検討している雰囲気がありました。4つある営業所に多くの種類の建築資材を置いておいて、それを日中にトラックで交換してそれぞれのお客様に届けるサービスや、ほとんどの社員が車通勤だったので帰り道にお客様である工事店に材料を届けるサービスなどはそうして生まれてずいぶんと好評だったと思います。             

 その後、私はリクルートにアルバイトで入った後に正社員となり、リクルートの理念の研修を受ける事になります。当時のリクルートの「経営の三原則」を今でも覚えていて「商業的合理性の追求」「社会への貢献」「個の尊重」だったと思います。その後リクルートはリクルート事件と言われる今では教科書に載っているような事件により、社会からバッシングを受ける事になります。事件後、「商業的合理性の追求」は、「新しい価値の創造」へ変更されたかと思います。

 当時リクルートは、新聞とかには社長の江副さんの名前をとって「江副教」みたいな言われ方をする事もありました。でも会社の中は全然そんな感じではなく、洗脳されている感じもなかったと思います。会社の理念も何となく覚えているくらいでした。事件によるその時の会社の危機に対しても、会社から言われてという感じではなく、リクルートで働く個々人が自分の頭で考えて乗り切っていった印象があります。でも、これこそがリクルートのDNAであり理念なのかなとも思います。

 今、私の会社では、意志ある人材に機会と情報を提供するという趣旨の「アクティブグロース」と、セールスマーケの世界で「会社、セールスマーケ活動に従事する人、そして商品サービスを購入する人」みんながハッピーになる「トリプルウィン」という経営目的を掲げています。

 会社のサイトに表記したり、全社総会などでは共有していますが、そういった内容や背景や意味を社内広報する場は現状あまり多くなく課題も感じています。私自身や各役員、マネージャーや一般社員も含め、日々のビジネス活動の中での具体的な判断と行動から、そういった考えや文化が出来ていく事の方が重要だと思っています。

 社員一人ひとりにはいろんな価値観がありますし、正しく情報を理解してもらい、その上で多様性を受け入れ、違いから新しい考え方を想像する機会も必要かと思います。情報として開示して、触れる機会をもっと作っていって、その上でその事に関してオープンにコミュニケーションがとれるような状態にしていく事が重要かなと思っています。


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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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