• 2022/05/27
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はりこらむ 第55回「BtoBサービスにおける収益の根源とは? 〜顧客満足が営業コストを下げる〜」

  • 萩原 張広  
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BtoBサービスにおける収益の根源とは?

~顧客満足が営業コストを下げる~


⇒第54回「コミュニケーションの目的と抽象度」はこちらから


 2025年に向けた会社のビジョンの中に収益というコンセプトを入れました。売上的な拡大ではなく利益の成長性を大切にするという事ですね。ピーター・ドラッカーさんは「利益は企業の最終目的ではなく、条件である」と言っていますが、今回、収益のコンセプトを入れた理由は事業成長に向けて健全な投資をする為、また従業員の待遇を良くする為にも利益が重要だからです。

 収益性はそもそもビジネスモデルに影響されます。一般的な企業のモデルで営業利益率を10%以上にするのは結構大変です。開発がある程度終わって、売上のほとんどが粗利になり、売上が増えても原価が増えないITモデルのように営業利益率が30%を超えるような状態はなかなか実現できません。でも既存事業的なモデルでも、キーエンスや私がいた以前のリクルートのように高い営業利益を出している会社もあります。

 最近、私たちのようなBtoBのサービス業における収益性の根源について改めて考えてみました。いくつかある中で重要なテーマだと思うのが、サービス業における営業生産性という観点ですね。営業生産性というと、売上を上げるための営業活動の効率性みたいな事になりますが、サービス業で継続取引の場合、「既存顧客との関係性から生み出されている売上がどのくらいになっているのか」がまずは大前提になると思います。

 前年にあった既存顧客からの売上(アップセル、クロスセル含む)、そして既存顧客との良好な関係性による新しい売上(他部署からの紹介や、担当者の転職先からの引き合いによる売上)が、どの水準にあるかがまずは鍵になります。もし年率115%の成長を目指そうとすると、この既存顧客関連から生み出される売り上げが、85%の場合と100%、115%の場合では、新規の営業活動で生み出さなければならない売上に大きな違いがあるからです。既存顧客との関係からの売上で115%の売上が実現できるのなら、新規にかける営業経費は必要なくなります。以前のエムエム総研はそういう感じでした。

 現状の既存事業の一部もそのようになっています。もちろん新規事業においては新規マーケットへのチャレンジを続けています。一般に既存顧客からの売上を上げるためにかかるコストと新規からの売上を生み出すコストは10倍の違いがあると言われています。年間で既存顧客からの売上が1億円減ったとすると、それを取り戻すのには既存営業にかかるコストの10倍のコストが必要ということです。

 企業の利益は、売上から原価を引いた粗利の中から、売上を上げるマーケティングや営業活動のコストと管理コストを差し引いたものになります。多くの粗利(付加価値)を上げる事と、粗利の中に占める、営業・管理コストをどう抑えるかが収益の根源という事になります。粗利率30%の会社が、必要な営業経費と管理費の合計を20%以下に抑える事ができれば営業利益率は10%を超える訳ですね。これはちゃんとした原価会計をしている事が前提ですが。

 サービス業の場合、既存顧客の売上が増える理由は顧客満足に起因する場合が一番多いと思います。これは 顧客満足度が高い→既存顧客からの関連売上が大きい→営業コスト率が低い(これはどのくらいの成長を目指すかによって適正値の判断は変わりますが)→営業利益率が高い。という構造になるかと思います。

 SaaSベンチャーなどのサブスクモデルでは、LTVなどの考えが一般化して可視化する事も容易なので、この構造は普及していますが、労働集約や知識集約のBtoBサービス業においても考え方は一緒だと思います。売上を伸ばそうとすると新規の受注へ目が行きがちですが、サービス業の場合はまずは既存顧客との顧客満足を前提とした良好な関係性がすべての土台になる事を肝に銘じる事が重要かと思います(もちろんお客様がWinWinの関係になれるターゲティングである事は前提ですが)。


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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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