• 2022/01/30
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はりこらむ 第45回「デジタルセールスが創る未来/トリプルWin」

  • 萩原 張広  
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デジタルセールスが創る未来/トリプルWin


⇒第44回「デジタルセールスの創る未来 人材編 ~デジタルセールス人材に求められる事~」はこちらから


 リクルート以前も営業をやっており、業績はそれなりに上げていましたが、仕事を心の底から楽しめていたかと言うとそうでもありませんでした。仕事内容も量的なアポ取りが多く、知的好奇心の強い私にはあまり楽しめませんでした。

 お客様志向だったので無理な営業はしたくないのですが、会社との間に挟まれて悩んだ時もありました。理想ではありますが、自分自身も楽しんで、業績も上がり、お客様も喜ぶ状態ができれば、営業って最高の仕事なのにと思っていました。自分に成長の機会を与えてくれた営業の仕事だからこそ、もっと楽しく効果的な方法があるのではと思う様になりました。

 リクルートに入ると、中途採用の求人広告(今でいうリクナビネクストの様なもので当時はまだ紙媒体)の営業なのですが、3年目くらいには、ほとんどアポ取りとか飛込営業とかしなくても、業績目標は達成していて、お客様からも喜ばれる事が多く、紹介なども多数いただくようになりました。広告提案の仕事なので個人的にも面白く、お客様に提案する広告の中身を考える時間が好きでした。ある意味、想像していた理想の状態に近いですね。

 もちろん最初はお客様がいないので、年に1回でなく、たくさん求人広告を出しそうな企業を選んで営業する事にしました。どこに営業するにも、新規1件受注するのにかかるパワーにはあまり変わりがありませんが、どこから受注するかでその後の業績は劇的に変わります。当時はソフトウェアと流通が成長業界だったのでそこに狙いを絞って営業しました。

 それから受注したお客様を大切にする事。当時のリクルートは新規を受注する営業マンは偉いみたいな文化がありましたが、私としては、新規のお客様への活動よりも、継続しそうな既存顧客を大切にする事にしていました。そして直接自分の業績に繋がらないことでも、お客様の為に貢献できるような活動をする事。自然にお客さんからの評価も上がって関連部署を紹介してくれるようになりました。新規のお客様も、すぐ受注する事を目標にするのではなく、ちゃんとヒアリングしてニーズが合わなければ提案しない。そうするとニーズが発生した時に問い合わせしてくれるようになります。

 これって後でマーケティングを勉強するようになって解るのですが、

・LTV(生涯顧客価値)を考えて、ターゲティングする
・顧客からの紹介や過去接触した見込み客からインバウンドがくるようにする
・売っている商品以外の事も相談できると言うブランディングを構築する

など、マーケティングの考え方に、沿っている活動だったんですね。経営学者のドラッカーさんが言うところの、「マーケティングとは営業をいらなくする事だ」です。(無理な売り込みや量的な活動しなくても自然に売れる状態になるという事)

 その後エムエム総研を設立して、営業のコンサルティングをやっていましたが、1998年、「マンハッタンの営業マンは飛込営業をしているのか?」という素朴な疑問から、ニューヨークに行って向こうの営業シーンを見たのが、その後のビジネスの大きなきっかけになりました。ニューヨークには当時からマーケティング戦略をもとに、営業の分業体制が出来ていて、ニーズのあるお客様を探すマーケティングと、そのリストに電話でアプローチして商談化する人員と、それを受注にもっていく営業と、受注した後にサービスを提供し継続させていくチームにしっかりと分業されていて、すごい成長率での業績を上げている会社がありました。想像していた通り、マンハッタンには当時から飛込営業とか無作為なアポ取りしている営業マンはいませんでした。

 私はこれをきっかけに、営業を変革するにはマーケティングが重要であるという考えが確信に変わり、2000年頃からマーケティング系のサービスをエムエム総研で提供するようになります。しかし、まだ日本の企業にはわたしたちのサービスは一部のベンチャー企業以外には理解してもらえず、その頃日本に進出してきた外資系IT企業からの仕事を受けるようになりました。ワールドワイドで有名な外資IT大手がその後、私たちのメインの顧客となり、その後15年以上経った今でも大きな取引を続けています。

 しかし私たちは、その経験で最先端のマーケティングの実務や戦略スキルを学ぶ事ができました。本来は、日本の企業にそういった提案をして日本の営業変革をしたかったのですが、順番は逆になってしまいました。ただそういった経験から学んだ知見が、エムエム総研の社員に根付き、そしてデジタルセールスアカデミーを創設できる事になったと思います。

 現在のコロナ禍において、多くの日本企業で対面営業が出来なくなり、非対面の営業、デジタルセールスの必要性が高まっています。個人的には、マンハッタンでのきっかけから20年以上経ち、やっと日本もよい意味で変われるチャンスが来たと感じています。私たちは、このデジタルセールスの発展機会において、日本の営業がただ非対面化するだけでなく、マーケティング戦略に基づき、企業もお客様も、そして営業に従事する人たちも(トリプルWin)、みなが成長できる状態であることを目指すべきだと思います。そうでなければ結局持続的な成長はできないからです。


注釈)デジタルセールス職とは?

一人の営業マンが、顧客の発掘から、受注、顧客フォローをリアルな訪問活動で行う従来の日本型営業ではなく、マーケティング戦略に基づき、見込み客の発掘、商談の育成、受注業務、顧客フォローの4つのプロセスに分け、それぞれの役割をマーケティング、インサイドセールス、オンラインセールスもしくはフィールドセールス、カスタマーサクセスの4つの職種人材が、デジタル技術を活用しながら主に非対面で行うそれぞれの職種。アメリカの企業や、日本でも先進的なSaaS系IT企業が導入している専門性の高い次世代営業職。


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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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