デジタルセールスの創る未来 人材編
~デジタルセールス人材に求められる事~
⇒第43回「デジタルセールスの創る未来その(3) ~営業生産性の向上と企業間競争の激化~」はこちらから
1.売り込むのではなく、本当にWin-Winな買い物をお客さまにしてもらうスタンス
古い営業的な考えの会社の中には、関心のないお客様でも誰でもよいから売り込んで、買ってもらえればOK。実際にその商品サービスをそのお客様が使って満足するかよりも、ともかく業績が上がればOKという文化の会社もありました。
しかしデジタルセールスの場合は、お客様の方からなんらかの反応があったものに対応して活動します。売り込むのではなく、正しい情報を提供してお客様のよい買い物をお手伝いする。本当にその商品やサービスが役に立つのか、そうでない場合は、おすすめしないようなスタンスが必要です。
特に法人営業の場合は、継続取引による生涯顧客価値(LTV)の最大化が重要になるため、ニーズの合わないお客様に無理やり売り込むことは長期的にはプラスにならない事にもなります。
2.意志を持った主体性。自分で仮設を立て検証し振り返り成長していくスタンス
マニュアル通りのトークをして、簡単に商談が成功するケースはまれです。デジタルセールスにおいては、1件1件のお客さまへの対応に対して、自分なりにしっかりと仮説を立てて、それを検証していくスタンスが必要です。
デジタルセールスはプロセスも結果も数値データとして可視化されるので、それを検証して未来につなげていく事が可能になります。古い営業でよく言われるところの気合と根性とその場の対応みたいな事では成長する可能性は低くなります。
3.チームで成功するために連携力を大事にするスタンス
デジタルセールスは一人で完結する事はありません。多くの場合はマーケティング、インサイドセールス、オンラインセールス、カスタマーサクセスなどに営業プロセスを分解し、分業して業務を行います。そして各チームが連携して全体としての成果を出すのです。
従来の営業の様に一人ですべてのプロセスを行うのであれば、自分ひとりの努力と成果が重要でしたが、デジタルセールスの場合は、他の人たちと連携して成果を出していく事になります。その為には他メンバーへのリスペクトや理解、適切な情報共有などのスキルやスタンスが重要になります。
デジタルセールス以外の職種の方でも今の仕事を通じてそういったスタンスが必要であり、また実践できている方もいるかと思います。そういった方は営業経験がなくてもデジタルセールスへの適応力が高いかもしれません。
現状、日本ではデジタルセールスの経験者がほとんどいません。一方で企業側のニーズは高まっています。という事は未経験からチャレンジしていける人材が増える事が望まれています。このコラムからそういったチャレンジのきっかけにしていただければ幸いです。
注釈)デジタルセールス職とは?
一人の営業マンが、顧客の発掘から、受注、顧客フォローをリアルな訪問活動で行う従来の日本型営業ではなく、マーケティング戦略に基づき、見込み客の発掘、商談の育成、受注業務、顧客フォローの4つのプロセスに分け、それぞれの役割をマーケティング、インサイドセールス、オンラインセールスもしくはフィールドセールス、カスタマーサクセスの4つの職種人材が、デジタル技術を活用しながら主に非対面で行うそれぞれの職種。アメリカの企業や、日本でも先進的なSaaS系IT企業が導入している専門性の高い次世代営業職。
■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。