• 2021/07/10
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はりこらむ 第24回「よい失敗と悪い失敗 ~被害と学びのバランスについて~」

  • 萩原 張広  
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よい失敗と悪い失敗

~被害と学びのバランスについて~


⇒第23回「成功しようとする考え方と失敗しない考え方 ~レシピがない方が美味しい料理が出来る事もある~」はこちらから


 何か新しい事にチャレンジすると小さな失敗はつきものです。でも失敗には、よい失敗と悪い失敗があるのだと思います。

 これを最近私は「被害と学びのバランス」という風に考えています。言うまでもなく被害が少なく学びが多いのがよい失敗で、被害が多く学びが少ないのが悪い失敗ですね。そして最近はこれに育成視点という考え方を持つようになりました。

 会社を始めて3年~5年くらいの時、バブルが崩壊して日本経済がかなり暗い感じの時代、そしてインターネットバブルもまだ始まっていない1993年から1998年くらいの間に、いくつかの新規事業、サービスにチャレンジした事があります。

 当時のサービス名を今思い出すと、ちょっと笑っちゃう感じですが、「サロンド」「リピート君」「確実君」「ネット君」。後から誰かに聞きましたが、サービス名のネーミングに困ると、人は「○○君」と命名するらしいです。いずれも業界特化型の販売促進パッケージサービスです。当時はまだインターネットが普及していなかったので、郵便やFAXを使って顧客フォローを代行するサービスコンセプトでした。

 「サロンド」は、名前の通り美容室向けのサービスで、美容室から来店者の来店履歴のカルテを毎日FAXで送ってもらい、そこに対してリピート時期に合わせて(例えば髪を切って2か月後とか)ハガキで来店促進のDMを出します。顧客リストの管理から、DMのデザイン作成や発送業務を一括で代行するサービスですね。同じ狙いで、やったのが「リピート君」と「確実君」で、これは不動産会社向けです。

 当時不動産業界では、売り切りの営業が一般的で、一度取引のあった顧客をフォローするという考えはあまりありませんでした。そういった中、賃貸契約の更新時とか、マンションを買って5年たってローンの支払いが上がるタイミングとかにDMを送るのを代行するサービスですね。「ネット君」は、今でいうフリーペーパーみたいなもので、地域の不動産物件情報を冊子にして、地域の飲食店や美容室などに無料で置いてもらって、その中身の冊子の作成・変更とデリバリーを代行してやるというサービスでした。

 今思えば、こういったサービスはすべてインターネットの時代になると実現されていますね。でも私たちが始めたこのサービスは、だいたい30~40社くらいまでの契約にはなるのですが、損益分岐を超えるところまで行かずに、そのうちに資金が枯渇して終了みたいな感じになってしまいました。いずれも計画段階での収支の見通しの甘さや、時代性に関してのヨミの甘さなど、ビジネスとしてチャンスはあったのですが、成功に導くにはもっと時間がかかったし、資金も必要でした。

 まあ今思えば、小資本の会社が複数の事をやりすぎですね。 まあ社長としては、その時の経験から準備の重要性と、勝負の時は、1点突破でリソースを集中する必要性を学びました。その後2~3年たった後に、「テレマックス」という、テレマとFAXDMを組み合わせたパッケージサービスをリリースして、このサービスにリソースを集中し、これが後の、法人営業コールセンター事業に繋がり、長い目で見れば今の私の会社の事業へとつながることになります。ちなみにこのテレマックスの名称は、電話とFAXで効果がMax!という意味で、私がネーミングしました。まあこの頃までは、自分で名称を決めていました。

 今思うと恥ずかしい限りですが。 この頃までの失敗は、私自身が、経済的にも心理的にも痛い思いをしましたが、その事で会社が倒産してしまう様な事は結果的にはならなかった。すぐに気が付けなかったけど、その後の停滞期(新規事業失敗後のしばらくおとなしくしている期間)において、客観的に振り返り学びには出来たのかなと思います。なので私個人にとっては、あながち大失敗ではなかったと思います。ただ組織という視点で言うと、本当に学べたのは社長である私だけだったのかも知れません。

 なぜならば当時は、大事な事は私が全部決めていて、一緒にやっている仲間は、そこまでの権限を持ちえなかったからです。結果、一緒にやったメンバーは本当の意味での学びには至らかったと思います、そしてこの当時の主要な仲間は殆どが辞めて、独立して経営者になりました。たぶん経営者になった後にたくさん学んでいると思いますが。彼らとは、今でもお付き合いさせていただいているので、今では懐かしい思い出です。

 社長が自分で決めすぎて、失敗すると、自分以外には、組織に何も残らないということを学べたというのが一番大きな学びでしょうか。 その後インターネット時代がやってきて、私たちの会社も成長の機会を得て、規模的には100名を超える会社になって行きました。4年ほど前に、新しい人材サービス事業に取り組みました。

 今では弊社の成長をけん引する事業になってきましたが。立ち上げて半年から1年くらいの時に、なかなか業績も伸びませんでした。私たちのサービスに対する理解は今ほど市場にはありませんでした。そんな中、半年くらい現場に入ってその事業部のメンバーと一緒に仕事をしました、週2で早朝ミーティングをやって、ロープレしたり、営業会議に出たり、営業同行もしたり。でも以前と違って重要決定事項を自分が、独断で決めたりはせず、事業責任者とその仲間たちの意志を尊重してやったと思います。

 この事業への投資や他の要因もあり、その期は会社全体として5期ぶりの赤字になってしまいました。そういう意味ではこれは小さな失敗ですね。でも事業メンバーの真摯な当事者意識と自らの意志でこの事業を成功させようという思い、そして自分たちで重要な事を決めていく事。そしてこの小さな失敗と苦しい時期を乗り越えた事は彼らを大きく成長させました。

 半年ほどで私は現場から離れ、今はその事業メンバーに任せています。その後もいくつか小さな失敗はあったと思いますが、今はそれがメンバーの中にちゃんと残っていると思います。失敗から学ぶ人が残ってまた、チャレンジしていく事。それが会社をさらに強くしていくと信じています。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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