起業の決断
~社長になる夢とお葬式!人生と時間は有限である事~
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私は、当時勤めていたリクルート社での社内結婚でした。29歳の時です。実はかみさんのお義父さんは、私がかみさんと付き合いだした頃には、末期のガンでかなり厳しい状況にありました。ある意味お義父さんが出席できるうちに結婚式を挙げようと、婚約から結婚までの流れも結構早いペースで進みました。かみさんと初デートの日の1年後に入籍で、その1週間後に結婚式と披露宴をやりました。そしてお義父さんも式に出席する事が出来、式が終わった時に涙ながらに背中をバーンと叩かれ「頼んだぞ!」と、言われた時の背中の痛みの感覚がずーと残っていますね。
私は20歳くらいから、いつかは起業して社長になろうと、まあありがちな話ですが、20代前半にした切ない失恋も一つの大きなモチベーションになっていて、20代は営業の仕事に打ち込んで結構ハードに働いてきました。その甲斐あってか、リクルートに入ってからも、順調に職域を広げ、20代でマネージャーになって年収もそれなりの金額になっていました。20代前半の失恋から、ずっと彼女もいなくて、あまりにも仕事ばかりしていたので、今のかみさんと知り合った頃は、そろそろ仕事も大事だけど、プライベートを大切にしてもよいのではと思い始めていました。
そして、結婚して、すぐにかみさんのお腹の中には新しい命が宿って、マンションの購入も決まって、幸せな新婚生活。起業に対する痛切なモチベーションがちょっとずつ薄れて、今のままで結構幸せだし、年収も結構もらってるし、リクルートも好きだし、このままサラリーマン続けてもよいのではと漠然と思い始めていました。
結婚式が終わって、お義父さんの病状は一進一退で、かみさんの実家にお義父さんを見舞いにいくと、布団の中に横になったままでいくつか話をしてくれました。お義父さんは、娘二人(かみさんが長女)だったのですが、娘婿ですが私が最初の息子という事でもあったのでしょう。お義父さんは、船を引き上げるサルベージ会社に勤めていたのですが、30数年勤めて、やっと最近取締役になられたばかりで、そんな中で病魔に襲われたのです。
布団で横になった状態で、取締役になったらこんな仕事もして、また新しいチャレンジもしてと、その機会を得る事によって、やりたかった事がたくさんあったようです。当時ちょうどリクルート事件の真っただ中でもあり、リクルートの創業社長の江副さんに対する意見も「私も経営者の端くれとして、言わせてもらえれば」と、前振りをした状態で語っていました。やっとこれからという時にガンになり、断腸の思いだったと思います。
私自身は、母子家庭で一人っ子という事もあり、実際の父親は離婚後ほとんどつながりがなく、父親が死んだのも役所からの連絡で知ったような背景があり、ある意味身近な人が亡くなりそうな経験はこれが初めてだったと思います。そして、そのお見舞いから数週間後にお義父さんは帰らぬ人となりました。自宅から病院に移っていたんで、お見舞いに行って、もう意識がなく小康状態で一度家に戻ると、連絡があり、容体が急変したとのこと。慌ててまた病院に戻りましたが、すでに息を引き取った後でした。その後、バタバタとお通夜やお葬式の準備などになりました。
なんだか不謹慎な感じもしますが、このお義父さんが亡くなるという体験が、自分の中でトリガーになって起業への決意が再度固まって行きました。
人生は、時間は、有限なものなんだなって、そういう考えがリアリティを持って自分の心に沁みてきて、やりたい事や夢があるのなら、やらないと、動きださないと、人生いつ何があるか解らない。やれる環境にあるのに、やらないときっとそういう状態でなくなった時にすごく後悔する。そんな気持ちが沸き上がってきました。
そして冒頭にも書いた、お葬式の最中に、雑務のお手伝いをしながら、実は心の中では起業の事についてずーっと考えているみたいになりました。そして実際にその後、起業に向けて具体的に動き出す事になります。お義父様が亡くなって1年3か月後にエムエム総研の社長としての人生をスタートする事になります。
会社を始めて、すぐにバブル崩壊して、経済的にはリクルートのサラリーマンの方がよかったじゃんみたいな状況も何年かありましたが、あの時あの決断をして、動き出していなければ今のエムエム総研はないですね。
お義父さんと同じように、自分も50代でガンになって、今は完治して元気ですが。人生は、時間は、有限であって、だからこそ悔いのない選択をしていかなければという思いは、今も一緒です。
■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。