• 2020/09/15
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小売業のオムニチャネル化は、デジタルトランスフォーメーション(DX)につながるか?

  • マーキャリ 編集部
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この記事では、アパレルなどの小売業界で広がるオムニチャネルとデジタルトランスフォーメーションの関係について解説しています。  オムニチャネル、デジタルトランスフォーメーションの2つの用語についても解説していますので、用語の意味が詳しく分かっていなくても問題ありません。ぜひ参考にしてください。

オムニチャネルと現代の購買プロセス「AISCEAS」

オムニチャネルとは顧客が商品を購買するまでのプロセスについて、オンラインとオフラインの垣根をなくすことを意味します。購買する際のプロセスとは、認知・情報収集・比較検討・購入・アフターサポートなどがあてはまります。


インターネットが発達した現代の消費行動は「AISCEAS」と呼ばれるものが有名です。AISCEASは「Attention(認知)」「Interest(関心)」「Search(検索)」「Comparison(比較)」「Examination(検討)」「Action(行動)」「Share(共有)」の7つの段階で構成されています。


「Attention(認知)」は企業側から消費者に認知してもらうための施策を行い、消費者に知ってもらうという段階です。たとえばテレビや新聞、雑誌、さらにはインターネット広告を活用して消費者に認知させます。


「Interest(関心)」は消費者が認知した商品に対して興味関心を持つ段階です。ここでは消費者にとって有益な情報を与えることが重要です。商品が気になっている人に向けて、もっと興味をもってもらう施策をとります。具体的には、自社サービスに関連した情報をまとめたブログ記事の提供や、折込チラシや資料の提供が該当します。


インターネットが発達した現代においては、興味を持ったものについては自ら調べることができます。これが「Search(検索)」です。検索とは、検索エンジンを用いたものだけでなく、TwitterなどのSNSでの検索も含みます。このフェーズでは、消費者がスムーズに購入に至れるように、検討する材料を提供することが重要になります。


Comparison(比較)は、興味を持った商品がどんなものだろうと調べること。検索をするのは商品そのものに対してだけではありません。たとえば食事をするレストランを探すときや、新しい家電製品を買おうとしたときには、必ずといっていいほど口コミを気にする方も多いのではないでしょうか。商品について知るために、比較対象を見つけてそれぞれを比べるというのがこの段階です。


Comparison(比較)した上でどちらがよいか、どれを買うべきかを検討する意思決定の段階がExamination(検討)です。検討の結果、買うべきだと判断すれば次の「Action(行動)」の段階で購入に至るというわけです。 商品について詳しい知識がない場合には、「本当によいものだろうか」といった意識が生まれるもの。そういう場合には自然と「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」をしているのではないでしょうか。


「Action(行動)」とは消費者が購入という行動をおこすことを指します。購入の気がそがれないよう、工夫も必要なところです。決済方法を複数用意する、サイトからの購入なら購入ページを分かりやすくするなども重要となります。


消費者は、検索して自分に必要であると判断した商品を購入します。購入したものについて口コミサイトやSNSなどで感想を発信したことがある経験をしたことがある方は多いのではないでしょうか。これが「Share(共有)」です。 AISCEASは、インターネットを使って商品を購入することを前提としていますが、オムニチャネルはこれらの行動をオンラインとオフラインでも同じようにできるようにすることを目指しています。  

オムニチャネルの具体例

それでは、オンラインとオフラインの区別をなくすオムニチャネルとは、どういった状態のことを指すのか具体的にみていきましょう。

メイシーズ


出典:https://www.macys.com/

オムニチャネルについて考察する際には、アメリカの大手百貨店チェーン「メイシーズ」が例として挙げられることが多いです。メイシーズが行ったオムニチャネル戦略は、実店舗とお店のECサイトの在庫を統一し、店舗スタッフにはタブレット端末を貸与することで、そのお店にある在庫だけでなくECサイトの在庫も含めた商品の提案が行えるようにするというものでした。これまでECサイトとリアル店舗は別のものと考えられる傾向にありましたが、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取れるようにするなどの顧客に合わせたサービスを展開し、大きく業績を回復させました。


メイシーズの成功例から、リアル店舗とECサイトの顧客・販売データ、在庫データを統合したりリアル店舗とECサイトのサービスを近づけたりしようとする企業の動きが活発になり、近年ではそれがスタンダードになってきた状況にあります。

アカチャンホンポ


出典:https://www.akachan.jp/

ベビー用品は小さなおもちゃや食器などからベビーカーなどの大きなものまでさまざまです。そのためリアル店舗で商品を購入した場合には自動車を持っていない顧客は持ち帰るのが大変です。この問題を解決するためにアカチャンホンポでは店頭にタブレットを設置し、商品をそのお店の在庫ではなく共通の在庫から自宅に配送できるサービスを実施。支払いは店頭で済ませ、早ければ翌日に自宅に商品が届く流れを整えました。

無印良品


出典:https://www.muji.com/jp/passport/

無印良品のオムニチャネル戦略の代表はスマートフォンアプリの「MUJI passport」です。これは無印良品のニュースや各店舗在庫検索に加え、ECサイトのように商品の注文もできるアプリです。リアル店舗とECサイトの垣根をなくすオムニチャネル戦略として、アプリをECサイトとして完結させるのではなく、実店舗への誘導も可能なように、商品を購入しなくても実店舗を訪れるだけでポイントが加算されるマイレージプログラムというサービスを実施しています。各店舗の600m圏内に入るとマイルが溜まるチェックイン機能も搭載し、チェックインした場所や時間帯に応じてクーポンや最新情報が受け取れるようにもなっています。

ABC-MART


出典:https://www.abc-mart.net/shop/

スニーカーを中心としたシューズを扱うABC-MART。靴は洋服などと比べても特にサイズ問題が厳しいです。1cmでも違えば履き心地は大きく変わってしまいますし、同じサイズ表記でもメーカーによって微妙にフィット感が異なります。そのため靴の場合はいくらECサイトが発達しても、実際に試着をしたい人の方が多いのが現状です。店舗に自分に合うサイズがなければ他の店舗でという流れが起きれば、その分機会損失につながってしまいます。


そこでABC-MARTがオムニチャネル戦略として取り組んだのが「サイズ問題の解消」です。ECサイトで購入した商品を、自分の都合のよいリアル店舗で受け取れるサービスを実施しています。ECサイトから試着のみのためにリアル店舗や自宅に取り寄せることはできませんが、購入したものをリアル店舗で受け取る際に試着してサイズが合わなければサイズ変更や、ECサイトを通しての返品も可能になっています。



これらの例で注意すべきなのは、リアル店舗とECサイトの垣根をなくそうとしているのは、すべて顧客のためであるということ。リアル店舗からECサイトに誘導する、またその逆というような一方通行の流れではなく、リアル店舗とECサイトの連携を強化することで、顧客の都合によってどちらも不便なく利用できることを目指し、結果として事業全体を成長させていこうとするのがオムニチャネルです。  

オムニチャネル実現への課題

単なる在庫統合などのシステム連携を行うことが収益に直結するとは考えるべきではないでしょう。たとえばECサイトの売上が上がることでリアル店舗の売上が下がるなどのような不満が出ている状態であれば、オムニチャネルは実現できているとは言えません。


それぞれのリアル店舗には基本的に売上目標があります。そのため、店舗の在庫をECに回すことや、リアル店舗に訪問してくれたお客様が最終的にECサイトで購入することを快く思わない店舗スタッフは一定数いるものです。これはスタッフに問題があるのではなく、会社としてオムニチャネルを実現していくという方針がきちんと現場レベルまで浸透していないことに問題があります。


経営側からすれば、リアル店舗で売れてもECサイトで売れても、結果として売上につながるのなら問題ないと思うものです。しかし、ECサイトで売れたものをどのように店舗側の評価につなげるかは難しいでしょう。ECサイトとは言っても無人で自動的に運営されているわけではなく、ECサイトの専門部隊がいるわけですからECサイトの運営とリアル店舗双方の評価の問題はオムニチャネルの実現を目指すならあらかじめ経営陣が明確に発信するべきだと言えます。


一方でリアル店舗側は、ECサイトがリアル店舗にも好影響を与えていることを認識すべきでしょう。現代の消費者の購買モデルである「AISCEAS」のうちの「Search(検索)」「Comparison(比較)」「Examination(検討)」の3つのアクションからも分かるように、今やリアル店舗に足を運ぶ人であっても事前にECサイトなどで商品を確認し、欲しいと思ったものをその目で確かめたり試着したりした上でリアル店舗に行くことが多くなっています。


リアル店舗だけで買い物をする人、ECサイトだけで買い物をする人もいますが、リアル店舗に行く人の情報源はECサイトであることが多いです。ECサイトがあることがリアル店舗へ訪問するきっかけとなっていることが往々にしてあるのです。


どうしても実際にスタッフが稼働している実店舗を優先して考えてしまいがちですが、オムニチャネルの進化した形として「OMO(Online Merges with Offline)」と呼ばれるオンラインがオフラインを包み込んだ状態や、オンラインとオフラインを融合させる戦略が注目を集めてきていることも頭に入れておくとよいでしょう。

デジタルトランスフォーメーションとオムニチャネル

近年耳にすることが増えてきた「デジタルトランスフォーメーション」。これはオムニチャネル化を目指す小売業にとっても知っておくべき重要なものです。 デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経済産業省では以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは製品をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。


よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものです。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがDXの本質です、デジタル化はあくまで1つの手段にすぎません。この点についてはしっかりと頭に入れておいてください。


新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要となります。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争上の優位性を保つために避けては通れないものなのです。


デジタルトランスフォーメーションとオムニチャネルは、一見関連性がないように思えるかもしれません。しかし、オムニチャネルはリアル店舗とECの区別をなくすことです。これはECサイトを充実させる、ECサイトから実店舗へ誘導するといったことだけで実現できるものではありません。そしてECサイトのようなデジタルに頼りきるわけでもありません。


デジタルトランスフォーメーションとデジタル化はイコールではありませんが、デジタルトランスフォーメーションは、デジタル化した先にしかありません。そう考えるとデジタルであるECサイトとリアル店舗が相乗効果を生むように戦略を立てていくオムニチャネルは、小売業界のデジタルトランスフォーメーション実現への大きな契機となるはずです。 

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