近年話題となっているデジタルトランスフォーメーション。この記事ではデジタルトランスフォーメーションを推進する際に、どこから手をつけていけばよいか分からない方に向けて、カオスマップの活用法を解説します。
カオスマップって何?
カオスマップという言葉を聞いたことがあっても、あまり活用したことがない、どういったものか分からない方も多いでしょう。カオスマップとは、特定の業界についてサービスや商品を提供する企業をカテゴリー分けしたものです。デジタル広告やデジタルマーケティングの業界で使われていること多いです。
簡単な例を挙げると、「国内キャッシュレス」についてのカオスマップでは、電子マネー(ICカード・スマホ)、カード(クレジット・デビット・プリペイド)、QRコード決済(スマホ)にカテゴライズされていて、電子マネーのカテゴリーにはSuicaやPASMOが、カードにはVISAやJCB、オリコカードなどが、QRコード決済にはPayPayやau payが記載されているといったものになっています。
(参考:【2020最新】キャッシュレス決済手段の選び方!おすすめ支払方法の徹底比較)
それぞれのカテゴリーでもさらに細かくカテゴリー分けされて記載されるのが通常です。 1つのカテゴリーに関わる事業者を各企業と所属するカテゴリー、関係性などを一覧にしたマップで、全体像の把握をするのに適していることが特徴です。それぞれの企業が複雑に入り混じって一覧になっていることからカオスマップと呼ばれています。
ちなみにカオスマップは和製英語です。カオスマップという言葉からは連想しづらいですが、言い換えるならば「業界の鳥観図」、「業界地図」となるでしょう。ちなみに英語では「Industry Landscape Map」、「Industry Cloud」などと呼ばれています。
カオスマップを使用する上での注意点
事業には常に新規参入がありますし、事業転換もあります。そのためカオスマップには、公式なものがあるわけではありません。カオスマップは、その複雑さが特徴の1つですが、あえて業界を広くとり、カオス感を強く演出して注目を集める、特定の企業に有利に扱うなどのプロモーション的な理由で作られているものもありますので注意が必要です。
カオスマップがデジタルトランスフォーメーションにどう役立つか
カオスマップの活用法に入る前に、簡単にデジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)について確認しておきましょう。デジタルトランスフォーメーションは製品をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」です。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。
よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものです。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です、デジタル化はあくまで1つのステップにすぎません。この点についてはしっかりと頭に入れておいてください。
とはいえ、製品のデジタル化がデジタルトランスフォーメーションへつながることは間違いありません。たとえばWeb会議ツールを導入するのも、長い目でみればデジタルトランスフォーメーションに近づいていると言えます。デジタルトランスフォーメーションへ至るまでには「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」の2つのステップを経ることになります。
どちらも業務工程をデジタルの力によって効率化していくものですが、デジタイゼーションはデジタルツールを導入することで特定業務のデジタル化やアナログ情報をデジタルにしてデータを蓄積できる環境を整えることを言います。一方デジタライゼーションはデータを活用して業務フロー(プロセス全体)をデジタル化していくことです。
日本企業は、今、2つ目のステップであるデジタライゼーションを行う段階にあります。最新鋭のPCを使っているのに、いまだに決裁書には担当者の押印が必要といった企業は少なくありません。使うものはアナログからデジタルになりました。でも業務にまだまだアナログが残っています。これを変えていかなければなりません。
そこで有効な手段の1つがカオスマップを活用すること。たとえば日本企業においてアナログな面が多い人事関連業務をデジタル化できるよう、HRテック業界のカオスマップを有効活用する方法があります。HRとはHuman Resourcesの略で、人材という意味です。HRテックとはモバイルやビッグデータの解析、IoTやAI、クラウドサービスといった「IT技術」と「HR」を融合させたものです。
人事は、採用業務だけではなく人材配置や育成、評価といった広い範囲の業務を担当しています。HRテック業界のカオスマップでは、「求人」、「採用」、「労務管理」などのカテゴリーがありますので、現在自社がアナログで人材に頼って行っているカテゴリーを選び、その中で課題を解消してくれる企業を探しましょう。
カオスマップが有効活用しやすいもう1つの業務としては、営業があります。外勤営業や内勤営業をサポートするツール、オンライン商談を始めるにあたって役立つツール、営業の資料などをペーパーレス化するのに役立つツールなど、営業の分野においてもテクノロジーを導入することで、デジタル化できるところは想像以上に多いですよ。
カオスマップは、それ自体が意味を持つものではなく、いかに有効活用できるかが重要となります。デジタルトランスフォーメーションへのステップとして、デジタライゼーションをすすめるならカオスマップから新たなパートナー企業を探してみるとよいかもしれません。