• 2020/09/03
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CEOが語る 第9回「コミュニケーションLTV/長く影響を受ける言動とは?」

  • 萩原 張広  
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コミュニケーションLTV/長く影響を受ける言動とは?

~言葉(Output)とシチュエーションの重みの違い~


⇒第8回「ギリギリの環境で結果を出す、営業マンとしての修羅場経験!」はこちらから


誰にでも、人生で影響を受ける言葉ってあると思います。同じ言葉なのに、長く影響を受け続けるものと、一瞬で消えてしまうもの。
人と人とのコミュニケーションにおいては、伝える側が意識していなくても、受け取る側が大きな影響を受ける時もあるし、伝える側が思い切り影響を与えたいと思って接しても、受け手は全くそうならないことも多いですね。

ずいぶん前に、独立を目指しながらある研修会社で働くS君という営業マンがいて、なんかの会の帰りに五反田の居酒屋で遅くまで飲んだことがありました。当時独立についての相談を受けていて、途中からあまり覚えていないのですが、彼にはいくつか課題がありそれを指摘していたような気がします。スキル能力的には高いのですが、なんだか人を引っ張っていけるような人間的な魅力がまだ足らないというか。そんなことを話して帰ったような曖昧な記憶が残っていました。

その後、彼からは連絡がこなくなり、ちょっと気にはなっていましたが、まあ元気でやっているかなと思い、こちらから連絡をとらずにいました。そして何年かたって、久しぶりにそのS君から連絡があり、飲みに行くことになりました。確か六本木だったと思います。彼はその後だいぶ頑張ったらしく独立し、かなりの収入をとれるようになり業績もよい感じになっているとのことでした。

「そうか、それは良かったね!」と、私もよい気分で報告を聞いていましたが、ちょっとお酒が回ってきた後に、「萩原さんのあの時の一言は一生忘れません。あんな悔しい思いをして、涙を流したことは今までありません!」と言われました。「でも、あの悔しさがあったから、今の自分があるし、今まで頑張れたと思います。ありがとうございます!」という彼。

おいおいちょっと待って、いったい何のことだろう。と、記憶をたどりますが、まったく出てきません。確かに私は、率直にその人の課題を言ってしまうことはよくあるけど。
他者に悪意を持って話すようなことはあまりないと思うけど、なんだろう?
私が意外そうな顔をしていると、「えっ、ひょっとして覚えてないんですか!ひどい!」
「まあまあ、結果的にそれで成功したんだから、よかったじゃない!」と無責任に言う私。

その後話を聞くと、私は飲んでいる途中で「君と飲んでいてもなんの意味もないし、つまらない、一緒にいるだけ時間の無駄だ!」と言って、居酒屋のテーブルにお金を置いて、突然帰ってしまったと言うことです。たぶん酔っぱらいながらも、その方が彼の刺激になると考えたような気もしますが、ただ本当に面白くなく帰ったのか、次に行きたい店があったのかはよく覚えていません。彼はその後一人でその居酒屋で泣きながら飲んでいたそうです。

たしかに私はそのS君という営業マンに期待感を持っており、可愛がってもいて、たまに飲みに連れて行ったり、知り合いの社長を紹介したりしていました。たぶん私からは評価されていると思っていたし、逆に信頼もしていたので、私にそう言われたことが、大きなギャップとなり、とても悔しかったのでしょう。そして悔しいからこそ、独立してちゃんと成功するまでは連絡を取らず、自分に自信がついたら、私を誘って飲みに行こうと決めていたようです。

これ狙ってこのシチュエーションを作って、この言動をとったのならすごいですね。
元々のお互いの関係性や私に対するイメージ、彼の性格や置かれている状況、ちょっとお酒が回った深夜の時間帯のしかも五反田の居酒屋、いろいろな要素が重なり、私の言動が彼に大きな影響力を与え、その後数年間、彼が頑張る原動力となります。
当たり前ですが、誰に対しても、「君と飲んでいてもなんの意味もないし、つまらない、一緒にいるだけ時間の無駄だ!」と言って帰って、その人がやる気になる訳ではありません。

以前から、私は営業の仕事の中で「シチュエーション」という言葉をよく使っていました。
営業の仕事で成果を上げようとすると、どうしても営業トークなど伝え方のスキルを上げようとします。でも、本当に大事なのは、営業における重要なシーン(営業で言えば初回訪問やクロージング)で、伝えたい内容をどんなシチュエーションで発するかということ。
受け手にとっては、どんなアウトプットかよりも、どういう状態でその言葉を聞くかの方が影響を受けるという意味で重要なことが多いからです。

若いころに、当時付き合っていた彼女と映画の約束をしていて、私が仕事で遅くなり、結局映画館についたのはもうラストシーンのところでした。彼女は、涙を流してそのシーンを見ていましたが、私はそのシーンを見てセリフを聞いても、何も感情移入できませんでした。当たり前ですよね。そこまでのプロセスがないのですから。

その人により強い影響を与えるようなコミュニケーションをとるには、話す内容も重要ですが、それより、どんな環境で、その人がどんな状態で、どんな面持ちにいる時に、また自分はすでにその人からどう映っているのかなどを含めた、シチュエーションの方が大切だと思います。ここを想定したり、想像したりできることが、影響力の高いコミュニケーションの根源になるのだと思います。
同じ決めゼリフでも、不良っぽい奴がいう真面目な言葉の方が、優等生風な人が言うより説得力が増すとかってありますよね。

これをBtoBマーケティングの現場で活かすには、顧客の状態を想像するために必要な情報の収集と、それをいくつかのセグメントに分けることが必要です(もちろんOne to Oneがベストですが)。そして世の中、業界の状況や、曜日や季節、その日の天気まで、様々なシチュエーション変数を想定して、タイミングやコンテンツの作成を行うことが大切になりますね。しかし現実問題としては、他社が行っていてうまくいってそうな表現を、自社と顧客との関係性や商品特性などのシチュエーションを考えることもせず、仮説も持たずに、簡単に模倣して使ってしまうマーケッターも多いようです。「どんな企画、どんなコンテンツ?」よりも「お客様は今どんな状態?」を想像する事に力を入れた方が、結果的に影響力の高いコミュニケーションが取れると思います。

⇒続きの記事はこちらから


■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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