• 2020/07/01
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『グロースハッカー佚』(第21話)【YouTuber (ユーチューバー)】

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新連載企画『グロースハッカー佚』。BtoBマーケティング会社に中途入社した八月一日 佚(ほずみ てつ)。前職ではプロモーターとして勤務していた小さな音楽レーベルを1人でメジャーレーベルにまで成長させたキャリアを持つ26歳彼女の誰も思いつかないような独創的な発想は果たしてBtoBマーケティング会社でも通用するのか。会社のブレーンとして様々な企業課題に立ち向かう彼女と会社の成長を追ったストーリー小説。

オンラインチャットで過去に録画した映像を流し、仕事をさぼっていた坂西。会社にもばれて、しばらく仕事について考える時間が欲しいと休暇を出していたが、この度坂西から佚へオンラインチャットへの招待が届く。

『グロースハッカー佚』(第20話)はこちら

YouTuber(ユーチューバー)

佚「お疲れ様です」

坂西「お疲れ!悪いね、リモワ中に別のオンラインチャットに呼び出して。ちょっと二人だけで話したかったから」

佚「いえいえ、お久しぶりです」

坂西「久しぶり!横さんから俺の事って何か聞いてる?」

佚「はい、この前、休業に入られたと聞きました」

坂西「そうなんだよ、精神的にまいっちゃって。この仕事合わないなってリモワになってから改めて感じてきててね」

佚「そうなんですね」

坂西「毎日動画ばかり見てるよ。YouTubeで。普段テッサンはどんなチャンネル見るの?」

佚「穴掘りです。手で掘って水汲んできたり」

坂西「穴掘り動画?なんだそれ。相変わらず変わってるな」

佚「で、お話は?」

坂西「あー、わるい、今テッサン仕事中だったね。簡潔に話すわ。実は俺、YouTube始めようと思ってて」

佚「YouTuber(ユーチューバー)ですか?」

坂西「そう、今の仕事やってても稼げないし、このご時世、市場価値を高めないと食って行けないなって思って。コロナ禍で色々な芸能人が始めてるの見て、より感じた。俺もこのままじゃダメだなって。前々から興味はあったんだよね。素人が俺の何倍も稼いでるの見て、真面目にコツコツ会社で働くのが馬鹿らしくなってさ」

佚「今の仕事(会社)はどうするんですか?」

坂西「取り合えず軌道に乗ったら辞めようかなって思ってる」

佚「そうだったんですか。なぜ、私にそれを話そうと?」

坂西「そう!そこでなんだけど、テッサンにアドバイス貰いたいなって思って。市場価値の高め方についても前にフォーラムとかで語ってたじゃん。その辺詳しそうだから、上手いやり方とかあれば教えてほしいなと。」

佚「坂西さんは動画編集とかの経験はおありですか?」

坂西「あんまないんだけど、今アプリとかでちゃちゃっと出来るでしょ。テロップ入れたり。あれなら俺でも直ぐできそうだなと思って」

佚「そうなんですね。コンテンツは何をなさる予定ですか?」

坂西「取り合えず、雑談かな。世の中の出来事を、マーケティング視点で切り裂いていこうと思ってる。売れてない商品とか引っ張り出して、なんで売れないのか話してみたり」

佚「それなら例えば、同僚の川門さんや類巣さんを誘って3人でやられてみたらいかがでしょう?」

坂西「あいつらは無理でしょ。人を引き付ける力と言うかトークにポテンシャルが無さ過ぎる。それだったらテッサンと一緒にやりたいわ」

佚「私ですか?」

坂西「うん、やっぱYouTubeは女が強いから!サムネで釣れるし。ちょっとお色気出したら直ぐ流行るじゃん。そういうYouTuber一杯見て知ってるもん。女は得だよな」

佚「お色気出したみんなが流行っているかどうかは知りませんが、性別は関係ないと思いますよ。坂西さんが知っているのは、坂西さん向けの動画だからであって、彼女らの戦略にはまっただけだと思います。女性が強いと感じるのは坂西さんにとってでしょう。坂西さんの目的はお金ですか?それとも自分の価値を高めるためでしょうか?」

坂西「両方かな。価値も高まってお金も入るのがYouTubeだから!」

佚「ご存じかもしれませんが現制度(2020年5月時点)ではチャンネル登録者が1000人を超えないと収益化はできません。年間再生数4000時間以上というのも最低条件とされています。一般人にとっては先ずこの1000人が壁となります。坂西さんも他者のYouTubeチャンネルに登録したことがあると思いますが、その時の心理はそのチャンネルで新しい動画が出た時にいち早く知りたい、つまり続編や次回作への期待、それから単純にそのチャンネル投稿者を気に入ったから忘れないようにブックマークしておきたい、またはフォローして応援したいといった感じではないでしょうか。先ず1000人を、坂西さんのチャンネルを見てそういった気持ちにさせなければなりません。そして更に1000人と年間再生数4000時間以上行ったからといって直ぐにお金は入りません。現制度では収益が8000円以上にならなければ振り込まれません。Googleは収益額の正確な基準を公表しておらず、チャンネルそれぞれ、その時期により変動があるようですが、大体1再生0.05から0.1円程度と言われています。0.1円以上であれば凄く良い方です。人気のYouTuberは、よりセグメントされたファンを抱えていることで、広告を見られたあとCVに繋がる率も上がるため0.3円など高く設定されている事もありますが一般的には10万再生されてやっと5000円程度が溜まる感じです。景気悪化に伴い広告を出す企業も減れば、今後もっと収益額が下がる可能性もあります」

坂西「そんなに稼げないの!? でもYouTuberの年収ってTVとかで第一線で活躍している芸能人よりも高いって言われてるじゃん。あれは嘘なのか?」

佚「いいえ、実際にそういう人もいるとは思いますが、今のYouTube人口からすれば、ほんの一握りです。無名な状態から始めた多くのチャンネルが登録者1000人の壁を超えられず、放置されています」

坂西「そうなのか...でも意外と行けるんじゃないかな。1000とか余裕で」

佚「なぜそう思いますか?」

坂西「だって今まで誰も知らなかったような一般人が喋るだけで何万人も登録される世界だから。俺の方がもっと有用性高い事話せるし。あとは戦略だと思うんだよね。そこをテッサンからアドバイス欲しいんだ」

佚「マーケティング視点で切り裂いて行かれるのですよね? であれば今まさに切り裂く時ですよ。坂西さん自身が商品です。」

坂西「いやいや、とは言ってもYouTube自体は未経験だから流石に戦略までは分からんよ笑」

佚「一度もモノを売った事がない人の『どんなモノでも必ず売れる術』という著書を読みたいとは思いませんよね?」

坂西「それでいうと、俺は売った事あるぞ!マーケティング歴長いし!」

佚「でもそれは本人の談でしかありません。リファレンスがないと中々信用は得られません。だからせめて3人など複数でやってみたらどうでしょう?そのやり取りの中で信用を感じてもらえるかもしれません」

坂西「やめてくれよ。あいつらと組んだら崩壊まっしぐらだわ! そもそもリファレンスっておかしくないか? 流行ってるYoutuberの多くは、信用がまるでない状態から、登り詰めていったんだぞ。それに可愛い動物の動画だってそうじゃん。楽器演奏してみた系もそうだし、リファレンスなんて関係なく凄い数見られてるだろ」

佚「例えば、人が行き来する場所にダンボールの箱が放置されてて、その中から子猫が顔を出したら、何人かは足を止めますよね?可愛いって興味を示して。でも、もし中から坂西さんが顔を出したらどうでしょうか?」

坂西「それは怖いな」

佚「なら、中から出てきたのが楽器を持った人で上手な演奏を始めたら、何人かは足を止めますよね? 特に、みんなが知ってるような曲を奏でていたら尚更興味を持つ人もいるでしょう。ところが出てきたのが坂西さんで、マーケティングについて語り出したらどうでしょうか?」

坂西「ただの酔っぱらいだな。いきなり語られてみんな怖がるだろ。ていうか、ちょっとシチュエーションの設定がおかしくないか?」

佚「客観的に見れば同じですよ」

坂西「それなら、さっきテッサンがよく見るって言ってた穴掘り動画はどうなんだ? 箱から俺がいきなり出てきて穴堀りしだしたら足を止めて見るのか?」

佚「それなら見ます」

坂西「え!どんだけ穴堀り好きなんだよ!?」

佚「穴堀った後を見たいんです。何かを成し遂げる姿とその成果に興味を持ちます」

坂西「つまり、もの珍しい事をしてる姿を見せれば良いと?」

佚「ちょっと違います。私は坂西さんの事を知っているから見ます。他の人が見たら、通報するでしょう。人が行き来する場所で穴なんて掘ったら。迷惑を考えて下さい」

坂西「いや、その前に知り合いなら見てないで止めてくれよ」


次回『グロースハッカー佚』お楽しみに!

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