バーティカルSaaS企業を徹底解説! ~転職でオススメな理由とは?~

バーティカルSaaS企業を徹底解説! ~転職でオススメな理由とは?~

目次

SaaS業界の転職にあたって「どの企業を選べばいいのか分からない」という悩みからマーキャリNEXT CAREERにご相談いただく営業職も多くいます。その場合におすすめしたい一つの軸がバーティカルSaaSの企業です。この記事では、バーティカルSaaSの企業に転職にあたって必要なキャリアの考え方を解説するとともに、5つの注目企業を取り上げます

※ 記事内の情報は2023年7月時点に調査したものです。

1.注目を集めるバーティカルSaaS

業界を問わずに利用できるクラウド会計、情報共有などSaaSを提供する企業のことを、ホリゾンタルSaaSと呼びます。ホリゾンタルは「水平」を意味します。

一方で、バーティカルは「垂直」という意味で、バーティカルSaaSの企業では、特定の業界に特化したサービスを提供しています。介護、医療福祉、製造などが代表的な業界です。

バーティカルSaaSの市場は、現在はまだ小規模ですが成長の可能性を秘めています。続いてバーティカルSaaSの業界動向と業界の特長から解説していきます。

バーティカルSaaSイメージ

1-1. バーティカルSaaSの国内動向を押さえよう

まず、SaaS業界全体の市場規模ですが、富士キメラ総研の調査(「ソフトウェアビジネス新市場 2022年版」)によると、2022年の国内SaaS市場規模は1.09兆円に達して年々成長しています。市場のうち現状ではホリゾンタルSaaSが市場を占めていますが、製造業などを中心に今後の成長が期待されています

企業の成長を判断する上で、資金調達は重要な視点の一つですが、建設・建築業界向けのバーティカルSaaSを提供する株式会社アンドパッドは、シリーズDにおける成長ステージで総額約122億円の資金調達を行いました。調達した資金は事業基盤のための人材採用と育成のほか、エンジニアの採用などを行うことを発表しています

また、医療向けのサービスを提供する株式会社カケハシは、2023年3月にシリーズCにおける総額94億円で資金調達を完了しました。エンジニア採用のほかカスタマーサポートの強化を行う予定です。

バーティカルSaaSの業界で、資金調達と採用に注力している企業は注目されています。資金調達については下記の記事も参考にしてみてください。


1-2. バーティカルSaaS業界、3つの特長

続いてバーティカルSaaSの業界の特長を整理すると、次の3つがあります。

・新規参入が難しい
・現状では市場規模が小さい
・市場を独占して、顧客のロイヤルティを高めやすい

業界の特性を理解した上で専門性の高いサービスを構築しなければならないため、新規参入を狙う企業にはハードルが高くなります。業界によっては老舗の企業が多く、古くから続いている仕事のやり方を踏襲して開発しなければならないケースがあることも参入障壁を高めます。

このような壁があるため、市場規模は大きくありません。しかし、参入が困難ということは独占しやすいという傾向にもつながります。バーティカルSaaSのサービスは、いったん顧客から評価を得られると、標準的なシステムとして使い続けてもらいやすい特長があります

2.バーティカルSaaSが転職市場で注目される理由

転職イメージ

次に、転職者の視点から、バーティカルSaaSに注目すべき理由を解説していきます。

2-1. 成長を体験できる

ホリゾンタルSaaSで市場が成熟していると、競争が激化して成長が鈍化する可能性があります。一方バーティカルSaaSの業界は、現在のところ企業やサービスが少ないため、場合によってはブルーオーシャンの状態で、企業の成長を体験し事業・サービスを育てていく実感が得られます。自社はもちろん顧客の成長も体験できます

資金調達を行った企業や上場前の準備段階のステージに入った企業の多くが、人材強化のために積極的に採用活動を行っていますので、営業職はもちろん、インサイドセールス、カスタマーサクセスなどの新しい職種にも注目するとよいでしょう。

2-2. 業界に特化したノウハウが活かせる、身につけられる

ホリゾンタルSaaSの企業は業界にとらわれず多くの業種業界の顧客に営業できる面白さがある反面、仕事が広く浅くなるケースもあります。一方でバーティカルSaaSの企業は業界に特化しているため、介護、医療など特定の業界に深く関わることができ、業界の負の面を解決する社会的な意義も感じられます

また、バーティカルSaaSの企業で得たノウハウは、長く自分の資産になる可能性が高いとえいえるでしょう。理由としては専門性が高いからで、今後のキャリア形成の上で貴重な経験と学びがあります。

2-3. 安定した環境で、じっくり仕事に取り組める

スタートアップというと成長に波があり、不安定な経営というイメージがあるかもしれません。しかし、バーティカルSaaSは新規参入が難しい業界であることから、安定した環境で長期的な視野を持って働き続けられることがメリットです

長い時間をかけて業界の存在感を確立した企業は、大規模な資金調達と上場を果たしていますので、安定感があり、長期的にじっくり仕事に取り組むことができる点で魅力があります。

3.バーティカルSaaS業界の転職前の準備

バーティカルSaaS業界に転職する際に大切なことは、「俯瞰(ふかん)」の視点を持つことです。俯瞰とは、鳥のように上空から地上を見渡すことをいいます。

SaaS業界だけでなく、日本そして世界の産業全体を見渡すのはもちろん、特定の業界の過去や現在だけでなく、将来性までを見据えることが重要になります。さらに自分のキャリアも俯瞰して見つめることが大事です。

と少し抽象的ですので、ここから具体的に解説します。

3-1. 産業と業界全体、社会全体を研究しておく

バーティカルSaaSは業界に特化しているため、当然のことながら専門的な業界知識が求められます。しかし、あまりにも専門にこだわりすぎて、視野が狭くならないように注意が必要です。

例えば物流業界では、2024年4月より時間外労働の規制が適用されることで起きる「2024年問題」があります。しかし、製品や部品の物流を考えると、製造業界においても決して無関係な問題とはいえません。つながりのある業界知識にも視野を拡げるようにします

グローバルに展開しているクライアントを対象としているサービスの場合には、他国との関係や制度の知識も必要になります。海外のSaaS製品についても動向を把握しておきます。

バーティカルSaaSの企業に転職を考えているからこそ「ホリゾンタルな視点」を持つことをおすすめします。自分のキャリアを考える上でも、専門性を前提として、産業や業界全体、社会全体を見渡す視点が大切です

3-2. 長期的な視点で企業を分析する

スタートアップの企業では、MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)に注目するとよいでしょう。中小企業の未来を変える、働き方を刷新するなど、創業者の言葉に注目して「企業が成し遂げようとしているのは何か」を押さえておきます。過去・現在・未来の時間の流れで、その企業がどのように成長して、どこに向かおうとしているのかを俯瞰します。

スタートアップは成長ステージによって大きく変化します。創業期から社内風土をはじめ事業の方向性がまったく変わってしまうことも想定しておくべきです。創業時に5人で和気あいあいで仕事をしていた会社が300人以上の規模になり、上場やM&Aの準備を始めるようになって「こんなはずじゃなかった」と失望することがあるかもしれません。あるいは、順風満帆の企業が景気の変動によって業績が悪化し、あっけなく転落していく場合もあります。

先行きの読めない時代ですが、応募先のバーティカルSaaSの事業が、長期的な成長を維持できるかどうか俯瞰的に検討します

そして、俯瞰するときには「客観性を持つこと」が大切です

創業者の熱意に惚れ込んでいたり、自分に興味のある事業を展開していたりすると、どうしてもマイナス評価に目をつぶりがちになります。しかし、現実を直視しなかったばかりに、転職に失敗して困るのは自分です。可能な限り長期的な視点から、あらゆるリスクを想定して準備します。



キャリアイメージ

3-3. キャリアの棚卸しと適性を見極める

SaaS業界と転職候補の企業を空間的×時間的な俯瞰ができたら、自分のキャリアを棚卸しして、マッチするかどうかを考えます

業界に特化しているバーティカルSaaSでは、これまでの業界経験が強みになります。製造業の経験があれば製造業、医療の経験があれば医療業界のバーティカルSaaSのように、現在の仕事を活かせる企業への転職がベストといえるでしょう。

異業種から転職する場合は、足りないスキルや知識を補えるアピールポイントが必要です。徹底的に応募先の事業を研究して、具体的に達成可能な成果を提示すべきです

例えば、攻略が難しかった新規開拓先に時間をかけて訪問し、最終的にクロージングできたような経験があったとします。このときは、過去の実績を述べるだけでなく、転職先でどう進めていくかといった提案として内容を詰めていきます。転職先のコーポレートサイトから事業戦略や導入事例などを参考にするとよいでしょう。

自分が得意な部分、スキルとして足りない部分をしっかり把握した上で、応募に臨むようにします。このように自分自身に対する俯瞰、客観視が大切です。

4.tenbōが注目するバーティカルSaaS企業

tenbōが注目しているバーティカルSaaS企業をピックアップしてご紹介します。

運送業界、介護業界、医療業界、建築業界、ウェルネス業界のように、それぞれの業界向けのサービスを展開している企業です。業界動向で取り上げた株式会社アンドパッドについても、あらためてサービスを紹介します。

4-1. X Mile株式会社

X Mile株式会社 出典:https://logipoke.com/

日本の労働人口が減少し、物流、建設、製造などの産業は深刻な人材不足に陥っています。加えて運送業では、2024年4月より時間外労働の規制が適用される「2024年問題」が浮上し、早急な対策が求められるようになりました。

X Mile(クロスマイル)株式会社は、物流業界をはじめノンデスクワーカー向けのSaaS「ロジポケ」により全国数千以上の事業者と取り引きを進める企業です。「令和を代表するメガベンチャーを創る」というミッションのもとに2019年に創業、2022年には大阪と福岡の拠点を設立し、2023年には100名規模の組織となり拡大を続けています。

人材不足の解消に対する取り組みとしては、ノンデスク事業者向けの人材採用システム「クロスワーク」のほか、「ドライバーキャリア」「整備士キャリア」「建職キャリア」を運営しています。

Webサイト:https://www.xmile.co.jp/

4-2. 株式会社エス・エム・エス

株式会社エス・エム・エス
出典:https://ads.kaipoke.biz/sites/lp/biz_302/biz_302_lp.html

介護業界を中心としたバーティカルSaaSを提供する企業として代表的な企業です。「高齢社会に適した情報インフラを構築することで人々の生活の質を向上し、社会に貢献し続ける」というミッションの実現に取り組んでいます。

高齢社会における課題における社会課題を踏まえて、キャリア(介護キャリア、医療キャリア)、介護事業者、シニアライフ、ヘルスケアの4つの事業領域においてサービスを提供しています。介護事業者向け経営支援プラットフォーム「カイポケ」は、介護・障がい福祉サービスを単位として全国約45,200事業所を支援するバーティカルSaaSです(2023年4月1日時点)。

2008年に東京証券取引所マザーズに上場、2011年に東京証券取引所市場第一部に変更、2022年には東証プライム市場に移行しました。マレーシア、フィリピンにおける人材紹介会社の子会社化など、アジアパシフィック地域(APAC)における社会課題の解決にも取り組んでいます。

Webサイト:https://www.bm-sms.co.jp/

4-3. 株式会社メドレー

株式会社メドレー 出典:https://clinics-cloud.com/karte

「医療ヘルスケアの未来をつくる」をミッションとして掲げ、医療業界における人材プラットフォーム事業、医療プラットフォーム事業を中心に展開する企業です

人材プラットフォーム事業では、医療ヘルスケア分野における日本最大級の人材採用システム「ジョブメドレー」を展開しています。医療プラットフォーム事業では、クラウド電子カルテ「CLINICSカルテ」、オンライン医療システム「CLINICSオンライン診療」、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」、クラウド歯科業務支援システム「Dentis」を展開し、医療業界のDX推進に貢献しています。

2009年に設立、2019年に東京証券取引所マザーズに上場を果たしました。グッドデザイン賞(2019年)、総務省の後援による「ASPIC IoT ・ AI ・クラウドアワード 2019」 ASP ・ SaaS 部門 ベスト社会貢献賞など、企業として数々の受賞歴があります。

東日本大震災、新型コロナウイルスの感染症拡大時には、オンライン診療の分野で積極的な取り組みを行いました。

Webサイト:https://www.medley.jp/

4-4. 株式会社アンドパッド

株式会社アンドパッド 出典:https://andpad.jp/

「建築業界のDX化をワンプラットフォームで」を掲げ、現場の効率化から経営改善まで一元管理できる施工管理アプリを提供しています

「ANDPAD」には、クラウド上で施工管理のためのボードやガントチャートを表示す機能のほか、受発注や引合粗利管理、検査項目の見える化などを備えています。また、黒板や図面の共有、チャットによる情報共有など多彩なコミュニケーション機能もあります。

バーティカルSaaS業界の企業の中で、注目されている企業の一つです

Webサイト:https://andpad.co.jp/

4-5. 株式会社hacomono

株式会社hacomono 出典:https://www.hacomono.jp/

医療とともに健康に対する関心が高まっています。株式会社hacomono(ハコモノ)は、ウェルネス産業に特化した店舗の会員管理・予約・決済システム「hacomono」を提供し、スポーツクラブにおける煩雑な業務の課題を解決するDXを提供する企業です。2023年4月時点で導入店舗数は3,000店舗、310万人のユーザー数を誇ります。また、閉店・経営難以外のチャーンレート(解約率)は0.5パーセント以下として、ほぼゼロを維持しています。

スクールや在庫の管理を含めたリアル店舗や施設の基幹業務をバーティカルSaaSで支援しており、スマホで来店予約や決済が完結し、入会の手続きもスムーズに行うことが可能です。デジタル会員証の発行、オンラインレッスンにも対応しています。

創業は2013年、店舗のデジタル化の推進事業を展開した後、2019年に「hacomono」をリリースしました。2023年4月には、シリーズCにおける総額38.5億円の資金調達を実施し、開発や新事業の実現のための人財採用と組織力強化に投資していく予定です。

Webサイト:https://www.hacomono.jp/company/


バーティカルSaaSへ転職した方の声として、下記の動画(飲食店DXで飲食業界をする株式会社Goals社へのインタビューダイジェスト)もご参考ください。


5.バーティカルSaaS向いている人は?

バーティカルSaaSに向いている人は、まず業界を好きになれる人、そして専門知識を貪欲に学ぶことができる人といえるでしょう。業界特有の雰囲気に浸かりながら、変革に喜びを感じられる人が向いています。

もう少し補足すると、変化を拒む保守的な企業、デジタルを敬遠するタイプの担当者などから批判的な意見があったとしても、地道にアプローチを続けて、サービス導入の結果につなげる営業が向いています。

バーティカルSaaSの業界には、ニッチな領域の企業がたくさんあります。ホリゾンタルSaaSの業界のような知名度はないかもしれません。ただし、例えば介護業界や医療業界のDX推進には社会的に大きな意義があり、それぞれのバーティカルSaaS業界の企業は、あるべき未来の姿を明確に抱いています。

業界と社会を変えようとするミッションに対して共感できるか、行動を起こせるか、といった適性が求められます

6.どのようなスキルを得て、キャリアを歩いていける?

バーティカルSaaS業界への転職は、業界知識を深められることが最大のメリットです。仕事を通じて得られた知識と自信は、さまざまなキャリアに活かすことができるでしょう。

リスキリングが注目されていますが、ノーコードやローコードの開発ツールを使って、開発未経験者がシステムを作る場面が増える可能性があります。営業であったとしても、クラウド上で提供されているサービスや自動化ツールを活用できれば、スキルとして価値があります。

また、業界理解とSaaSの熟知によって、それぞれの業界でDXを推進する仕事や、業界知識をもとにしたコンサルティング、起業の道が考えられます。

7.まとめ

医療や介護の重要性が高まり、人材不足のために物流業界や製造業界は変革が求められています。こうした企業にSaaSの導入を進めていくことは社会的に意義があり、やりがいのある仕事です。「日本の産業を変える!」という志を持って、バーティカルSaaSの業界を転職先として研究してはいかがでしょうか。さらに詳しくバーティカルSaaSについて知りたい方はぜひ、マーキャリNEXT CAREERにご相談ください。

マーキャリ 編集部

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