新型コロナウイルスの感染拡大を受け、コロナショックという言葉が生まれました。ショックという言葉が付くと、他に大きなショックを世界に与えてきた出来事とよく比較されます。直近の場合はリーマンショックになるでしょう。しかしコロナショックとリーマンショックは似ているようで似ていない部分も多いです。そのため様々な観点からリーマンショックとの違いについて解説します。
コロナショックとリーマンショックの本質的な違い
コロナショックとリーマンショックは共に経済が混乱するという点では共通しています。しかし、だからといってひとくくりに捉えてはいけません。根本的には全く違います。明確な違いはコロナショックの場合下流から上流へ経済活動の悪化が波及し、リーマンショックは上流から下流へと経済に打撃を与えている点です。ではそれぞれについてみていきます。
リーマンショックの場合
2008年、大手の金融機関の破綻を機に世界全体に不安が広がり経済が悪化していきました。仕組みとしては、金融機関の破綻によりお金が貸せなくなる→企業はキャッシュが不足し生産低下→従業員に給料が払えなくなり個人消費低迷という流れです。日本で言うバブル崩壊が世界で起こったイメージです。日本はバブルが崩壊してから立ち直るまでに相当の時間を要しましたが、世界でもリーマンショックが起こってからは、失われた7年と言われるほど不景気の時代が長く続きました。このように個人消費に影響が出るまで少しタイムラグがあったのがリーマンショックです。
コロナショックの場合
2020年のコロナショックの場合は、ヒトもモノも動かない状況のため個人消費が冷え込む→物が売れなくなり企業の倒産が相次ぐ→企業にお金を貸している金融機関にも影響が出始めるという流れになっています。現時点では金融機関が破綻するという情報はまだないですが、現在の状況が長期化すればいずれ表面化してくるでしょう。このように個人消費から経済悪化を招いたのがコロナショックです。
以上のような理由からコロナとリーマンショックは本質的な違いがあるため、同じようなショックとして考えてはいけないでしょう。
それぞれの指標に注目しコロナショックとリーマンショックを比較
こちらではコロナショックとリーマンショックで、ある1つの指標に基づき比較検討します。根本の部分は違いますが見方によっては共通している点もあります。様々な角度からみていきましょう。
株価の観点では
まずは株価に注目してみていきます。日本の株価指数である日経平均株価で比較するとリーマンショックでは発生してから約40%下落しました。この下落幅は過去にもない最大級の下落になります。コロナショックではコロナが発生してから約30%下落しています。リーマンショックに比べればまだ下落していない方ですが、過去2番目の急落になり今後さらに下落する可能性もあります。
短期間での大きな下落という点では同じですが、危機度でいうと全然違います。コロナショック下の株価は乱高下が激しいですが、取引ができなくなった銘柄はありません。しかしリーマンショックの場合は投資信託の一部取引が停止したという出来事がありました。投資信託の場合は運営しているファンドが買いや売りの決定権があるため、当時は金融機関の破綻ということもあり非常事態として扱われ市場が閉鎖しました。投資信託の取り扱い停止というこれまでにない現象が起きたこともパニックを加速させる要因になっています。そのため今後コロナショックでもこのようなことが起きればより一層の下落というのも頭に入れておいた方がいいでしょう。
失業率の観点
失業率という点でみればコロナショックの方が圧倒的に影響を受けています。リーマンショックでは米国の場合、金融機関や製造業を中心にリストラが相次ぎました。では現在はというと明確な数値は出ていませんが全産業でリストラが広がっています。特に印象的な指標は米国の失業保険申請件数です。これはその名の通り失業した人が保険を受けるために申請するものになるのですが、通常時であれば1週間で20万人程度になります。しかし現在では1週間で約500万件になっています。1ヶ月で約2200万人の方が失業保険の申請をしました。リーマンショック時と比較しても約8倍相当になります。このような観点で見ると新型コロナウイルスの恐ろしさが実感できるでしょう。
買い占めの観点
今回の騒動で代表する出来事になった買い占めという点についてです。みなさんもご存知の通りで新型コロナウイルスの影響で生活必需品や食料品の買い占めが起こりました。ではリーマンショックの頃はというと、買い占めは起きていません。理由は意識の違いです。リーマンショックでは金融市場が混乱しましたが、それは上流で起こっていることであって直接的に消費者に影響があるだろうと想像する人々が少なかったです。
一方で今回の場合は外出制限の影響もあり、一度に大量に物を買わざるを得ない状況になり買い占めに走った人々が多く見られました。
過去に起きな大規模な危機との違い
歴史は繰り返すと言われるようにリーマンショック以外にもこれまで何度か危機やショックはありました。過去の危機と比べより新型コロナウイルスの危険度がどのくらいなのか見てみましょう。
世界恐慌
1929年に世界で経済危機が起きました。きっかけは米国の株価暴落です。なぜ暴落したかというと製品の生産過剰です。当時ヨーロッパは不況で米国の一人勝ち状態でした。そこからヨーロッパ経済は着実に復活をし、これまで米国に頼っていた国もヨーロッパを再び頼るようになりました。すると米国の物が売れなくなり生産過剰が起きて経済が悪化しました。米国はそれまで景気もよく各国に資金を貸していたため、米国と取引があった国々は軒並み影響を受けてしまったという背景です。当時は銀行から工場、農作物の価格などが大きく下落し失業者が溢れました。
状況はコロナショックと似ているように思えますが世界恐慌のようなことが再度起きることは考えにくいでしょう。理由はこの世界恐慌を機に新しく財政出動という経済対策が生まれたからです。今では10万円を一律配るなどの国からの大規模な経済下支え政策の考えがありますが、当時はその考えがありませんでした。そのため不況を止められず世界が復活するまでに約10年の月日がかかりました。過去の失敗を生かして次に進んでいるという点から世界恐慌のようなことが起こるということがないと言えるでしょう。
オイルショック
続いてオイルショックです。こちらは1973年の第四次中東戦争をきっかけに起こりました。OPECと呼ばれる原油の輸出入を仕切っている機関が戦争により供給することに制限をかけました。その結果原油の価格が約4倍になり、石油は当時様々な製品を作っている原料になっていたため世界経済は混乱に陥りました。
オイルショックとコロナショックで似ている点は買い占めです。オイルショック時もトイレットペーパーが店頭から消えました。理由はトイレットペーパーの原料である石油が日本に入ってこないとなると単純にモノが不足してしまう可能性があったからです。また一部の買い占めにより値段が上がり、景気が悪い中で物価が上昇するスタグフレーションという現象が起きました。この現象はこれから起きる可能性があると危惧されています。日本でもマスクなどの一部商品が不足しており、その波が他の商品にも広がると需要超過になり値段が自然と上がってしまいます。つまりスタグフレーションが起きるという訳です。
このような点からみるとオイルショックがコロナショックと一番似ていることになります。
まとめ
このように比較するといかに日本国民の危機感が足りていないということがわかるでしょう。これから過去に起きた危機と似たようなことか、それ以上のことが起きることを想定した上で行動するのが望ましいでしょう。