手段は目的と前提条件にしたがう
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起業して間もない頃、高校時代の知人が急成長中の飲食ベンチャーのCFOをやっていて、一緒に食事をしたことがあります。高校卒業後、十数年ぶりの再会でしたが、「久しぶり!」と乾杯するやいなや、「ところで萩原は起業したと聞いたけど、目指しているのは家業?それとも企業?」と聞かれました。いきなりの質問に戸惑いましたが、カッコつけて「企業!」と答えた覚えがあります。20歳の頃から起業を考えていましたが、個人事業主ではないイメージは持っていたので、そう答えたのかも知れません。
その友人が経営メンバーとしてやっている会社は、株式上場を目指していて(当時はまだグロースのような新興市場はなく、上場基準はもっと高いものでした)、社長も含め株式上場することを目標に頑張っているようでした。起業するにも目的はいろいろあり、どんな目的を実現したいかによって、学ぶことや実際に行う戦略や実務にも違いが出てくることを彼は私に伝えたかったようです。その時はなんとなく理解できた感じでしたが、その後の経営経験を通じて今はよく分かります。 経営の相談を若い人から受けることもありますが、答えだけを教えてほしいという人もいますね。目的と前提条件によって、どんなやり方が正しいかは変わってきます。そのため、相談に答えようといろいろ聞いても、自己開示してくれない場合も多いです。もしくは社会貢献や規模的なことなど漠然とした目的である場合も多いですね。一方、以前相談を受けた同世代の社長は、「お金を稼いでクルーザーを買って、海の傍に豪邸を建てたい」と言っていて、むしろそれはそれで正直な物言いで気持ちよかったです。そうした具体的な目的があれば、やり方もはっきりしてくると思います。
経営に限った話ではなく、会社の会議や研修などの場面でも、「ちょっとやりづらいメンバーがいる時は○○さんはどう対応していますか?」といった、答えだけを聞こうとして質問を投げる人も多いですね。本当に解決したいなら、そこで手段としての対応方法だけを受け取っても意味はないのではと思ってしまいます。自分たちはどういう状況にあり、どういう状態にしたいのかをちゃんと認識して、はじめてそれに合ったやり方が選定できるからです。多くの人は分かりやすい手段としてのやり方に目がいって、手段が目的化しがちだと思います。
AIの活用もそうですね。AIでいうプロンプトはまさにそれにあたると思います。AIから有効な選択肢を得るためにも、自分の目的や前提条件をいかに正しく伝えられるかが重要です。もっとも、いまのAIは上手に質問返しもしてくれるので、だいぶ助かりますけどね。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。