
最近知った法則に「1万時間の法則」があります。どんなド素人でも。1万時間修行したり、研鑽したりすると、誰でも達人になれるという法則です。
たとえば、ギターを弾けない人が、今日からギターの練習をするとします。1万時間やれば、人前でプロのように弾ける達人になれるという事です。
1万時間というのは、1日3時間費やすと1年で1,000時間、つまり、10年間かかります。確かに、10年もかけて習得したら達人になれますよね。この法則は『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グラッドウェル 講談社)にも詳しく書かれています。この本はアメリカで、3ヶ月間に100万部売れたようです。
一方、AIが普及するであろうこれからの時代で、この法則はどうなっていくのでしょうか?人間が何かの達人になるために必要だった習得の機会や時間が、むしろAIに奪われてしまう危機感も感じています。ただし、本当の達人と言うのはテクニカルな事だけでなく、メンタル面も含めその仕事や芸術に対して深い理解をした上で表現できる人だと思います。単なるルーティンワークや意図のない練習では、本当のスキルは磨かれません。自分と向き合い、深く考える時間がないと、本当の達人にはなれないのだと思います。
私自身は、営業及びマーケティング系の仕事を始めて45年になります。20歳から一営業パーソンとして、またリクルートに入ると営業マネージャーとして、独立後は営業のコンサルタントとして活動してきました。その後は営業・マーケティングを人材面も含めて支援する会社の経営者として過ごしてきました。
振り返るととても長い年月をかけてやってきており、1万時間は優に超えていると思います。無理して続けてきたわけでなく、楽しかったからこそ続けられたのだと思っています。強引な営業手法ではなく、科学的でクリエイティブな力も活用したマーケティング思考やそれが出来る人材の育成・採用などをテーマに取り組んで来ました。
一番の原体験は、20代前半にリクルートで求人広告の営業をしていた時のことです。ただ広告のスペースを売るのではなく、クリエイターと一緒にお客様の事業や仕事内容を深く理解し、それをどうやって広告として表現していくのかを考えて提案していました。
そして成果が出た時にはお客様と一緒に喜ぶことができました。そうやってお客様の課題を解決する事で、またお客様からお仕事が頂けるようになる。その仕事が好きでした。
独立後も経済的な合理性だけ追及していたなら、事業的には他にも選択肢があったような気もします。儲かりそうだからといって始めても結局は続かなければ結果は出ないと思うので、長期的に見れば、楽しいと思えた、今の仕事を続けてこられた事が正しかったのではないかと思っています。
何かの達人になりたい、極めたい、そして場合によってはそれで経済的に豊かになりたいと本気で決意しているのなら、「ちゃんと向き合った1万時間を積む」ことが重要かと思います。そして大事なのは「楽しむ事が出来る事」。そうでないと結局は続かないと思うからです。また楽しむことに年齢は関係ありませんし、いつからでも始められます。年齢を重ねると時間的には余裕がある場合もあるので、一日6時間取り組めるなら5年で1万時間を達成できますね。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。