• 2025/03/28
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はりこらむ 第118回「AI先生と寄り添い先生~AI時代に必要な力~」

  • 萩原 張広  
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AI先生と寄り添い先生
~AI時代に必要な力~

 ⇒第117回「会社を伸ばす社長と、潰してしまう社長~オープンの重要性~」はこちらから


  このコラムでも書いていますが、10年以上前に早期発見できたがんが完治してますが、その後も定期的に検査を受けています。何度か数値が高くなり再検査をしましたが、幸いにもがんは見つからず現在に至っています。最近、また数値が高くなり、当時手術をしてもらった10年以上のお付き合いのある先生に「これはもう確率が高いからまた手術だ」と言われました。

 この先生は優秀な研究者タイプですが、私の事を10年以上診ているにもかかわらず、ほとんど理解していません。人としての関心はないようです。私が経営者であることや、どんな仕事をしているか、家族のことも何も知らないと思います。検査のデータと自分の研究的な関心から、私とのコミュニケーションも最低限です。自分の中では「AI先生」みたいなイメージを持っています。説明も少なく、断定的な結論だけを言われる感じですが、今回はさすがに納得がいかず、最初にこの先生を紹介いただいた地元の先生に相談に行きました。

 こちらの先生は地元の診療医で、私の事も覚えていてくれて、「リクルート出身でしたよね」とか「会社はその後順調ですか?」など、家族の事なども聞いて理解してくれようとします。その上で、いろんな選択肢を提示してくれて、一緒に考えてくれます。私の中では「寄り添い先生」的な感じですね。そういった経緯もあり、今回私は担当の病院と先生を変える事にしました。

 一方、自分でもChatGPTを使って私の病気の医療情報を調べ、自分の今後にどんな検査や治療の可能性があるのかを考えました。ChatGPTのディープリサーチ機能を使うと、最新の海外論文も含め、多数の選択肢やそのメリット・デメリットを知ることができます。AIの普及により、世界中から瞬時にその問題に関するあらゆる情報を手にする事が出来る様になっています。でも結局は自分がこの後どう生きたいか、自分の価値感で選択するしかない訳で、どこにも正解はないし、何を選択しても100%という事はありません。今後は寄り添い先生と一緒に、検査の進め方も含めて検討していきます。

 AI普及の中で、改めて自己理解の重要性を感じています。自分がどう生きたいのか、何を大切にしたいのかが解らないと、AIにちゃんと質問(プロンプト)することも出来ないし、得られた膨大な情報と選択肢の中から自分なりの答えを導き出せないからです。

 1989年のエムエム創業時は、まだ世の中にはインターネットが普及していませんでした。そういう意味では、私たちは創業後インターネットの普及の荒波と変化の中で事業を行ってきました。今では当たり前となったインターネットもすぐに普及したわけではなく、そのプロセスにはいろいろな出来事がありました。

 AIは業務を置き換える便利なツールという側面もありますが、本質的には知的創造のインフラとして、今後10数年くらいかけて変化を続けながら普及していくと思います。その過程でビジネス的にも個人の生活においても様々な変化が起きていきます。これは脅威でもあり機会でもあると思います。そんな中、自己理解、自社理解、顧客理解というむしろ内向きの理解力が、より一層重要になっていくと考えています。

 サービス業では、顧客理解力や寄り添う力とAIを掛け合わせることで、新しく高い付加価値を創り出せると思います。

 エムエムは、もともと「プロダクトを営業力で売っていく会社」ではなく、「個別のお客様の理解力と、お客様に寄り添いながら一緒に課題を解決していく事」を強みとする会社だと認識しています。そういった意味では、今後その力をさらに高め、AIを使いこなすスキルを身につけていくことで、変化していく中でも生き抜いていけると思いますし、そういった人材がさらに育っていくような機会と環境を作っていきたいと考えています。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

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