営業マネージャーから経営者へ
~本質を理解して自分の経験を転用する~
⇒第103回「Win-Winを実現するスキル
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30数年前、働いていたリクルートを辞めて起業した時、私には営業マネージャーとしての経験しかありませんでした。当然経営者に必要な専門知識はありませんでしたし、金融や法務など経営に必要な知見を持つ人との接点も知り合いもいませんでした。売上を上げる事が出来ればなんとかなるだろうと思っていました。
知り合いの紹介で税理士さんと最初に会った時も食事に行ったのですが、その税理士さんが当たり前の様な感じで私に支払いをさせる感じだったので、そういう感じなんだなと認識したのを覚えています。税理士さん以外でも今まであまり接した事がない分野の人たちと最初のうちはどういうスタンスで接してよいのか解らず困りました。
知り合いの社長の紹介で地元の信用金庫さんと取引がはじまり、担当の方に奨められて、銀行の人の提案は聞いた方がよいのかなと思い、売り上げもまだないのに、会社として定期積立預金を始めました。案内されるままに、結構な金額を会社として毎月積み立てていました。定期積立を払うために、資金繰りが苦しくなり役員報酬を減額するような事もありました。今考えるとちょっとおかしい感じがしますが、キャッシュフロー経営と言う感覚を身に着ける為にはよかったかと思います。
金融機関と会社ってどっちが偉いの?みたいなところから感覚がつかめず、テレビで中小企業の社長が銀行の人に頭を下げているシーンがありますが、よく考えたらお客様は会社の方ですよね。支店長が会いたいと言っているので銀行に来てくださいと言われて、当時は行っていましたが、法人営業をやっていた身としては何か違和感がありました。慣れて来て銀行の人ともご飯食べに行くようになって、彼らがどんな業績を重要にしているのか、何で評価されて、どんな思惑で動いているのかが解ると、自然にフラットな対応ができるようになりました。よく考えると自分の営業経験における、お客様を理解するスキルを使えばよい事で、そこが腹落ちしてからは他ジャンルの方と対応するようになってもあまり困らなくなりましたね。自分が一生懸命やってきた経験の一部が今後にも活かせるというイメージが湧いた時に、経営者として少し気持ちが楽になったのを覚えています。接する方がどういった状況にあって、周りにはどんな人がいて、その方はどういう感じで評価されているのか。また過去にはどんな経緯があって、未来はどこに向かおうとしているのか。法人営業として顧客理解を深める時のフレームと同じなんだと気づきました。
その後会社が大きくなるにつれて、ベンチャーキャピタルや証券会社、監査法人、弁護士や社労士など多方面の人たちとのコミュニケーションもたくさん経験して行きました。社長をやっていると、ナレッジを武器にして商売する人とたくさん接する事になります。社長は最終責任者なので、専門家の人が言っている事を鵜呑みにするのではなく、その方がどういう状況にある人でどういう思惑で話しているかも含めて判断する事が重要ですね。会社を経営していく上で専門性が必要な様々な課題に直面した時は、プライドを捨てて聞ける仲間を創る事が大切ですね。出来れば専門家の方でなく、その道のプロではないけど、経営者として実際の経験として学んでこられた方がいるとよいです。その方が自分が解らなかった時の事も前提にして接してくれるので、学びやすいと思います。私自身もそういった意味では何人かの仲間の経営者の方に学ばせていただいて来ましたし、今もそうしています。今はネットもAIもありますし、日々の疑問や課題を解決する情報をスピーディーに学べるので助かりますね。
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■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。