クオリティの高い引継ぎ! ~ミッション、網羅性、落とし穴~
⇒第71回「コントロール出来る事に集中し、コントロール出来ない事は受け入れる ~経営者としての心構え~」はこちらから
引継ぎを、引継ぎを行う方と受けとる方に分けてちょっとポイントを整理してみました。
まずは前提の概念としてですが、業務を引継ぐのかミッションを引継ぐのかと言う事です。仕事をオペレーション的に考えている人はどうしても「やり方」を伝えるみたいな発想になりがちですね。完全にマニュアル化されたオペレーションワークの場合は別ですが、(その場合は、オペレーションマニュアルがあるので引継ぎの必要がそんなに発生しない)、ナレッジワークやエグゼクティブワークの場合は、その業務をやる人の意志やスキルがあってはじめてパフォーマンスが発揮されます。
そういう意味では引継ぐべきは、オペレーションではなくて「ミッション」ですね。その仕事はなぜ必要なのか?その背景は?真の目的は何なのか?どういう状態になればゴールなのか?それが達成できないと、どんな人にどんな影響があるのか?などを正しく伝える事が重要です。また、引継ぐべきテーマの網羅性も重要です。何故なら、引継ぐべきテーマに漏れがないかどうかは、受け手側から見極める事が難しいからです。引継ぐべきテーマをリスト化して、漏れがないようにするのは渡す側の責任になりますね。
そして、「落とし穴」。これはどんな業務にもあるかと思います。経験したからこそ解る、起こりがちな間違いとか、このお客様にはこれをやってしまったら一巻の終わりみたいな事ですね。引継ぎを行う側は、「ミッション」と「網羅性」を満たした引継ぎテーマ、そして、「落とし穴」。この3つにおいて責任をもって伝えるべき必要があります。テーマの中の仕事の進め方に関しては、同程度の経験がある人以上が引継ぎ相手ならば、それほど重要ではないかと。むしろやり方は、受け取るその人に任せた方が、新しい視点での工夫やイノベーションは起こりやすくなります。そして受け取る方は、網羅性のあるテーマをもらった上で必要な情報は自分から取りに行かなければなりません。実際に仕事がスタートしたら、自分がサービスを提供する人やお客様に「引継いでいないので、解りません!」とは言えないからです。自分の責任として、そこから先はやりきると言う覚悟と主体性が重要で、自分から情報を取ったり確認したりするのが責任を果たすと言う事になります。
またこの引継ぎを見守る上司は、少なくとも引継ぎがちゃんと終了して、受け取った方が主体性と責任を持って仕事を進められるようになるまではマネージメント責任が発生すると思います。そうでないと組織変更や人事異動における責任を上司として果たした事にならない。組織変更や人事異動による業務の引継ぎは、うまくやると新しい発想や機会でイノベーションが起こり生産性や顧客満足を上げるチャンスにもなりますが、マイナスを起こす事もあります。それぞれが良い準備をして機会に変えて行きたいですね!
■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。