デジタルセールスの創る未来その(2)
~ITツールの活用による、俗人的な営業からの脱皮。 営業キャリアの価値の変化~
⇒第41回「デジタルセールスの作る未来その(1) ~自由な働き方による働き手の選択肢・機会の向上~」はこちらから
そもそもデジタルセールスの概念ではマーケティングの導入が前提になるので、全く商品サービスに関心のないお客様に営業活動をする事はありません。過去に接触があって、メルアドが解っている人たちに送るメルマガへの反応であったり、自社のサービスサイトなどに訪問してきた、もしくは問い合わせを頂いたお客様を対象に非対面でオンラインの営業活動をする事になります。
このデジタルなコミュニケーションの中にITツールを多数活用する場面があります。例えばある営業情報系のツールを使えば、問い合わせのあったお客様の社名を入力する事で、その業界の特性や競合状況、現状抱えているだろう課題などが瞬時に表示されます。
これは普通ならその業界に精通したベテラン営業マンでないと想定できない情報です。もちろんその情報から仮説を深めるスキルやセンスは必要になりますが、弊社のインサイドセールスでは、新卒1年目の人材がそういったツールを活用してお客様とコミュニケーションをとり、「うちの業界の事解っているね!」といった評価をいただいています。
またマーケティングオートメーションや類似する各種ツールを使えば、サイトを見に来たお客様や、問い合わせの後にお送りした例えばPDFの営業資料などの、どこの部分をどのくらい時間をかけて見ているかが解ります。そういったお客様の行動履歴から、どのあたりに課題を抱えているのか、何に関心を示しているのかが類推できます。これも今までならベテラン営業マンの経験とスキルによってお客様からのヒアリングで明らかにするものでした。
また通話を記録するAIツールを使うと、自分とお客様とのコミュニケーションが可視化されます。会話内容が自動でテキスト化されますし、お互いの間合いや沈黙の回数なども解り、自分のトークやヒアリングスキルなどを振り返り、スキル向上に役立てる事ができます。
またメルマガの配信や、今までならエンジニアがいないと作れなかったサービスサイトなどを簡単につくれるシステムなど、様々なITツールがデジタルセールスには活用されています。今後もこういったテクノロジーの開発はさらに進んでいくでしょう。
こういった様々なITツールの出現とその活用により、今までなら何年も経験しないと出来なかった営業活動が比較的浅いキャリアの人材でも可能になります。営業キャリアの在り方そのものが見直されていくと思われます。
注釈)デジタルセールス職とは?
一人の営業マンが、顧客の発掘から、受注、顧客フォローをリアルな訪問活動で行う従来の日本型営業ではなく、マーケティング戦略に基づき、見込み客の発掘、商談の育成、受注業務、顧客フォローの4つのプロセスに分け、それぞれの役割をマーケティング、インサイドセールス、オンラインセールスもしくはフィールドセールス、カスタマーサクセスの4つの職種人材が、デジタル技術を活用しながら主に非対面で行うそれぞれの職種。アメリカの企業や、日本でも先進的なSaaS系IT企業が導入している専門性の高い次世代営業職。
■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。