エグゼクティブワーカー(知的創造ワーカー)の働き方
~私にとっての労働と『はたらく』の違い~
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「世に生を得るは、事を成すにあり」
10代の頃に、「はたらく」という事に対して憧れをもって好きだった言葉ですね。石川啄木と坂本龍馬。
自分にとっての初めての「はたらく」は、小学生の頃の新聞配達です。1時間近く新聞配って1回500円だったと思います。小学生にとっては結構な金額です。配達する新聞の枚数は毎日一緒で金額は一緒なので、はやく終わった方が得だと思い、全力で走って配ってました。当時そんな言葉は知りませんでしたが、その方が生産性が高いと思ったのです。
高校からのバイトは、地元横浜の中華街の皿洗いとか、喫茶店とかスナックのバーテンダーとか。時給アルバイトは、その時間にいる事が働く事で、暇だとはやく時間たたないかなみたいに思ってました。スナックでバイトしている時に、軽食も出していたので包丁やフライパンの使い方を覚えて、ちょっと料理が楽しくなっていました。店長からまかない担当を任されると、それが楽しかったです。1000円くらいお金もらって、店の残り物と合わせて6人分の晩御飯作るのですが、限られた予算と時間の中でみんなが満足するものを作るというのに結構全力をつくしてました。みんなに「美味い!」と言われると時給とか関係なく、テンション上がりましたね。
高校卒業して、歯科技工士の見習いで、技工所に就職しました。全寮制の会社で、朝から晩まで、インレーとかブリッジの研磨をやってました。高校時代までの自分はコミュニケーションがあまり得意ではなく、技術系の仕事を選んだのですが、これが正直向いてなくて、毎日言われた通りに、出てくる金属のかたまりを研磨していくのですが、ある程度覚えるとそんなに工夫する余地もなく、ともかくミスを犯さないようにモクモクとやる。まあ製造業の労働者(オペレーションワーク)ですね。半年くらいでしたが、労働時間長かったし残業手当も出たし、寮生活であんまりお金使わなかったので、結果的に貯金できて嬉しかったです。
でも冒頭に書いたように「はたらく」に関しての憧れみたいなのがあって、なんかこれでよいのかなと。今思えば若かっただけですが、結局半年で辞めてしまいました。その後再度水商売を経て、完全歩合制の英会話教材の営業の仕事につきます。以前も書きましたが、技術がだめなら営業みたいな感じで選んだ仕事です。
はじめてついた営業の仕事で、最初にやったのは個人宅へのアポ取りです。これは、ある意味オペレーションワークなのですが、これをやってお金がもらえる訳ではありません。それでとったアポイントに行って受注(成果)して初めて歩合給がもらえる訳です。報酬はあくまでも成果に対してで、アポ取りはそのプロセスにすぎません。BtoCなので、夜や休日のゴールデンタイムは、電話の数より営業マンの数の方が多くて電話の取り合いになります。
これって労働なのかな?という感じもあり、ちゃんと理解できていなかった気がしますが、自分にはフィット感がありました。アポ取りは金属の研磨に比べると自分にとっては、毎回相手の反応が直接確認出来て、いくらでも工夫の余地がありました。日々相手の反応があって自分の工夫を活かせること、失敗しないようにじゃなくてチャレンジする事が許される環境であること。自分にとって力を発揮しやすい環境がなんか見えてきましたね。月収100万以上稼げた時もあったし、スランプになってぜんぜん稼げなく、サラ金通いしたこともあります。でも自分にとっての働くという概念を構築してくれたという意味においては、技工所より学べたような気がします。
その後建材商社、リクルートで営業マンの仕事を続けて、今の会社を起業する訳ですが。営業の仕事を始めてからは、時間で働いている労働という感じはありませんね。もちろん世の中にはいろんな仕事があって、その時間に仕事している事自体が価値の場合もあると思います。私がはじめにやった製造業の生産工程とかは、まさしくその時間に価値を創造している訳ですし。サービス業でお客様とずっと接している、見られているような仕事は、その時間自体が価値ですし、その間はずっと緊張感もある。そういう仕事を長時間労働すると大変疲れると思いますし、体を壊す事もあると思います。そういう仕事は時間管理が大切だと思います。その中で高いパフォーマンスを出す人たちもたくさんいます。
一方、知的創造的な仕事、これを私の好きな経営学者のドラッカーさんは知的創造労働者(エグゼクティブワーカー)と呼んでいます。例えば営業の仕事やプランナーとかクリエイティブとか開発エンジニアとか、もちろんマネジメントも。営業の仕事もただ商品の説明をしている人はオペレーションワーカーだと思います。マニュアルがあってアポ取りの実行だけやっている人はそうですね。でもちゃんと戦略考えて、セールスシナリオを考えて、それを優先順位つけて実行して、最終的な営業成果を出していく。これは間違いなく知的労働です。こういった人達の仕事時間は最終的な成果のための準備であったりプロセスである事が多いと思います。ある意味やろうと思えば無限にやれる事はあります。だからこそ時間ではなく、一部の初心者のアシスタント的な人は別にして、成果を上げ、それに対して報酬をもらっているというプライドが必要だと思います。
今自分自身が経営者として仕事をしている時間を考えると、
1.インプットの時間 読書、社長等仲間や社員と飲んでる時、ネットで調べもの
2.発想、創造の時間 通勤中、ウオーキング中、温泉の中、寝ている夢の中
3.考えを纏める時間 いつものカフェ。たまに自宅のデスク
4.一般的な仕事時間 会社やオンラインでの会議、面談。PCでメールとか資料作成
1~4まで、全部労働とするとすごい時間になってしまいますね。
自分で労働時間として考えているのは4だけです。1~3は自分で選んで選択しているだけだからです。自分が成果を出したいから、またはそれ自体が楽しいから。
日本の労務管理の法律は基本製造業がモデルで出来ています。今後少しずつ法制もホワイトカラーや知的創造的ワーカー向けに改革されていくと思いますが、大事な事は自分自身の力をつけるために、また長期的な視点での経済的・精神的な幸せのために自分なりの働き方の価値観を創造することですね。
■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。