この記事では無形商材を商材とする企業はどのようなものがあるか、また無形商材を扱う企業で働く営業職にはどんなスキルや心構えが求められるかについて詳しく解説しています。有形商材と比較しながら確認していきましょう。ぜひ最後までご覧ください。
無形商材と有形商材
まずは無形商材と有形商材の2種類の商材の違いについて確認していきましょう。形がある商材とは何なのか、形がない商材とはどういったものなのかを解説します。無形商材とは例えば人材や広告、システム、コンサルティングなどの情報、インターネットサービス、保険などの金融サービスが該当します。手に持ったり指を指したりして「これ」と言えないものが無形商材です。一方で有形商材とは日用品や衣服、自動車、食料品、家具家電、不動産などのことを言います。
無形商材営業に求められるのはソリューション営業
無形商材の営業職では業種を問わず、顧客に対して目に見えないサービスやシステムを売ることになります。そのため、商品を実際に手にして相手に商品説明や営業トークをすることができません。
無形商材の営業マンとして求められるのは、相手の潜在ニーズをしっかりと把握する力です。相手が気づいていないニーズを深掘りし、ニーズを認識させた上で商品を売り込むスタイルが重要になる無形商材の営業方法はソリューション営業と言われます。
ソリューション営業とは、顧客との対話を通して顧客が抱えているニーズを明確にし、その解決策を提示する営業方式です。メディア・人材・ITといった無形商材は、相手のニーズに沿ったものが提供することになります。既製品をあてがうのではなく、基本的には相手に合わせたものになるので、無形商材の営業スタイルはソリューション営業と呼ばれることが多いです。
つまり、無形商材を扱う企業にとっては、いかに相手に寄り添ったものが提供できるか、相手が気づいていないような潜在的なニーズまでもくみ取って解決策が提示できるかが営業のポイントになるということです。無形商材の営業職であれば、相手の悩みをいかに解決するかといった姿勢が築けるかどうかが、営業を成功させるコツになります。
無形商材の営業でヒアリング力を身につけよう
無形商材の営業では、営業トークの能力だけでなく、相手のニーズを引き出す力や、ヒアリング力が養われます。商品の魅力を一方的にアピールするのではなく、相手に必要性を気づかせた上で「ぴったりな商品がありますよ」といった流れを築くのが無形商材営業の理想です。
ヒアリング力は無形商材営業で相手のニーズを引き出すために欠かせない力です。ヒアリング力は単に営業シーンだけで役に立つものではなく、社内で同僚や部下とコミュニケーションを図る際にも非常に重要です。
相手の話を遮って話をする人は、相手に「自分の話ばかりしてる」「こちらの話を聞いてくれない」といった印象を与えてしまいます。会社の外で勤務する時間の長い営業職では、社内でのコミュニケーションは活発には取りづらいでしょう。
そのようなときに「相手が何を言おうとしているのか」をきちんと聞き、それに対して正確な返答をすることができなければ、結果としてチームや部署との関係性は悪化し、営業成績にも響いてしまいます。
無形商材営業に向いているのは気持ちの切り替えとチャレンジが出来る人
営業職は、有形商材無形商材を問わず、同様の素質が求められます。どんなに優秀な営業職であっても、すべての商談を成功させることはできません。
それが経験の浅い場合なら成功率はさらに下がります。経験や勘も求められる営業職においては、駆け出しのころが一番きついと言ってもよいでしょう。
ときには訪問先でつらい断られ方をしてしまうこともあるのが営業職です。そのようなときに気持ちを引きずりすぎず、切り替えて次の商談に臨めるかどうかが営業職には必須の性質です。
営業職にはノルマという形ではなくても、必ず毎月の売上目標があります。先月の営業成績が良くても今月も上手くいくとは限らないのが営業の世界です。毎月の目標について重荷に感じるのではなく、むしろ楽しくチャレンジできるといった性格の方が営業職に向いています。
また、「売上を取ってくる」という成果を上げるためには、単に営業スキルだけではなく事細かな配慮や他部署との調整も必要になります。そのようなやり取りを進んで行えるかどうかも営業職として結果を出すポイントになるでしょう。
無形商材の営業職の仕事内容
無形商材であればどのような業界・業種であっても仕事内容や営業手法が同じというわけではもちろんありません。法人営業か個人営業かによっても異なってきます。法人に対して営業をかけるのが法人営業、個人に対して営業をかけるのが個人営業です。「法人」とはビジネスの世界では企業や会社を指します。法人営業とは法人、つまり企業に対して営業をかけるビジネススタイルのことです。
一方で私たちが普段買い物をするスーパーなどの小売店、食事をする飲食店、携帯電話ショップなどは消費者(=個人)向けに事業を営んでいますので個人営業となります。
法人営業の企業と個人営業の企業ではターゲットとする層が異なります。法人営業の企業のことをBtoB企業、個人営業の企業のことをBtoC企業といいます。BtoBとは「Business to Business」の略で、BtoCは「Business to Consumer」の略です。BtoB、BtoCはB2BやB2Cと表記することもあります。
広告・メディア業界の営業職
広告・メディア業界の営業職は法人営業がメインです。一般消費者であるわたしたちがTVCMや電車の中吊り広告をよく見るので、広告・メディア業界はBtoC企業ではないかと思うかもしれませんが、そうではありません。広告・メディア業界とは、どこかの企業に対して「広告を出しませんか?」という営業をする立場、実際に広告を出す企業はBtoCがメインですが企業ですが、広告・メディア業界は法人営業となります。
広告は無形商材です。商品やサービスの宣伝をしたい企業に対し、さまざまな媒体を使って広告の企画やスケジュール管理といったサポートを行います。広告といえばTVCMや新聞、雑誌が思い浮かぶ方も多いでしょうが、近年はインターネット広告が盛んです。そのためITに関する知識も現場では重要になる業界です。
IT業界の営業職
IT業界が取り扱う商材は、ITシステムやツール、マーケティングやWebサイトの運営などの無形商材です。IT業界のほとんどは法人営業です。IT業界が扱う商材は、基本的には顧客向けにカスタマイズして納品されます。そのため、営業職は売る力だけでなく相手の課題を明らかにするためのヒアリング力も強く求められます。相手の課題を解決するための提案を行うため、いわゆるソリューション営業と呼ばれる営業方式であることが多いです。
基本的には営業の末に売り切るのでなくシステム導入後にはアフターフォローやメンテナンスも行います。営業職とはいえ、自社のシステムエンジニアやWebデザイナーなどとも積極的にコミュニケーションを取りながら働くので、専門的でなくても広い範囲での知識が必要になります。
人材業界の営業職
人材業界は法人営業がメインです。たとえば転職エージェントにおいて求職者にカウンセリングやアドバイスをするキャリアドバイザーは、一般の人を相手に仕事をしていますが転職エージェントの利用料はかかりません。転職エージェントは自社が紹介した人材の入社が決まれば報酬が入る仕組みですので、お金のやりとりは法人と行っています。そのため個人営業のような側面はありますが、法人営業と考えてよいでしょう。
人材業界の商材は、求人広告や新卒採用支援、転職エージェントなどの中途採用支援、人材派遣などです。そのため無形商材を扱う法人営業だと言えます。超高齢化社会の日本ではすでに人口の減少が始まっていて、多くの企業は人材の確保が課題となっています。人材に関する課題解決をサポートする人材業界の営業活動は今後も拡大していくでしょう。
人材業界は、新規開拓がメインとなります。飛び込み営業やテレアポでの営業を行うことが多いため、打たれ強さが求められます。かなり厳しい業界でありますが、採用の課題を抱えている企業と、仕事を求める求職者の両方の役に立てることは大きなやりがいにつながるでしょう。
コンサルタントの仕事内容
コンサルタントは営業職とは別の職種と考えることが多いですが、無形商材を扱うビジネスマンという点では共通しています。コンサルタントとはコンサルティングを行う人のことを指します。コンサルティングを直接意味する日本語はないのですが、「相談に乗って課題解決のためのアドバイスや提案、支援を行うこと」をコンサルティングと言います。
コンサルティングを業務として行う企業は、コンサルティング企業やコンサルティング会社ではなく、「コンサルティングファーム」と呼ぶのが一般的です。外資系の企業も多いです。個人、フリーランスでコンサルタントとして活動している人もいます。コンサルタントという職種は、非常に多くの業種に存在しています。一般的に知られる経営コンサルタント以外にも、投資コンサルタントやIT、環境、人事、建設といった分野にもコンサルタントがいます。
無形商材の営業は、単純にモノを売る能力だけでなく、顧客にとって最適な提案を行うための課題解決能力などが強く求められます。商品として存在するものではなく、顧客に合わせて組み合わせたりカスタマイズしたりして、もっともニーズに沿ったものを提案するのが無形商材の営業職の仕事です。難しい点も多いですが、大いにやりがいがある仕事だと言えるでしょう。営業職への転職・就職を考えるなら、無形商材の営業職をぜひ候補に入れてみてください。
無形商材の法人営業職は未経験から応募可能
もちろん企業によりますが、事務職や接客業、SEのような業務からでも無形商材の営業職への転職の道は開かれています。
営業職のほとんどは営業成績がそのまま収入や昇進に直結します。このことを「やりがいがある」と感じられるのなら、無形商材の営業職にチャレンジしてみる価値はあるでしょう。転職にあたっては転職エージェントを活用し、自身のこれまでのスキルや経験がどのように営業職に活かせるかに加え、そもそも無形商材の営業職に向いているかどうかといったところから相談してみることをおすすめします。
ひと口に営業職といっても業種や業界が違えば営業方法が大きく異なることもありますし、営業であっても営業以外の業務まで担当することもあります。イメージだけで転職活動を行うのではなく、リアルな声を転職エージェントから聞くのが有効です。
面接のタイプに合わせた対策を取ろう
面接には志望者が一定の水準を満たしているかどうかを判断するための「フィルターとしての面接」と、採用するかどうかを判断する「意思決定のための面接」の2パターンがあります。
フィルターとして行われる面接のポイントは明確です。志望動機や自己PRなど、面接でよく聞かれる質問を事前に調べておき、自分なりに何を話すか、ということを決めておけばよいでしょう。
一方で意思決定を行う面接では、質問されることが非定型であることが多く、なかなかそれを想定して準備することができません。
ただ、役員や現場の責任者といった組織でも上層部に位置する人が面接を担当するため、企業が目指す理念や将来的なビジョン、従業員に求める価値などについてしっかりと調べておくことをおすすめします。
企業のホームページだけではなく担当する役員や責任者名で検索して、インタビュー記事をしっかりと読み、担当する面接官の理解に努めることも役に立つでしょう。
無形商材の法人営業職への転職のカギは自己分析
無形商材の法人営業職は未経験からでも応募可能な企業が多く、比較的開かれている業種と言えるでしょう。しかし、未経験でも応募可能なことと転職のしやすさは別の問題です。転職である限り、企業は即戦力を求めています。それは未経験で応募可能であっても同様です。自分が即戦力であるとアピールするためには、自分はどのような点で市場価値があり、営業職として志望企業に貢献できるかを論理的に伝えられなくてはなりません。
つまり、これまでの経験や職歴、スキルなどをどのように無形商材の営業職に活かせるかについて、自身を振り返って分析する必要があるのです。自分のことは自分が一番よく分かっているつもりであっても、いざ言葉や文章にしようとすると面接の場において即席でできるものではありません。
きちんと時間を取って自身を振り返る自己分析を必ず行うことが、転職にあたってとても重要なポイントになります。
志望動機は独自のものに
営業職に限らず、志望動機の書き方には一定のセオリーがあります。志望動機とはその会社を志望する動機(=きっかけ)は何かということです。つまりどんなことがきっかけでその会社に入りたいと思ったのか、会社のどんな点に惹かれて応募したのかついて述べるのが志望動機です。
もう少し詳しく言うならば「その会社でないといけない理由」となります。たくさんの同業他社があるなかで、その会社を選んだ理由を述べるのが志望動機です。言い換えれば、同業他社を志望する際にも言えるようなことは志望動機としては弱いということになります。面接官は業界に入りたい人ではなく、自社に入りたい人を求めているのですから。
業界や業種に惹かれた理由だけでは不十分となるので、必ずその会社に惹かれた理由までも盛り込むようにしましょう。業界に興味を持った理由、業種に惹かれた理由、数ある企業のなかでもその会社を選んだ理由というように、大きなカテゴリーから小さなカテゴリーについて考えていくことで、独自性のある志望動機となるでしょう。