• 2020/10/08
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味の素のデジタルトランスフォーメーション(DX)の進め方は、あらゆる企業のモデルケースになる

  • マーキャリ 編集部
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近年話題となっているデジタルトランスフォーメーション。しかしその重要性は分かっていても何から手をつけてよいか分からないという企業も多いです。特にITやデジタル系の会社でなければその傾向は顕著でしょう。  この記事では、デジタルトランスフォーメーション推進の一例として食品業界を代表する企業である味の素グループをピックアップして紹介しています。ぜひ参考にしてください。

デジタルトランスフォーメーションとは

味の素グループの具体例に入る前に、まずはデジタルトランスフォーメーションについて確認していきます。 デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。DTではなくDXと略すのは、英語圏では「Trans」を「X」と略すことに由来しています。


デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経済産業省では以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは製品をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。


よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものです。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です、デジタル化はあくまで1つのステップにすぎません。この点については誤解がないようにしておきましょう。たとえばオンライン商談ツールやWeb会議を導入するといったことはデジタルトランスフォーメーションではありません。  

デジタルトランスフォーメーションが進まないとどうなる?

経済産業省はデジタルトランスフォーメーションの推進についての具体的方策を盛り込んだガイドラインを発表するほど、デジタルトランスフォーメーションを積極的にすすめようとしています。これは、デジタルトランスフォーメーションが進まないことにより、日本企業全体が大きな損失をこうむることが予想されているからです。  

2025年がタイムリミット「2025年の崖」

多くの経営者は、将来の成長、競争力強化のために、新たなデジタル技術を活用して新たなビジネスモデルを創出・柔軟に改変するデジタルトランスフォーメーションの必要性について理解しています。しかし、デジタルトランスフォーメーションが進まないのには社内に大きな課題が潜んでいるからです。課題とは「既存システムの複雑化・ブラックボックス化」と「現場サイドの抵抗」です。


企業では、業務を行うにあたってすでに何らかのITシステムが導入されています。長年使われているものは、システムが老朽化するだけでなく複雑化することで、どんなものなのか実態が見えないブラックボックス化しています。新たなシステムを1から導入しようとしても、仕事のやり方そのものを大きく変更する必要があるため、現場からの抵抗が大きいことも、ブラックボックス化がすすむ要因となっています。しかし、これらの課題が解消されずデジタルトランスフォーメーションが進まなければ、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるといわれています。これを「2025年の崖」と呼びます。


経済損失が起きる大きな理由には、市場での競争に敗れてしまうことに加えて人材不足が挙げられます。 属人化してしまった既存システムの運用者は、基本的には長年会社に勤務している方が担当しています。そのため運用者が退職、高年齢化し、既存のシステムが使えなくなる日が来ます。しかしそれを引き延ばせば引き延ばすほど、手遅れになります。いざ、新しいシステムを導入しようとしても、人材の確保や育成ができていないため最先端の知識を持った人材はいません。2015年時点ではIT分野における人材は15万人不足していましたが、2025年には約43万人にまで膨れ上がるとされています。


デジタルトランスフォーメーションを進めることができなければ、企業としての競争力を失ってしまう。デジタルトランスフォーメーションは、何もIT系企業だけの話ではなく業界も業種も関係なく、あらゆる企業で推し進めていくべきものだと言えるでしょう。

味の素のデジタルトランスフォーメーション

味の素グループでは、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる基盤は自社の革新にあると捉え、デジタルトランスフォーメーションを、デジタル技術を活用した企業変革と位置付けています。2019年にはCDO(Chief Digital Officer)を創設し、副社長がCDOに就任し全社最重要任務として自社変革に取り組んでいます。デジタルトランスフォーメーションの推進のために、副社長をリーダーとして抜擢するというところに味の素の本気度が分かります。


デジタルトランスフォーメーションが、デジタルを使って改革を起こすことならば、会社の中の一部署で達成できるものでは到底ありません。以前「AIを使って何かやれ」というような経営陣から部署に対して丸投げのような指示出しが話題になりましたが、デジタルトランスフォーメーションは、全社的に取り組まなければ達成できません。全社的に取り組むためには、トップダウンで指示が出せる経営陣の強いリーダーシップが必要。味の素のこの人事は、デジタルトランスフォーメーションを推進していく上での体制づくりとしてはベストだと言えるのではないでしょうか。


味の素では、「食と健康の課題解決企業」になることを目標に掲げています。この目標を達成するためにデジタル技術を活用するというスタンスを確立しています。デジタルトランスフォーメーションの推進にあたっては、どうしても「デジタル」にばかり目が行ってしまいがちです。しかし新しいシステムやツールを導入することはあくまで手段に過ぎないはず。味の素の「目標達成のためのデジタル活用」というスタンスは、特にデジタル系でない事業を行っている企業はモデルケースになると言えるでしょう。 この他にも味の素は、IT分野における人材確保のため、ITリテラシーがあるビジネス系の社員を6年間で10倍に、情報分析のスペシャリストであるデータサイエンティストを3年間で2~3倍にするといった採用計画もスタートさせています。 

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