この記事ではCRMと呼ばれる顧客管理システムで、世界トップレベルのシェアを誇るSalesforce(セールスフォース)社について、SaaSやCRMについて詳しく解説しながらデジタルトランスフォーメーションとの関連性を紹介しています。 SaaSやCRMについて知識がなくても読み進められるように基礎的なところから解説していますので、ぜひ参考にしてください。
SaaSやCRMって何?
CRMは、SaaSに内包されるものですので、まずはSaaSから解説していきます。
SaaSは「Software as a Service」の頭文字をとったもので、「サース」や「サーズ」と読みます。直訳すれば「サービスとしてのソフトウェア」となり、クラウドで提供されるソフトウェアのことを指します。
クラウドとは、「クラウドコンピューティング」のことで、従来のようにパソコン上のアプリやデータではなく、インターネット経由でアプリケーションを使うことを指します。 自分のPCにCD-ROMなどに入ったソフトをインストールする必要がないので、PC自体の容量は関係がなくなるなどのメリットがあります。
SaaSはクラウドで提供されるソフトウェアで、サービスを提供する側(ベンダー)側でソフトウェアを稼働させて、ユーザーはネットワーク経由でソフトウェアを活用するものになります。
身近なSaaSの例で言えばGoogleが提供するGmailがあります。 これまでの携帯電話に届いていたE-mailは、携帯電話の中に保存されていました。そのため圏外であっても受信済・送信済のメールは確認できました。しかしGmailの場合は、インターネット環境がなければページに行くこともできませんよね。これはGmailというソフトウェアがSaaSだからです。基本的にPCやスマホは常にインターネットと接続されているので意識することはないでしょうが、Gmailがクラウド上にあるものだということの表れです。
SaaSの特徴
クラウド上で動作させるSaaSには以下のような特徴があります。
・インターネット環境があればどこからでもアクセスできる
PC自体にソフトをインストールするものであれば、当然PCでしかソフトの起動ができません。しかしSaaSの場合、ソフトウェアはアカウントごとに提供されているので、オフィスだけでなく出張先や自宅などからもアクセスが可能です。もちろんPCだけでなくスマートフォンやタブレットからもアクセスできます。SaaSは、テレワークなどの働き方にも貢献することが期待されています。
・複数の担当者がデータを共有し同時に編集・管理できる
SaaSでは、データの保存もクラウド上で行われています。そのため複数の人間で同時にデータファイルの共有ができますし、データの管理や編集も可能です。
・導入コストが安い
SaaSでは、すでにクラウド上にソフトウェアがあり、それをユーザーが利用します。そのため新たにソフトウェアを開発する必要がありません。ソフトウェアを自社用に開発する費用や時間が削減できます。結果としては自社で1から開発をするよりは、安価になります。社内のユーザー数に合わせてアカウントを増減させれば、無駄なコストがかからなくなります。パッケージ製品の場合は、前任者が使っていたPCを引き継がなければならないのが通常でしたが、SaaSならそのような手間もなくなります。
・安いランニングコストで、常に最新のソフトが使える
パッケージ製品の場合や自社でソフトウェアを開発する場合には、セキュリティ対策や最新バージョンへのアップデートはユーザー側が行う必要があります。しかしSaaSではサービスの提供側がバージョンアップを行うので、常に最新版を利用できるので、パッケージ製品よりも優れていると言えます。
CRMとは
CRMとは「Customer Relationship Management」の略称で、SaaSのサービスとして提供される顧客管理システムのことです。つまりはクラウド上で顧客管理が出来るシステムのことを指します。
CRMで顧客との関係を一元管理することで、全社員が情報にアクセスして効率的な営業ができます。
CRMを導入する主なメリット
CRMを導入するにあたって挙げられるメリットは大きく分けて4つあります。
・顧客の情報を一元管理して全社員で情報共有できる
顧客の情報は、これまで営業担当しか知らないというパターンが多くありました。ベテランの営業担当にはこれまで蓄積した自分だけの情報や事例があるものでしたが、CRMを導入すれば情報量の差がなくなります。たとえば新人の営業担当が先輩から担当を引き継ぐ場合などでも、必要な情報の漏れがなくなります。クラウド上で入力作業ができるので、職場に戻らなくてもたとえば商談が終わったタイミングなどですぐ情報共有ができるようになります。
・見込み客に対して効果的なマーケティング活動ができる
ひと口に見込み客といっても会社の規模やニーズは異なるものです。従来のマーケティングではそれぞれの企業に向けたアプローチではなく、どうしても画一的なものになりがちでした。CRMに情報を蓄積していくことで、見込み客が求める資料やコンテンツを使った効果的なアプローチや、成約につながらなかった事例の原因分析もしやすくなります。 CRMは営業活動を支援し、より効率的な営業を可能とする便利なツールと言えるでしょう。
顧客管理に役立つCRMの代表事例「Salesforce」
https://www.salesforce.com/jp/
企業が行う営業やマーケティング活動において世界No.1のシェアを誇るSaaSが「Salesforce」というCRMです。
「Salesforce」は、中小企業を中心に導入されているクラウド上で顧客管理や営業管理を行えるSaaS型のアプリケーションです。企業として必要な機能や利用状況に応じて料金を支払うサブスクリプション型のサービスです。
営業部門では、顧客情報や商談内容を管理することで受注率のアップにつなげるサポートができます。たとえば見込み客がWeb広告をクリックして、自社との成約に至るまでのプロセスを一覧で確認できます。
また問い合わせの管理も可能です。問い合わせの内容と顧客情報の確認が1つの画面でできるので問い合わせに迅速に対応できます。たとえばコールセンターの顧客対応の内容を効率的に一元管理できます。
顧客管理機能や営業支援機能はもちろん、社内コミュニケーション機能やメール一括送信機能などもあり充実しています。 営業支援ツールとしてだけでなくマーケティング的な機能も充実したCRMとして知られています。
CRMの導入とデジタルトランスフォーメーションの関係
デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)とは、デジタルの力を使って企業や業務、働き方、生活に変化や変革をもたらすことを言います。
誤解しやすいのですが、デジタルトランスフォーメーションは、最新のデジタルシステムやツールを導入するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」です。
ツールやシステムの導入は、あくまでデジタルトランスフォーメーション実現のための1つのステップにすぎません。これはSalesforce社のCRMの導入であっても同様です。
クラウド上でソフトウェアを稼働させるSaaSやCRMは、これまでのパッケージ製品と違って常に最新のバージョンが使用できます。そのためこれまでのITシステムのようにシステムのブラックボックス化や、時代遅れになる(=レガシー化)する可能性は低いでしょう。たしかに導入すれば、業務の効率化には大きく貢献しますが、それがゴールではありません。
デジタルトランスフォーメーションは、顧客にこれまで以上のよい体験をしてもらうことを目指すものです。つまり、デジタルトランスフォーメーションに終わりはないのです。デジタルトランスフォーメーションを実現するためには、自社が社会や顧客に提供できる価値は何なのか、それを提供するための理想の環境とはどういったものなのかを突き詰めて考えることが必須です。ツールを使って、どう顧客や社会に貢献するか。まずはそこから考えてみることが重要です。