• 2020/09/25
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システムでデジタルトランスフォーメーション(DX)をサポートする企業「SAP」

  • マーキャリ 編集部
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目次

近年話題になっているデジタルトランスフォーメーション。この記事ではデジタルトランスフォーメーションをシステムの面でサポートをする「SAP社」がどのような動きをしているのかについて解説しています。

SAPってどんな企業?

SAPとは、ERP製品を提供する企業です。SAPのようにIT業界でソフトウェアなどの製品やサービスの提供をする企業をベンダー企業と呼びます。 

ERPとは

ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、直訳すると「企業資源計画」となります。企業資源計画と言われても正直ピンとこないと思いますので、「会社のあらゆる部門の業務を1つですべてまかなうシステム」と考えてください。このシステムを作っているのがSAPです。


元々システムは、部門ごとに専門的なものを使用するのが一般的でした。たとえば経理や会計を行うシステム、売上や在庫管理、受注・発注を行う販売管理のシステムというように、各部門・業務に特化したシステムを使っていました。各部門に特化したシステムを導入することで、業務の効率化ができます。


部門ごとでは効率的に業務が回っていても、会社全体で見れば非効率な面があります。特に問題が起きるのが部門をまたいだデータの共有です。部門ごとにシステムが分かれていれば、たとえば販売管理のシステムを使って発注を行ったものの金額を経理・会計のシステムで確認することはできません。そのため、メールでデータを送付したり、印刷して直接渡したりといったことが起きます。受け取ったデータは経理部がシステムに手入力していく、独自のツールを新たに作って取り込むといったことが必要になります。


それぞれの部門でしか業務の効率化・最適化が行われていないので、部門をまたぐ際には非常に非効率でアナログな業務が発生してしまう問題を解決するために、会社全体で1つのシステムに統合しようとするのがERPです。ERPは直訳すれば「企業資源計画」となるので、正しくは「会社内でシステムを統合しようとする考え方」のことなのですが、全体の業務を統合するシステムのことをERPや、ERPシステム、ERP製品と呼ぶのが一般的になっています。


企業全体を統括するシステムを、それぞれの企業が独自に作るのは簡単ではありません。ましてやソフトウェア企業でなければ不可能と言ってもよいでしょう。そこにビジネスチャンスを見出したSAP社は、ERPシステムのパッケージを企業に対して販売することで成長を遂げてきました。


企業はSAP社のERP製品を導入することで財務や会計、在庫管理、販売管理などが同じシステムで管理でき、その内容がどの部署からも確認できるようになるのですから、企業としてはぜひ導入したいものであるわけです。


注意するべきはSAPは企業名なのですが、SAPの商品には「SAP ERP」「SAP S/4HANA」などと社名が入っています。そのためSAPのERP製品をSAPと呼ぶこともあります。


SAPのERPシステムは、インストールさえすれば利用できるわけではありません。ERPはあくまで大枠ですので、それぞれの企業に合わせた設定を行い、パッケージとして用意されている設定だけでまかなえない場合には、SAP独自のプログラミング言語を使って機能を追加していきます。

デジタルトランスフォーメーションについて

近年、話題になっているものではありますが、しっかりと理解できている人は意外なほど少ないです。ぜひしっかりと目を通してください。


デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。DTではなくDXと略すのは、英語圏では「Trans」を「X」と略すことに由来しています。


デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経済産業省では以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは製品をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。


日本では経済産業省から、企業がデジタルトランスフォーメーションを達成するためのガイドラインも発表されています。日本では諸外国に比べてデジタルトランスフォーメーションが遅れているとされています。


デジタルトランスフォーメーションに取り組む際の、よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものがあります。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です、デジタル化はあくまで1つのステップにすぎません。 この点については誤解がないようにしておきましょう。


たとえば書類をPDFにしたり、オンライン商談ツールやWeb会議を導入するといったことは、業務の一部をデジタル化したに過ぎずデジタルトランスフォーメーションではありません。  

デジタルトランスフォーメーションの推進が必要な理由

世界中で新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要となります。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争上の優位性を保つために避けては通れないものなのです。


特に日本においてはデジタルトランスフォーメーションの推進が世界的に遅れていると言われています。 しかし、デジタルトランスフォーメーションを推し進めるには2つの課題があります。


課題1:既存システムの複雑化・ブラックボックス化

ほとんどの企業ではすでに何らかのITシステムが導入されています。しかし、それらの多くは事業部門ごとに構築されて、全社横断的なデータ活用ができず、また過剰なカスタマイズがなされているなどにより、複雑化・ブラックボックス化しています。既存のITシステムは、数十年単位で同じものをカスタマイズしながら使っていることも珍しくありません。会社の中には「これはあの人にしか分からない」といったものが部署や業務を問わずあるものですが、それがシステムで起きているということです。


長年同じシステムを使い、システムのブラックボックス化がすすむことでデータを活用しきれないだけでなく、新たな技術を導入しても効果が出にくくなってしまいます。


課題2:現場サイドの抵抗

デジタルトランスフォーメーションへのステップとして、既存のシステムを刷新し新たなシステムを導入する際には現場サイドからの抵抗が生まれやすいです。システムが新しくなることでブラックボックス化だけでなく業務の効率化にもつながるのなら、よいところだけのような気がするのにどうして現場の抵抗があるのかと疑問に思うかもしれません。


これはひとことで言うと「仕事のやり方が変わるから」です。新しいシステムを導入してもそれがまた20年後にブラックボックス化していては意味がありません。つまりはシステムの刷新と同時に業務自体の見直しも求められることになるのです。人は変化を好まないものです。慣れてきたやり方で続けていきたいと考える人は少なからずいます。そこで現場の抵抗や反発が起こり、デジタルトランスフォーメーションが進まないのです。


たとえデジタルトランスフォーメーションへのステップとしてシステムを刷新することを経営者が望んでも、仕事のやり方が変わるのを嫌う現場の反対があり改革がすすまず、さらにブラックボックス化がすすむといった悪循環が生まれています。 ブラックボックス化が解消できない場合は、デジタルトランスフォーメーションが実現できないというだけにとどまらず、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるといわれています。これは「2025年の崖」と呼ばれています。


経産省は、システムのブラックボックス化による経済損失を危惧しているため、デジタルトランスフォーメーションを積極的に推進しようとしているのです。 すごくシンプルに言うならばデジタルの力を使って社会に変革を起こすのがデジタルトランスフォーメーションです。そしてデジタルトランスフォーメーションには、完成形はありません。技術は常に進化しているからです。つまりその時代ごとのデジタルトランスフォーメーションを起こし続けていくことが重要になります。  

SAPのERP製品の導入とデジタルトランスフォーメーションの関係

デジタルトランスフォーメーションへ至るまでには「デジタイゼーション(Digitization)」と「デジタライゼーション(Digitalization)」の2つのステップを経ることになります。どちらも業務工程をデジタルの力によって効率化していくものですが、デジタイゼーションはデジタルツールを導入することで特定業務のデジタル化やアナログ情報をデジタルにしてデータを蓄積できる環境を整えることを言います。デジタライゼーションは業務フロー(プロセス全体)をデジタル化していくことです。


それではSAPのERP製品を導入することは、デジタイゼーション・デジタライゼーション・デジタルトランスフォーメーションの3ステップのうち、どれになるでしょうか。SAPが提供しているのはあくまでシステムです。全社横断的なシステムなので、従来の部門最適のシステムを使っている企業からすれば大きな進化でしょう。しかし、SAPのERP製品を導入することは、あくまで企業が使うツールやシステムを新しくすることに過ぎません。つまりは、デジタライゼーションの1つとなるでしょう。 


SAPは、ERP製品で企業の業務効率化に貢献しています。これは、デジタルトランスフォーメーションにもつながるものです。 たしかにデジタルトランスフォーメーションを実現していく過程では、ブラックボックス化した既存システムの刷新が欠かせません。しかし、デジタルトランスフォーメーションのためにシステムを作っている企業に新しいシステムの作成を丸投げしてしまうことは大きな間違いです。これでは結局のところ、「新しいシステムを導入するだけ」となり、単なるデジタル化にとどまってしまいます。


実装すべき機能や満たすべき性能などについては、他企業に一任するのではなく自ら明確にしていくことが重要になります。自ら必要な機能や性能を判断していくことで、将来再びブラックボックス化することを防げます。      

デジタルトランスフォーメーションは完了しない

デジタルトランスフォーメーションを推進していくことは、企業が競争力を保つためにも成長を遂げていくためにも重要なことです。しかし、デジタルトランスフォーメーションが、デジタルの力で変革を起こしていくことであるならば、デジタルトランスフォーメーションには完成も完了もありません。そして、自社にとってどのようなデジタルトランスフォーメーションが必要なのかは、他社が決めることではありません。つまり、SAPのERP製品のような、企業に業務変革をもたらすシステムを導入することを目的・ゴールとしてはならないのです。


システムやツールはあくまで手段に過ぎません。自社がどのような価値を社会に提供するか、それをどのように提供するのが理想なのかをしっかりと捉え直すことなくデジタルトランスフォーメーションへは近づきません。Amazonを代表とした小売業ではサプライチェーンとよばれる商品の仕入れから供給までの流れにおいて大きなデジタルトランスフォーメーションが起きていますが、必ずしも他社の事例をそのまま取り入れることが自社にとってもよいこととは限りません。


自社の事業価値を見つめ直し、経営陣の強いリーダーシップをもってデジタルトランスフォーメーションを推進することで、はじめて近づくものなのではないでしょうか。


「AIでなんかやれ」といった言葉に代表されるように、経営陣が社員任せで達成できるものでは決してありません。デジタルトランスフォーメーションを起こすためには、全社的に動くことが必要です。

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