• 2020/09/25
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自社が目指すべきデジタルトランスフォーメーション(DX)は、Netflixをヒントにしよう

  • マーキャリ 編集部
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近年デジタルトランスフォーメーションという言葉を耳にすることが増えてきました。しかし、企業によって目指すべきデジタルトランスフォーメーションは異なり、具体的に何をすればよいかの共通の答えはありません。


この記事ではデジタルトランスフォーメーションの成功事例としても知られる「Netflix」を例に、これまでどのような改革をNetflixが起こして来たのかをわかりやすく解説しています。ぜひ自社のデジタルトランスフォーメーション推進のヒントにしてください。  

デジタルトランスフォーメーションとは

デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。DTではなくDXと略すのは、英語圏では「trans」を「X」と略すことに由来しています。


デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経済産業省では以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは製品をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。 日本では経済産業省から、企業がデジタルトランスフォーメーションを達成するためのガイドラインも発表されています。日本では諸外国に比べてデジタルトランスフォーメーションが遅れているとされています。


デジタルトランスフォーメーションに取り組む際の、よくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものがあります。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です、デジタル化はあくまで1つのステップにすぎません。この点については誤解がないようにしておきましょう。たとえばオンライン商談ツールやWeb会議を導入するといったことは、業務の一部をデジタル化したに過ぎずデジタルトランスフォーメーションではありません。  

デジタルトランスフォーメーションの推進が必要な理由

世界中で新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要となります。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争上の優位性を保つために避けては通れないものなのです。特に日本においてはデジタルトランスフォーメーションの推進が世界的に遅れていると言われています。


しかし、デジタルトランスフォーメーションを推し進めるには障壁があります。それは既存のシステムです。企業では、業務を行うにあたってすでに何らかのITシステムが導入されています。業種によっては数十年単位でシステムの変更が行われていないというケースも珍しくありません。企業は自社が運用しやすいようにシステムをカスタムし続けるのが通常ですので、システムが老朽化するだけでなく複雑化し、どんなものなのか実態が見えないブラックボックス化している現状があります。


たとえデジタルトランスフォーメーションへのステップとしてシステムを刷新することを経営者が望んでも、仕事のやり方が変わるのを嫌う現場の反対があり改革がすすまず、さらにブラックボックス化がすすむといった悪循環が生まれています。 ブラックボックス化が解消できない場合は、デジタルトランスフォーメーションが実現できないというだけにとどまらず、2025年以降、最大12兆円/年(現在の約3倍)の経済損失が生じる可能性があるといわれています。これは「2025年の崖」と呼ばれています。


経産省は、システムのブラックボックス化による経済損失を危惧しているため、デジタルトランスフォーメーションを積極的に推進しようとしているのです。 すごくシンプルに言うならばデジタルの力を使って社会に変革を起こすのがデジタルトランスフォーメーションです。そしてデジタルトランスフォーメーションには、完成形はありません。技術は常に進化しているからです。つまりその時代ごとのデジタルトランスフォーメーションを起こし続けていくことが重要になります。


ここからは、Netflixがこれまでどのようなデジタルトランスフォーメーションを起こしてきたのかを確認していきましょう。  

Netflixのデジタルトランスフォーメーション事例


出典:https://www.netflix.com/jp/

Netflixは、1997年に宅配型DVDレンタルの会社としてアメリカでスタートしています。もちろんこの段階ではインターネットを使っての動画配信などはありません。世間はまだまだレンタルといえばビデオが主流の時代です。人々はレンタルビデオ店に行き、新作や旧作のビデオをその場で借りて家で視聴するのが一般的でした。レンタルをするときやビデオの返却時に実際に店舗に足を運ぶことで「ついで借り」が起き、顧客単価を上げる戦略が浸透していたのです。 

無店舗型・DVD特化の運営

Netflixが行った最初の改革は「無店舗型運営・DVDに特化した在庫」です。正確にはこれはデジタルの力を使ったものとは言えないかもしれませんが、近年よく言われる「ディスラプター(破壊的想像)」としては好例です。


Netflixはユーザーが店舗に行かずともレンタルできるように、「郵送でのレンタル」から始めています。そして当時はまだ次世代のものとされていたDVDへの特化。大きくてかさばるビデオと異なり、DVDでは在庫コストも郵送コストも抑えられます。ビデオはテープですので劣化がありますが、DVDは画質の劣化が起きず長く使えるというメリットもあります。つまり古くなってきたからといって新しく在庫を仕入れる必要がないので、コストが抑えられるというビジネスモデルとなっていました。店舗がないので、もちろん人件費やテナント料も抑えられます。


ちなみにNetflixの在庫管理の考え方はAmazonとも共通しています。インターネット書店として始まったAmazonが書籍の販売からスタートしたのは、書籍の在庫管理がしやすく郵送も可能だったからと言われています。NetflixよりもAmazonの方が事業開始が早いので、NetflixがAmazonを参考にした可能性は高いでしょう。


無店舗型でしかもDVDに特化したサービスというのは、まだまだレンタルビデオ隆盛の時期にあったことから、他社からは脅威とみなされていませんでした。変革というのは一気に起きるわけではなく、徐々に起きるものなのでしょうね。  

サブスクリプション型への移行

レンタルビデオ店の収益というのは、実は延滞料金が多くを占めています。人気作や新作を早く回転させるための施策というのが延滞料金の徴収なわけですが、その比重が大きくなると延滞料金の旨味を捨てきれなくなります。ここにもNetFlixの勝機がありました。


Netflixは、延滞料金がかかる通常の単品レンタルに加えて、月額20ドルで6本同時に借りられるコースを創設。返却すれば同じ月内でも新たに6本借りられて、延滞料金も発生しないというものです。各ユーザーはサイトのアカウント上で「次に借りたいものリスト」を作っておけば、6本の返却と同時に自動的に郵送される仕組みになっています。いわば月額20ドルで借り放題なわけですが、飲食店の食べ放題のようにユーザー側としては「元が取れるかどうか」が気になるもの。次に借りたい予約リストがあることで、観たいものがない期間やNetflixを利用しない期間がない仕組みができたのです。


単品でのレンタルは、しばらく経ったあとになくなり完全にサブスクリプション型に集約されています。 このような定期的に課金が行われる月額課金制のようなビジネスモデルをサブスクリプションモデルと言います。Netflixはサブスクリプション型ビジネスの先がけと言えるでしょう。


ここ数年だけでもサブスクリプションのビジネスモデルとして「Amazon Prime」などの動画配信サービス、グラフィックソフトの「Photoshop」や「Illustrator」、Officeソフトの「Word」や「PowerPoint」「Excel」もサブスクリプション型のサービスです。「Word」や「PowerPoint」「Excel」は買い切りのものもありますが、「Photoshop」や「Illustrator」は現在では完全にサブスクリプション型が業績を伸ばしています。


サブスクリプション型ビジネスのメリットは、企業側としては「継続的な安定収入が見込める」・「新規ユーザーを獲得しやすい」というメリットがあり、ユーザー側には「低料金でサービスやソフトの活用ができる」・「常にサービスのアップデートが行われる」といったメリットがあります。 Netflixはレンタル事業に欠かせない延滞料金という旨味を捨て、サブスクリプションモデルによって購入するより安いというレンタルビデオの本来の価値提供をすることで、ユーザーの満足度と継続率の獲得に成功しました。


もちろんユーザーに継続してもらうためには、ユーザーが観たいと思うものを用意することが重要になります。この時期においてすでにNetflixのDVDの在庫は旧作在庫を中心に業界一でしたが、まだまだ大手レンタルビデオ店のような新作タイトルの確保はできていませんでした。Netflixがここで取った戦略が「おすすめ機能の実施」です。各ユーザーが作る「次に借りたいものリスト」を活用して、「この映画を借りた人は、あの映画も借りている」というデータを収集し、おすすめ機能の精度をどんどんと上げていったのです。


実店舗型のレンタルビデオ店は、お店ごとに在庫を確保するのが一般的でしたので、旧作の在庫の数ではNetflixに分があります。おすすめ機能を使い旧作の稼働率を上げることで収益を上げ、新作・人気作を確保する予算に回すという流れを生み出し、大手に対抗できるような新作の調達力を蓄えていったのです。  

テレビでのVODのスタート

VODとは「ビデオ・オン・デマンド」の頭文字を取ったもので、観たいときに観られるいわば現在のネット動画配信の形式です。ネットで動画を視聴するためには当然ネット環境が必要なため、従来であればVODとはPCで楽しむものでした。しかし、Netflixは2008年に韓国企業のLGと組み、テレビでのVODを実現するための機器であるセットトップボックスを開発しさらにユーザーを増やしました。テレビで動画を楽しむ方法としてはAmazonの「Amazon Fire TV」が有名ですが、世界的にシェアを二分するかたちになっています。


動画配信を行うためには、それ相応の通信スピードが必要です。Netflixは、ネット環境が整ったタイミングを見計らってVODをスタートさせています。形だけ整えてネット配信をしても画質が悪かったり、映像がカクカクとしたりしていては意味がありません。ユーザーの使い勝手を考えた上での事業拡大のタイミングがNetflixは秀逸だったと言えます。


順風満帆に見えるNetflixですが、2000年頃までは大手レンタルビデオ企業への事業売却の提案や従業員の大量解雇など、赤字続きの企業でした。赤字であってもレンタルDVDの延滞金という収入減を経ち、サブスクリプション型ビジネスに完全移行したというのは大きな選択であったといえます。しかしその選択は、店舗を構えないNetflixだからこそ可能な選択だったのかもしれません。


変革を起こすためには、必ず何かをやめて何かを始める必要があります。デジタルトランスフォーメーションにおいては、何かを始めることに目が行きがちですが、それが顧客の求めていないものであっては意味がありません。自社が社会にもたらす事業価値は何なのか、それを提供するためにあるべき理想の姿や解決すべき課題はどういったものなのか、それを考えることで初めてデジタルトランスフォーメーションへの第一歩が始められるのではないでしょうか。

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