• 2020/09/16
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デジタルトランスフォーメーション(DX)を牽引する通信業界。今どんなことが起きているのか?

  • マーキャリ 編集部
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目次

この記事では近年話題となっているデジタルトランスフォーメーションについて、通信業界の事例を中心に解説しています。基礎的なところから解説していますので、デジタルトランスフォーメーションについて詳しく分かっていなくても問題ありません。ぜひ参考にしてください。

通信業界は企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートする立場

デジタルトランスフォーメーションという用語の解説や通信業界の動向について紹介する前に、通信業界は企業のデジタルトランスフォーメーションを支援する立場であることを頭に入れておきましょう。


もちろん通信業界各社の中でのデジタルトランスフォーメーションも必要ですが、一般企業がデジタルトランスフォーメーションを達成するためにサポートをすることが通信業界が担う役割です。

デジタルトランスフォーメーションとは

近年話題となっているデジタルトランスフォーメーションについて、最新のシステムやツールを導入することだというイメージを抱いている人は驚くほど多いです。この機会にぜひデジタルトランスフォーメーションについて正しく理解してください。


デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)は、2004年にスウェーデン・ウメオ大学のエリック・ストルターマン教授によって提唱されました。DTではなくDXと略すのは、英語圏では「Trans」を「X」と略すことに由来しています。デジタルトランスフォーメーションとは何かについて、経済産業省では以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは単純に業務をデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。


では、具体的にどういう状態になればデジタルトランスフォーメーションが実現されたと言えるのかと疑問に思う方もいるでしょう。実はこれには共通する答えはありません。企業によって達成すべき状態は異なるからです。


従来のように最新機器を取り入れて業務を効率化していくことと、デジタルトランスフォーメーションの実現は似て非なるものです。確かに業務のデジタル化は、デジタルトランスフォーメーションへのステップであることは間違いありませんが、例えばWeb会議ツールを導入することは業務の一部をデジタル化しただけでデジタルトランスフォーメーションとは言えないのです。


デジタルトランスフォーメーションとは、今までの延長にあるものでなく新しく作るものであると考えた方がよいでしょう。企業のデジタルトランスフォーメーションをサポートする通信業界においては、単純に最新機器を販売するのではなく、顧客と協力してどのようにビジネスを変えていくかといったコミュニケーションの仕方が求められます。  

デジタルトランスフォーメーションが注目される理由

新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要です。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争上の優位性を保つために避けては通れないものなのです。


しかし、デジタルトランスフォーメーションを本格的に展開していく上ではさまざまな課題があります。それらをクリアできないと「2025年の崖」と呼ばれる取り返しのつきづらい状況に陥ると言われています。 

既存のITシステムのブラックボックス化

企業では、業務を行うにあたってすでに何らかのITシステムが導入されています。業種によっては数十年単位でシステムの変更が行われていないというケースも。企業は自社が運用しやすいようにシステムをカスタムし続けるのが通常です。そのためシステムが老朽化するだけでなく複雑化することで、どんなものなのか実態が見えないブラックボックス化しています。


システムのブラックボックス化がすすむことでデータを活用しきれないだけでなく、新たな技術を導入しても効果が出にくいです。さらには、新たなシステムを1から導入するためには、仕事のやり方そのものが大きく変更する必要があるため、現場からの抵抗が大きいことも、ブラックボックス化がすすむ要因となっています。


もちろんシステムの刷新には大きな費用と時間がかかります。しかし、これらの問題を放置しておくと、「デジタル市場の拡大に伴って大きくなるデータ量」・「システムを現場で運用している担当の定年退職による世代交代」・「サイバーセキュリティや事故・災害などによるデータの紛失リスクの高まり」といった状況に陥ってしまいます。これら3つの要素に対応しきれなくなるのが2025年と言われており、2025年までにデジタルトランスフォーメーションが起こせなければ、国内外を含めて競争に勝ち残れない存在となると予想されています。  

通信業界が起こすデジタルトランスフォーメーションの事例

インターネットやスマートフォンといった通信技術の発展に伴い、わたしたちの生活は大きく変わりました。日常生活だけでなく、日々の仕事においてもインターネットなしに仕事をすることは1日たりともできないのではないでしょうか。それほどまでにインターネットは、あらゆる場面でなくてはならないものになっています。


そのような中で、通信業界が現在進行形で起こしている変革が「IoT」と「5G」です。よく耳にするワードではありますが、今一度しっかりと内容を確認しておきましょう。  

IoT(Internet of Things)

IoTは「Internet of Things」の略称で、直訳すれば「モノのインターネット」となります。インターネットといえばPCやスマートフォンといった機器で行うのが主流ですが、モノにセンサーをつけ、センサーが取得した情報を活用できるようにすることで、モノに通信機能を持たせることが「IoT」です。身近な例で言えばバスに発信機を取り付け、運行データをリアルタイムで発信しバス停の表示に反映させるといったものがあります。


IoTと従来の通信機能の違いは、人の手を介さずともよくなるというところ。たとえば調べごとをするときにはGoogleなどの検索エンジンにキーワードを入力し、検索をして情報を得ますよね。IoTの場合は、人が操作をしなくてもモノがデータを自動的に収集・発信できる点が大きく異なります。バスの例で言うならば、バスに取り付けた発信機が集めたデータを運転手や管理センターの担当者が集計して各バス停に発信しているわけではなく、一連の動作が自動で行われているわけです。 IoTは2017年ごろから急速に成長を続けており、2022年には12兆円もの市場規模になると予想されています。


IoTが注目される大きな理由は、超高齢社会である日本が抱える人口減少問題です。日本ではすでに人口の減少が始まっています。そのため企業間での人材確保競争は今後激化していくと予想されています。人手不足を補う意味でも業務の効率化が期待できるIoTに注目が集まっているのです。  

5G

5Gの「G」は「Generation」を表しています。初めの移動電話から数えて5世代目の技術のため「第5世代移動通信システム」と訳されています。 5Gを単純にネットスピードが速くなると考えている方も多いですが、それでは不十分です。5Gの特徴は「超高速・大容量化」「超多数同時接続」「超低遅延」の3つです。5Gについて考える際の3つの特徴どれもが同じくらい重要になります。


5Gは、現在の通信技術として主流の4Gと比べると、通信速度は20倍、同時接続数は10倍、遅延速度は10分の1と大幅に進化します。


通信速度が超高速化することで、たとえば映画のような大容量のデータを一瞬でダウンロードできるようになります。高速化によりひとりひとりの通信がすぐ終わるため、1つの基地局に多くの人が同時にアクセスしても、従来に比べ多くの通信を扱えるようになります。このことを「大容量化」と呼んでいます。


同時接続数が増えると、一度に接続することができる機器が増える分、中継装置などの設置コストの削減にもつながるだけでなく、モノが通信機能を持つIoTの普及も大きく前進するでしょう。


3つ目の特徴である「超低遅延化」とは、基地局が反応を返すまでの時間(遅延)を削減できるという意味です。この技術は世界中で開発が進んでいる自動運転の実現に欠かせないものです。自動運転では、自動運転車が標識や信号と通信したり、他の車と通信したりする必要があります。この時の通信が少しでも遅れると動きに大きな差が出るため、5Gの低遅延性能が生かせるのです。


また、遠隔操作で行う手術においても超低遅延化は重要になります。たとえば操作中にメスを止めて、それが実際に反映されるまでの時間が一瞬でも遅れてしまえば人の命に関わってしまいます。遅延速度が抑えられることは、その分リアルタイムな操作が可能になることを意味しています。


大きなメリットのある5Gですが、これまで以上にインターネットに接続される機器も情報量も大きく増えますのでサイバー攻撃のターゲットも増えることになります。これまで以上のセキュリティ向上が求められるようになるでしょう。

今後の通信業界の課題

5Gの導入やIoTの発展に伴い、通信業界にはこれまで以上の強いセキュリティに対する意識が求められます。また、光回線がいまだに使用できない状況にある山間部や離島などでもIoTが利用できるようにするためには、光回線のさらなる普及も課題であると言えます。


5GやIoTの発展で通信業界を問わずあらゆる業界で重要性が増す役割はカスタマーサポートとカスタマーサクセスでしょう。 カスタマーサポートは、顧客からの問い合わせを受け、問題をはっきりとさせたあとに電話口で対応したり、専門のスタッフを派遣したりすることで問題を収束させるのが業務です。カスタマーサポートでは、お客様の問い合わせを受けるところが仕事のスタートになります。機器の故障により通信ができなくなったといったトラブル対応は5GやIoTの普及に比例して増えることが予想されます。問い合わせやクレームに迅速に対応できるかがますます重要になるでしょう。近年では電話やメールだけでなく、ライブチャット機能で問い合わせを受け付ける企業も増えていますが、どの窓口からもスピーディに対応できる体制を整えれば、顧客満足度にも大きく貢献できます。


カスタマーサクセスとは、その名の通り顧客の成功体験へ向けてサポートを行う仕事のことです。自社のサービスを顧客に継続して使い続けてもらうために、顧客が不満を抱える前に先んじて解決するのが主な仕事となります。特徴としては、問い合わせが来るのを待つカスタマーサポートとは異なり能動的に顧客にアプローチを行います。


課題や問題が発生してから対応するのではなく、課題が生まれる前にアプローチを行うのが特徴です。たとえば商品を購入したものの使い方が分からないとか一部の機能しか使えていないとなれば、顧客は不満を抱えてしまいます。そうならないように先手を打って行動していくことがカスタマーサクセスには求められます。顧客が商品やサービスを使うにあたって何も不満がなければ、解約にはつながりません。カスタマーサクセスは、商品やサービスを利用することで顧客が常に満足した状態にいられるようにするのが役割です。


問い合わせの数が増えれば、カスタマーサポートでは人員が足りなくなります。問題が起きる前に先手を打つカスタマーサクセスも同時に配置することが今後のスタンダードをなっていくかもしれません。


デジタルトランスフォーメーションへの移行に伴い、これまで以上に通信の役割は大きくなるでしょう。デジタルは今や情報を伝達する手段にとどまらずビジネスの深い部分にまで浸透しています。通信業界には、社会インフラを支えているという強い気概で、世界に比べて遅れている日本のデジタルトランスフォーメーションの推進を牽引していくことを期待します。

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