日本発のアパレルブランドである「ユニクロ」。「ジーユー」などと同様にファーストリテイリング社のグループ企業です。安価で質の高いスタンダードなアイテムだけでなく有名ブランドのデザイナーとのコラボなども行っており、世界中の幅広い層に支持されています。自宅にユニクロの服が一着もないといった方の方が珍しいのではないでしょうか。
アパレル小売業としては世界第三位のユニクロですが、新型コロナウイルスの影響で4月の国内既存店売上高は、前年同月比56.5%減、統計が公表されている中では過去最大の落ち込みとなっています。
この記事では日本を代表する大企業の1つであるユニクロが、新型コロナウイルスへの対応としてどのようなことを実施してきたのかについて解説をしています。ビジネスパーソンとしても知られるファーストリテイリング社の柳井社長がどのような施策を実施しているのかを知ることで、あるべき企業のすがたが見えてくるかもしれません。ぜひ、参考にしてください。
ユニクロの店舗での新型コロナウイルス対策
ユニクロでは新型コロナウイルスの影響で国内店舗全体の3割以上が休業をしています。また営業している店舗でも営業時間の短縮が実施されています。すべての営業店舗では、おでこの温度をチェックする検温計での入店時確認が行われています。新型コロナウイルスの怖いところは自身が感染者であることに気づかない場合も多いので、入口での検温があることは、買い物客の安心につながります。
オンラインストアは通常と同じように買い物ができますし、従来からのサービスであるコンビニ受け取りも可能です。
医療機関への支援
ユニクロは、医療現場で使用できる防護具の一種であるアイソレーションガウンを中国の自社取引先工場から調達し、東京、大阪、神奈川など感染者数が多く報告されている都道府県と日本看護協会を通じて、新型コロナウイルス感染症に対応する全国の基幹病院などに寄贈することを発表しています。また防護服を着ているとその中が蒸れてしまう肉体的負担を緩和するためにユニクロの機能性肌着「エアリズム」をヨーロッパや東南アジア各国、日本の医療機関に寄贈をしています。
また、日本だけでなく海外を含めた医療機関に対してマスクの寄付はすでに1000万枚以上が行われています。
参考(新型コロナウイルス感染症対策への緊急支援としてアイソレーションガウン20万点と機能性肌着を国内医療機関に寄贈:https://www.fastretailing.com/jp/sustainability/news/2004301500.html)
生産パートナーへの対応
1着の服をつくるのには想像以上にたくさんの人や企業が携わっています。ユニクロは企画・計画・生産・物流・販売までのプロセスを一貫して行うアパレルブランドとして珍しいビジネスモデルですが、それでも縫製工場などは自社の工場ではありません。ユニクロでは、今回の新型コロナウイルスの件以前から、取引先の縫製工場に対しては生産済みの商品や生産を開始している商品への支払い確約だけではなく、縫製工場がユニクロの商品のために仕入れた生地なども万が一不要になった場合の補償も確約しています。
社員やスタッフに安心を
今回の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、緊急事態宣言中は自宅で仕事をしたいと考えた方も多いのではないでしょうか。しかし、会社の都合でテレワークが実施できなかったという人も多いです。飲食店や接客業など、出勤せざるをえない場合はやむをえませんが、事務作業であるにもかかわらず休業やテレワークが実施されなかったとして会社に対して不満を覚えた方も少なくありません。
休業補償に関しても、手続きが複雑などの理由で会社が対応してくれないといった悩みを抱えている人もいます。その結果仕方なく退職に至るケースもあります。会社に大事にされていないと社員が感じることは、会社にとって大きなマイナスです。不信感があるまま思いっきり会社に貢献しようとは思えませんし、そのような会社なら転職をしようと考える方も多いでしょう。
ユニクロは今や世界的な企業ですが、売上高の前年同月比56.5%減のダメージが大きくないわけがありません。柳井社長自身も「戦後最大の人類の危機」と述べています。それにも関わらず世界中への支援だけでなく、今後も世界各国への出店を積極的に行うことを明言しています。ユニクロの店舗への客数は激減していますが、実は客単価は前年同月比で10%以上も伸ばしています。
「life wear」を提唱するユニクロでは、スーツやシャツも取り扱っていますが、主力の商品は肌着や普段着です。自宅にいることが多いからこそ、快適な部屋着の提案や定番商品の期間限定値下げを実行することでダメージを最小限に抑えられているのです。
ユニクロの服を持ってない人の方が少ないこの時代において、ユニクロの服は生活必需品とも言えます。いつも買っているものがセールになっていたら、この機会に買っておこうという気持ちになるのは当然の流れでしょう。店舗営業が主体のアパレルブランドは、飲食店と同様にかなりの打撃を受けています。しかし、この危機が過ぎ去るのを待っていても、いつ終わるのかわからない以上見通しがつかず結果として店舗の廃業に追い込まれてしまうというケースも予想されます。
今回の新柄コロナウイルスの影響は、世界中のすべての人にあります。 これは誰も経験したことのないものです。しかしだからと言ってじっと耐えるだけで何も対応をしないというのはよい方法だとは言えません。こんなときだからこそ、会社が助けられる人がいるはずです。今回の大きな危機に対して迅速な対応、社員への真摯な対応ができた企業が、いわゆるアフターコロナの時代の先導する存在になるのではないでしょうか。