新型コロナウイルスの影響でホテル業界や飲食業界、自動車業界等、様々な企業の売上は大幅に低下しています。しかしそんな状況でも売上を伸ばし続けている数少ない業界があります。それはゲーム業界です。本記事では新型コロナウイルスにおけるゲーム業界への影響について解説します。
コロナによるゲーム業界への影響は
ゲーム業界の売上を牽引した理由は巣ごもり消費です。巣ごもり消費とは自宅でエンターテイメントを楽しむ消費傾向です。ゲームは自宅でできる最も画期的で夢中になれる物として注目を集めました。代表的なのが「あつまれ どうぶつの森」というゲームです。2020年3月末に発売されてから5月末時点ですでに、これまでのシリーズの販売数を上回る人気ぶりです。この人気ぶりもあって本体のゲーム機である「ニンテンドースイッチ」の売り切れが話題になりました。そしてこれに便乗して「ニンテンドースイッチ」の価格が新品の2倍以上もする金額で転売されているという事態も発生しました。
https://www.nintendo.co.jp/switch/acbaa/index.html
しかしこれだけ人気だったとしても新型コロナウイルスの影響でゲーム機を作る供給元が稼働しなくなり、消費者の期待に応えられないのが現状です。このように短期的には利益が上がっていたとしても長期的には利益が上がりづらく、一概にはいえないのがゲーム業界です。
業種別影響度合い
ゲーム業界の業種別新型コロナウイルスの影響度合いについてみていきます。
コンシューマーゲーム
まずはコンシューマーゲームです。コンシューマーゲームとは家庭用ゲーム機を使って遊ぶゲームのことを指します。先ほどの「ニンテンドースイッチ」や「プレイステーション4」が該当します。日本だけのデータはまだ出ていないですが、世界でみると2月から3月にかけて約60%売上が伸びています。これだけ売上が伸びた理由としてはじっくり遊べることが要因です。外出自粛が短期的なものではなく長期的になると見越して消費者は家庭用ゲーム機の購入に至りました。
スマホゲーム市場
次にスマホゲーム業界をみていきます。売上としても前月より5%以上が上がっています。ダウンロード数においても前月比で50%以上の増加があります。このことから有料のゲームには手を出しづらいが無料のゲームはとりあえずやってみるという傾向が見られます。
参考（世界のアプリ売上は1四半期で2.5兆円、コロナで最高額更新：https://forbesjapan.com/articles/detail/33478）
中でも興味深いのがARを使ったゲームアプリです。ポケモンGOやドラゴンクエストウォークといったゲームは外出制限されていて、ゲームとして機能しないのが普通の考えです。しかし新型コロナウイルスの状況にいち早く対応し、ゲームの仕様を外出しなくても楽しめるものに変更しました。スマホゲームの売上は微増ながらも、思考を凝らすことで解決の糸口が見えることが明らかになりました。
コロナで影響を受けている分野も
好調なゲーム業界も新型コロナウイルスの影響を少なからず受けています。むしろ影響を受けている分野の方が多いです。ではどのような分野が影響を受けているのか紹介します。
新作開発
ゲームの新作開発は新型コロナウイルスの影響で遅れをとっています。ゲームの新作開発となるとパソコン1台で完了するのを想像してしまいますが、現実は違います。まずはスペックの高いパソコンを使用します。その上でいくつかのモニターも使用するためリモートワーク環境でできることではありません。また別の問題もあります。新作ゲームを開発したとしても必ずエラーが起こらないか確認を特殊な機械を通じて行います。それも社内に置いてあり、持ち出しも厳禁なため確認作業ができず、いっこうに進まない状況です。
極めつけにはゲームの審査を司る機関が新型コロナウイルスの影響で休業に入ってしまったことが開発を遅らせます。ゲームの発売をする前に対象年齢に相応しくない内容が含まれていないかCEROという特定非営利活動法人がチェックしています。審査ができないとなると、もはや発売ができないので後で新作開発のしわ寄せがきてしまいます。 新作のゲームを開発するためには様々な工程を踏んで発売まで至ります。新型コロナウイルスによりこの工程が変わる、良いきっかけになる可能性もあるでしょう。
参考（臨時休業のお知らせ 特定非営利活動法人コンピュータエンターテインメントレーティング機構公式ホームページ：https://www.cero.gr.jp/publics/index/1/detail=1/b_id=1/r_id=17#block1-17）
展示会の中止
展示会の中止がゲーム業界に大きな影響を与えています。ゲーム業界の世界的な展示会となると自社の最新ゲームを紹介するにとどまりません。ゲームを開発する人とゲームを販売する人を繋ぐ仲介役の機能もあります。展示会での出会いが社運を左右するといってもいいほどビックイベントになるので、これが中止になるほど大きな痛手はありません。ゲーム業界も普段はインターネットを介してやりとりする場面が多いはずですが、最終的には顔を突き合わせて話をすることの方が効果的なようです。
供給先の停滞
そもそもゲームを作るための素材を供給してくれる企業が止まってしまうと長期的にみて悪影響です。ゲームの素材の多くが中国に依頼をしていることが多いです。中国は最近になってようやくロックダウンを解除したので、これから供給が開始となるでしょう。しかし新型コロナウイルスの第2波がくるとまたロックダウンをする可能性もあるので、安心できません。
以上よりゲーム業界はこれら3つの大きな打撃を受けています。
今後のゲーム業界の動向
最後に今後のゲーム業界の動向について解説します。悪いきざしだけでなく新型コロナウイルスの影響により良いきざしも生まれました。それは体験の共有です。4月末に「Fortnite」というソーシャルゲームで面白いイベントが開催されました。「Fortnite」は建築物を立てたりといったクラフト要素のあるサードパーソン・シューティングゲームです。
しかしこのイベント時にはそれが行えない特別な空間ができ、世界的に有名なラッパーの「トラビス・スコット」さんがキャラクターを通しパフォーマンスを披露しました。その結果、世界同時接続者数が約1200万人となり記録的な数字を打ち出しました。このイベントにおける収益等は明かされていませんが驚異的な数字であることに間違いはないでしょう。
これまでゲームという仮想空間を通して共有することはありましたが、そこに有名人が公式に登場するということはなかったです。 現在は新型コロナウイルスで歌手活動もできない中、こうしたイベントが成功したことは新たなる掛け算を生み出したことになります。今後ゲーム業界を牽引していく事業になっていくでしょう。
まとめ
新型コロナウイルスの影響でゲーム業界は紆余曲折していることがわかりました。消費者目線だけでは伝わらないことが数多く存在するので、背景も考えて意識することが大切です。今後新しい収益基盤がゲーム業界においても起きるでしょう。
