カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは? 〜知っておきたい基礎知識〜

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは? 〜知っておきたい基礎知識〜

目次

カスタマーサクセスに転職を考えるとき、カスタマーサポートとの違いを把握しておくことが大切です。どちらも顧客の手助けをする仕事ですが、組織の役割が大きく異なります。ここでは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを徹底的に解説し、応募時に確認すべきポイント、将来に向けたキャリアパスをまとめます。

1. カスタマーサクセスとは?

カスタマーサクセスは「顧客を成功に導く」仕事です。SaaSで提供するサービスによって何を顧客の成功とするか異なりますが、たとえば会計ソフトであれば給与計算のスピードアップと作業負荷を軽減する業務効率化の達成が顧客の成功になります。Web会議システムの場合は、テレワークによる多様な働き方の実現です。カスタマーサクセスはサービスの導入をスムーズに行い、顧客の実践的な活用を手伝います。

成功は短期間では実現できません。長く使い続けてもらうことによって、はじめて成果を上げます。先に進めない活用の壁があるときには、突破するための分析や課題解決の提案を行い、顧客の伴走者として持続的に支援します

最終的には顧客のビジネスを成功に導くことがカスタマーサクセスのミッションです。

2. カスタマーサポートとは?

カスタマーサポートは「顧客の疑問やトラブルの解消」が仕事です。ヘッドセットを着用して電話をかけるオペレーターを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。コールセンター、コンタクトセンター、ヘルプデスクなどさまざまな名称がありますが、いわゆる企業の問い合わせ窓口として、困っているお客さまの対応をします。SaaS業界に限らず食料品や家電製品など、あらゆる製品やサービスに必要な部署になります

顧客からのクレーム処理も重要な仕事のひとつ。的確なサポートによって顧客の理解を促し、疑問や問題を解決に導きます。問い合わせの多い質問はスクリプトと呼ばれるシナリオを用意して対応します。

製品やサービスに対する不満が口コミで拡散すると、企業の評価を落としたり、ブランドの価値を損なったり、取り返しのつかない事態に発展します。トラブルの火消し役だけでなく、企業価値を維持するために重要な役割を担う部門がカスタマーサポートです

3. カスタマーサクセスとカスタマーサポート、5つの違い

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの概要をまとめました。続いて、5つの観点から違いを整理します。

20代、30代の転職では、マネジメントの視点から社内の組織と目的や役割を理解し、収益やコストに関する意識を持つと視野が拡がります。組織のミッションを明らかにすることは、リーダーに必要な能力です。業務内容はもちろん、企業全体において自分はどんなミッションを担うのか考える習慣をつけておくとよいでしょう

3-1. 目的:「収益性向上」と「品質向上」

カスタマーサクセスは、SaaSのサービス導入によって顧客を成功に導くと同時に、自社の「収益性向上」の目的があります。SaaS業界では月額や年額の定額制によるサブスクリプションが定着しているため、長期的に利用する顧客が多いほど収益基盤が安定するからです。さらに強い信頼の絆ができた顧客は、上位機能やユーザーライセンスを増やしてもらえるようになります。

カスタマーサポートの目的は、顧客の疑問や困ったトラブルを解決することによる「品質向上」です。品質向上によって企業やサービスをイメージアップして、間接的に顧客のサービス離れを防止できます。しかし、必ずしも収益に直結するとはいえません。アフターサービスとして付加価値を提供することから、生産管理部門や開発部門の品質向上と異なります。

3-2. 顧客との関係:「線」と「点」

顧客との関係を時系列でみていくと、カスタマーサクセスは顧客と「線」で関わります。SaaSの導入時から活用、さらに上位の機能やオプションの購入などまで持続的に支援するからです。一方でカスタマーサポートは、トラブル発生時やクレーム時の「点」の関わりです。

顧客と寄り添った関係づくりが大切なカスタマーサクセスでは、特定の顧客を深く理解できるようになります。一方で、トラブル時に点で関わるカスタマーサポートは、即座に顧客の状況や困っていることを理解して、迅速な対応が求められます

BtoC向けの大規模コールセンターにおけるカスタマーサポート部門は、膨大な数の顧客からの問い合わせに対応します。その後、問題が解決したかどうかアンケート調査によって結果を追跡することもありますが、多くは問題発生時点の解決が中心です

3-3. 業務:「能動的」と「受動的」

カスタマーサクセスの業務は基本的に営業であり、顧客との「能動的」な関わりが求められます。問題が起きてから顧客に向き合うのではなく「新機能はいかがですか?」のように積極的に質問して、活用できていないのであれば理由を深く掘り下げて、解決の糸口を探ります。

カスタマーサポートは、問い合わせ対応が目的のため「受動的」です。何か問題が生じたときの電話、メール、チャットを受けてから仕事になります。コールセンターでは、受動的な電話対応をインバウンドコールといい、営業目的としての電話かけはアウトバウンドコールと呼ばれます。

カスタマーサクセスは仮説を立てて検証していくため、PDCAサイクルを回しながら最適解を見出すことが求められます。カスタマーサポートでは多くの場合、問題を解決する方法を事前に用意しています

3-4. 指標:「解約率」と「顧客満足度」

ビジネスでは、KPIを設定して数値化して効果を測定します。カスタマーサクセスもカスタマーサポートも同様ですが、それぞれ重要となる指標が異なっています。

カスタマーサクセスの指標で最も重要なものは「解約率(チャーンレート)」。サブスクリプション型ビジネスを採用しているため、特に更新時に顧客が解約して離れてしまうことを避ける必要があります。常に顧客の声に耳を傾け、積極的に提案を重ねることで信頼関係を構築します。

カスタマーサポートには、電話の場合は応答率が重視されます。応答時間を含めて重視されるのが「顧客満足度」であり、アンケート調査によって集計されます。顧客満足度は英語で「Customer Satisfaction」といい、略してCSです。カスタマーサポート、カスタマーサクセスもすべてCSになるため、略語に気をつける必要があります。

3-5. 組織の位置づけ:「プロフィットセンター」と「コストセンター」

組織における部門の機能について、プロフィットセンターとコストセンターという考え方があります。営業部門や販売部門のように利益を担う組織をプロフィットセンター、利益には関わらないとはいえ企業活動を持続させるために必要な経理部門や人事部門をコストセンターといいます。

この考え方にもとづくと、収益性向上を目的とするカスタマーサクセスはプロフィットセンターであり、品質向上を目的とするカスタマーサポートはコストセンターになります。企業に対する顧客のマイナスイメージをゼロにする役割がカスタマーサポート、購入後のゼロからプラスの収益を担う役割がカスタマーサクセスといえるでしょう。


4. カスタマーサクセスとカスタマーサポート、3つの共通点

カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを解説しましたが、いずれもSaaS企業にとっては必要な機能を果たします。顧客の問題を解決するためには、ふたつの機能が連携することが理想です。また、顧客から問い合わせ頻度の高い質問をFAQに反映して充実させると、カスタマーサクセスやカスタマーサポートの負荷を軽減できます。3つの共通点を挙げます。

4-1. どちらも顧客視点が重要

カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、技術理解やサービス理解をもとに顧客の課題解決にあたるミッションを担っていることが共通しています。

開発部門では技術をもとにサービスを設計します。営業部門には、訪問営業のフィールドセールスのほか、ウェビナーなどデジタルツールを利用するインサイドセールスがありますが、売上や新規顧客の獲得が中心です。

ソリューション(問題解決)の提供としては、SaaSの企業自体が顧客視点を重視した事業です。開発部門や営業部門にも顧客視点が求められます。しかし、カスタマーサクセスやカスタマーサポートは、より顧客に近い立場で問題解決にあたります。「カスタマー」という言葉のついた部署であることを意識すべきです。

4-2. 継続利用を促すことが大切なミッション

顧客によって持続的に得られる価値を「LTV(Life Time Value)、日本語では「顧客生涯価値」といいます。あらゆるサービスでLTVを高めることが重要です。

多くのSaaSはビギナー版、スタンダード版、プロフェッショナル版のように機能と費用を分けていますが、活用にしたがって上位の機能の活用を促します。したがって「こんなことがやりたいのになぜできないの?」という顧客の疑問は、上位版によって解決できる場合があります。カスタマーサクセスでは、エクスパンション(活用の拡大)の業務として、上位版の積極的な活用を促します。これをアップセルといいます

4-3. コミュニケーションが重要な仕事

法人向けSaaSの使い方サポートには、Webサイトや動画などデジタルツールを積極的に活用します。こうしたアプローチをテックタッチといいますが、これだけでは顧客満足を得られない場合があります。特に大規模のライセンスを契約した顧客に対しては、対面による定例会を行って顧客から信頼を得ることが大切です。カスタマーサポートでは、見込み客からの疑問に丁寧に回答したことが営業機会の創出になるケースがあり、SNSによるアクティブサポートも生まれています。

カスタマーサクセス、カスタマーサポートともに顧客とのコミュニケーションが求められる仕事です。電話による分かりやすい説明はもちろん、カスタマーサクセスでは、論理的な文章を書ける能力が必要です。AIを搭載したチャットボットが使われるようになりましたが、人間と人間の信頼がビジネスの基盤であることには変わりがありません

5. カスタマーサクセスだからできる業務、やりがいとは

カスタマーサクセスやカスタマーサポートともに「辛い仕事」と言われることがあります。対人的な交渉が必要な業務は、得てして仕事の辛さが強調されがちです。それぞれの業務の大変さにも触れておきましょう。

カスタマーサポートといえば、クレーム対応を思い浮かべる人がいるかもしれません。多くの顧客は「購入したのだからサポートが当前」と考えています。無理難題を要求されたときの辛さは、カスタマーサクセスも同様です。

しかし、対話を続けていくうちに共通理解が生まれたときには達成感があります。カスタマーサクセスであれば課題を解決した後まで顧客と関わることができることから、苦難を乗り越えた達成感はひとしおです

6. カスタマーサクセス、募集要項のチェックポイント

実際に求人を見て応募する際に、チェックすべきポイントをカスタマーサクセスとカスタマーサポートの業務の違いから挙げていきます。

6-1. 勤務地・勤務時間など

カスタマーサクセスの職種は、一般的に企業の所在地が勤務地になります。Web会議、チャット、メールなどオンラインのデジタルツールを活用します。SaaSの種類や規模にもよりますが完全に内勤というより、クライアントとの定例会やセミナー、イベント、コミュニティの運営のために外出する業務もあります。

カスタマーサポートは、多くの場合、コールセンターやコンタクトセンターに所属し、内勤がメインといえるでしょう。CRMなどの画面を確認しながら業務にあたります。

6-2. 必須となるスキルや条件

カスターサクセスの場合は、多くの求人で法人営業2年以上の経験者が条件です。特に営業実績を具体的な数値として提示できる人材が歓迎されます。顧客体験の流れに合わせたシナリオが準備されている企業もありますが、混沌とした状況の中で仮説と検証を繰り返しながら仕事を組み立てていかなければならない職場もあることを知っておくとよいでしょう。

カスタマーサポートの場合、特にオペレーターの職種では未経験者歓迎の求人が多くみられます。ただし、教育や業務内容の確認が必要です。

7. カスタマーサクセスへの転職をキャリアパスから考える

最後に、カスタマーサクセスにフォーカスして、転職後にどのようなキャリアパスを考えておけばよいのか将来を探っていきましょう。カスタマーサポートからカスタマーサクセスにキャリアチェンジを考えている人の場合も考察します。

7-1. 訪問営業からマーケティング知識を修得して、組織のマネジメントへ

まず訪問営業からカスタマーサクセスへの転職を考えているケースです。基本的にカスタマーサクセスの業務は営業であり、訪問営業で培ったスキルが活かせます。ただ、訪問営業の場合はクロージングまでのプロセスに注力していたことに対して、カスタマーサクセスでは契約した顧客に寄り添って長期的な関係づくりを行います

顧客の課題解決のためにはコンサルティングが必要になり、イベント運営やコンテンツの整備などを通じてマーケティングスキルが得られます。成果に関しては訪問営業と同じように数値的な指標の責任を負い、顧客はもちろんチームのメンバーと連携して目標を達成する仕事でもあります

こうしたキャリアを積み重ねることによって、組織のリーダーとしてマネジメントに携わったり、業務プロセスのコンサルタントとして能力を発揮したりといった将来が開かれています。

7-2. 未経験者の転職、カスタマーサポートからのキャリアチェンジは?

カスタマーサポートからカスタマーサクセスにキャリアチェンジを考えている人にとっては、営業経験がないことが大きなハードルになります。IT業界以外のカスタマーサポートに勤務していたのであれば、さらに厳しいといえます。

付け加えると、あらかじめ決められたスクリプトがなければ対応できない方は、転職後につまずいてしまう可能性があります。カスタマーサクセスでは、みずから課題の解決を考えて提案する能力が求められるからです

このような場合は書類選考の段階で候補から外れてしまう可能性がありますが、まったく挑戦を諦めてしまうのは早計かもしれません。

顧客の課題を解決する仕事としてカスタマーサポートとカスタマーサクセスは重なる仕事があります。エントリーの際には、特定の顧客のサポートを継続した実績、その実績から得られた成果を数値的に表せることなど自分のスキルの棚卸しをしてみましょう。

まとめ

継続的に顧客に寄り添って成功をめざすカスタマーサクセス顧客の疑問やトラブルを解決するカスタマーサポートの違いをさまざまな側面から解説しました。SaaS業界では、いずれの職種も重要な役割があり、さまざまな求人があります。どちらの仕事に自分は適性があるのか、どのようなキャリアを描きたいか考えてみることをおすすめします。

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マーキャリ 編集部

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