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効率的な営業手法として注目を集めている「インサイドセールス」。組織内に部門を構築する企業が増え、転職市場では業務に適した人材の需要が高まっています。インサイドセールスで活躍できる人とは、どういった特徴なのでしょうか。ここでは、具体的なインサイドセールスの活動を踏まえながら、その適性について解説していきます。
1. インサイドセールス部門の特徴
インサイドセールスは「内勤営業」とも呼ばれ、主に電話やメール、Web会議ツールなど社内で使えるツールを利用し顧客アプローチを行う営業手法です。従来の営業手法でもある訪問営業(フィールドセールス)と比較し、前提となる部門の役割、ミッション、体制、業務内容、人材要件が全く異なりますので整理が必要です。
まずインサイドセールスの役割は、見込み顧客と良質な関係性を築き上げ、顧客の課題やニーズなどの情報のヒアリングをデータベース化し、商談につなげることです。また、いかに多くの“良質な商談”をトスアップできるかがミッションになります。
インサイドセールス部門では、この“良質な商談”を効率よく獲得するためにも、部門内でも更に2種類の体制に分かれます。それぞれ「BDR」「SDR」と呼び、役割により業務内容も異なってきます。BDR・SDRのそれぞれの役割については、次に詳しく解説していきます。
2. BDR・SDRの役割
インサイドセールスの体制は役割別で、「BDR」「SDR」の2種類に分かれます。それぞれ対象とする企業や目的を変えて活動することで、インサイドセールス組織全体の強化と営業活動の効率化につながっています。それぞれの役割について詳しく説明していきましょう。
2-1. BDRとは
BDR(Business Development Representative)とは、アウトバウンドを中心に新規顧客の開拓を行う部隊のことを指します。
メールや電話などでのアウトバウンド営業を行う他にも、リードの集客戦略を立てることも活動に含まれます。SNSやマーケティングオートメーションなどデジタルツールも駆使し、自社のターゲティングに見合う集客方法を考案、そして、戦略的なアプローチ方法の策定をも行う必要があるため、営業だけでなく、マーケティング的な素質も重要になってきます。
2-2. BDRの仕事内容
BDRは「自社のターゲティングに見合う新規の見込み顧客獲得」を主に行います。見込み顧客の獲得は、企業によってはマーケティング部門が行う場合もありますが、セールスに特化したリードの獲得はインサイドセールス部門で担う形で、集客予算や戦略を部門で分担している企業も多くあります。
獲得施策は、オンライン/オフライン両方の手法含め集客戦略を立案することから始まります。単に多くの見込み顧客を獲得すれば良いというわけではなく、最終的な契約までを視野に入れ良質なリードをいかに多く集客するかが重要です。
オンラインでは、自社サイトやホワイトペーパー、オウンドメディアの運用、SNS広告、ウェビナーなど、オフラインではDM、展示会出展、オフライン広告などが具体的な手法です。オンラインによる手法は、マーケティングオートメーションなどのデジタルツールと連携させ、必要に応じて顧客の情報を収集していくこともあります。
BDRは営業プロセスにおいて、営業基盤となる見込み客の獲得を担う、非常に重要な役割でもあるのです。
2-3. BDRに求められるスキル
BDRとして業務を進める上で必要となるスキルや経験とは、どういったものなのでしょうか。ここでは、BDRに求められるスキルについて、仕事内容に沿って紹介していきます。
2-3-1. コミュニケーション能力(伝達能力)
BDRは、アウトバウンド型で電話越しに新規顧客を開拓する方法を行うため、基本的な営業スキルでもある会話力が必要です。特に、商品やサービスを魅力的に伝える伝達力が求められます。
一度もコミュニケーションを行ったことのない人へ、営業するため、不信感なく距離を縮め、心を突き動かすような会話ができなければチャンスを逃してしまいます。商品やサービスの魅力だけでなく、相手がどのようなメリットを享受できるかを伝えられるか、そして相手に気遣いを持った言葉でアプローチできるかが重要な要素です。
2-3-2. ITリテラシーの高さ
集客施策を検討する際、オンライン/オフライン合わせて費用対効果を考え、良質なリードの獲得手法を常時、思案することになるでしょう。特にオンライン施策の検討時は、さまざまなデジタルツールを駆使し、効率的な獲得検証を行います。頻繁にデジタルツールを利用するため、ITリテラシーは高ければ高いほど良いといえます。
特に得意としていると望ましいツールは、マーケティングオートメーションツール(MA)やメール配信ツール、顧客管理ツール(CRM)、営業支援システム(SFA)などです。

3. SDRとは
SDR(Sales Development Representative)は、またの名を「反響型のインサイドセールス」とも言い、インバウンドを中心に新規顧客開拓を行う部隊のことを指します。
Webサイトやプロモーションなどを経由し、問い合わせや資料請求のあったリードに対して、適切なアプローチを行います。既に興味度合いが高い、または購入意思が強いとされる段階での能動的なリードを対象とするため、興味が薄れる・競合他社に奪われる、といったことがないよう、スピード感と柔軟性を重視した対応が必要となります。
3-1. SDRの仕事内容
アウトバウンド型であるBDRに対し、SDRはインバウンド型での見込み顧客獲得を行います。能動的にアクションされたリードに対し適切なアプローチを行うことがメイン業務です。
SDRが行う細かな仕事内容は、大きく2種類に分けられます。
(1)リードの選別や整理を行うことによる品質管理
ターゲットとなり得る良質なリードを確保するために、行うべき重要タスクがリードの品質管理です。流入したリードがターゲット外のものではないか、リードと自社サービスとの親和性を確認し、入念な精査を行います。
また、リード精査時に行う"温度感の見極め"も重要な要素です。確度の高いリードは、すぐさまフィールドセールスへパスすることで売り上げ増大につながるため、リードの購入意思やその時期の確認も行います。確実な情報収集のため、お問い合わせ先に直接電話を行い、必要情報のヒアリングを行うこともSDRの仕事の一つです。
(2)リードの育成
SDRではリードの選別後に定期的な情報発信を行い、自社サービスへの興味を喚起する「リードの育成」も行います。見込み顧客の興味度合いが高まるまで受動的に待ち続けていては、収益を生み出すサイクルも遅くなります。適切なコンテンツを継続的に配信するなどして、顧客の興味を引き上げる策を投じることもSDRが行うタスクです。
3-2. SDRに求められるスキル
インバウンド型での営業手法で顧客獲得を行うSDRですが、業務を行う上で必要となるスキルや経験はどういった内容なのでしょうか。こちらで詳しく、説明していきます。
コミュニケーション能力(情報収集能力)
BDRとSDR両方で一定の会話力は必要となりますが、中でも特にSDRが大事とするスキルは、聞く力、即ち「情報収集能力」です。
SDRは、確度の高いリードはすぐにフィールドセールスにパスするためにも、精査時にリードの"温度感の見極め"が重要であることを前述しました。この温度感の高さを知るためには、購入タイミングを明確に聞き出せるかが鍵です。しかし、関係構築がなされていない中で質問してしまうと、相手は不信感しか募りません。自分から話すのではなく、まずは相手に耳を傾けること、そして興味関心を示し、感情移入し、関係ができあがったタイミングで顧客から確実な情報を聞ける、「ヒアリング力」のある人が活躍できます。
ライティング能力
リードに対し情報収集を行う際に、同時進行で行うのがMAツールやCRMツール上への情報の書き込みです。顧客とのコール履歴や、収集した情報を蓄積するためにデータベース上に保存します。
その際に必要となるのが「ライティング能力」です。仮にフィールドセールスにリードをパスするとなった場合、入力データをフィールドセールス担当が確認し、プロセスを進めます「曖昧な記述が含まれている」「情報に間違いがある」となるとせっかくの成約チャンスが失われてしまいます。SDRにとって、顧客と話した内容を端的にまとめて文章化するライティングスキルは、チャンスを確実につなげるためにも非常に大事なスキルになります。
緻密な精査能力
BDRで収集した多くのリードをSDRでは、見込み度合い別での精査を迅速に行うことになります。その際に必要なスキルが、「精査能力」です。
見込み度合い別での精査を行うためには、見込み度を測るサインを早期に読み取る力が大事です。サインとなる情報は、過去の営業活動履歴、コール履歴、顧客から収集した情報など多数あります。これらの情報を正しく読み取り、正しく振り分けるという、緻密な精査能力が重要になってきます。
4. SDR/BDRに向いている人の素質
BDR、SDRの役割によって必要となるスキルが異なることは前項でわかっていただけたと思います。しかし、どちらにも共通して求められることはあります。それは基本姿勢です。ここでは、BDR、SDRの両方に共通する、向いている人の素質について解説します。
4-1. 個人主義よりチーム主義
フィールドセールスは、個々で担当顧客を持つため、誰が契約を獲得したかが重視される個人戦に近いものがあります。一方で、インサイドセールスは個々ではなく、部門として顧客対応が行われるため、団体戦・チーム戦になります。
チームで目標を掲げ、チームでの達成を進めるため、誰もが同じレベルで顧客対応を行えることが重要な鍵です。そのため、自身の数字を意識し、個人が前に出るような素質よりは、チーム全体での数字を意識し、助け合いができる人に向いていると言えます。
4-2. 楽観主義
新規顧客開拓を行うBDRも、情報収集を行うSDRも、共通業務で行うのが電話です。毎日多くの人と電話で会話をすることになりますので、電話での会話を楽しめる人に向いています。低い声のトーンに動揺したり、断られることやクレームに恐怖を感じる人は向いていません。
お客様との会話は常に楽しいものになるとは限らず、時に電話での会話を嫌がられ、クレームになるケースもあります。そういったことが起きたとしても、動揺せず、なるべく平然と物事を捉えられる楽観的な人の方が適性が高いといえます。
4-3. 顧客第一主義
インサイドセールスは、顧客との関係性を構築した上で営業プロセスを進めることを重要視しています。そのため、顧客は何を求めているのか、何をすれば喜んでくれるのか、自己都合ではなく相手を優先した「顧客第一主義」で考えることが大事になってきます。
実際に、自社のインサイドセールスを統括する株式会社ビズリーチの茂野氏は、お客様との向き合い方について以下のように伝えています。
「『カスタマーファースト』が重要です。(中略)薄っぺらいマーケティングをしていたらすぐに気づかれてしまい、信頼関係を構築することが出来なくなってしまいます。(中略)だからこそ、顧客第一で考えていくことが重要です」
株式会社ビズリーチ 茂野氏「『カスタマーファースト』を実現する組織の作り方」
4-4. 忍耐力がある
インサイドセールスは、営業活動において人間関係を構築することが前提となるため、中長期的な視点で忍耐力を持って活動を行う特質を持った人が向いています。
フィールドセールスの場合、一度の商談にかけて提案書を作成したり、月末に短期で契約を持ってくるような短距離走での営業活動となる傾向もあります。一方でインサイドセールスは、継続的なコミュニケーションで関係を構築し、成果に急ぐことなくじわじわと興味喚起を行う長距離走に近いものがあります。成果を急ぐ人よりも、地道に、着実に成果を出すような忍耐力のある方が向いているでしょう。
4-5. 柔軟性と感受性が高い
インサイドセールスでのコール業務では、あらかじめ営業台本であるスクリプトが用意されます。しかし、当然ですがそのスクリプト通りに会話が進むことは非常に少ないです。
決められたスクリプト通り、量をこなすテレアポとは異なり、インサイドセールスのコールでは1対1の個での会話で量より質が大事になります。相手の特徴を得て、話す内容を変えたり、予期せぬ方向へ話が進んだとしても、焦らず、臨機応変に対応できる柔軟性が求められます。
実際にインサイドセールスの現場を経験した、GMOメイクショップ株式会社の浅井氏は、お客様への会話にさまざまな工夫を施し、またその経験が現職に役立っていると伝えています。
「『少しでも話を聞いてもらえるような工夫』、(中略)今振り返ってみると、あの経験は苦しいながらも確実に今の自分のベースを作ってくれていると感じますね」
GMOメイクショップ株式会社 浅井氏「インサイドセールスのスキルはカスタマーサクセスにも活かせる」
4-6. 成長意欲高く学習し続けられる
インサイドセールスでは、毎日異なる業界からのお問い合わせを受け、そのリードに対し適切なアプローチを行います。さまざまな業界に対し、適切な会話を行うためには、一定量の業界知識を保持している必要があります。
知らないことは自身で学習する意欲、また新しい情報を自らアップデートする成長意欲を持ち、活動できるインサイドセールスは重宝されます。
株式会社ビズリーチの茂野氏は、新しい情報にアンテナを張ることの重要性について以下のように伝えています。
「スキルでいうとテクノロジーへの柔軟な対応ですね。日々テクノロジーが進化している中で、過去の成功体験を引きずって同じ施策やオペレーションをしているままでは自分も会社も成長していきません。 なので常に新しいテクノロジーにアンテナを張り、使っていくことが大切だと思います」
株式会社ビズリーチ 茂野氏「『カスタマーファースト』を実現する組織の作り方」
5. インサイドセールス転職者の特徴とは?
インサイドセールス職は、転職市場で徐々に広まりつつある注目の高い職業です。実際にインサイドセールスに興味を持ち転職を決断する人は、どういった経歴と目的を持ち進めるのでしょうか。ここで詳しくご説明していきます。
5-1. 前職のバックグラウンド
インサイドセールス職に転身する人の中で多いのが、営業職出身者です。テレアポやアウトバウンドでの営業を経験したことのある方は、前職の経験をそのままBDRの業務で活かすことができます。
中長期的に顧客を追いながら営業を行った経験や、課題に対するソリューション営業の経験なども転職には有利です。顧客が置かれた課題や背景を理解した上で、適切な打ち手を提案する能力はSDR、BDR共に必要なスキルであり、即戦力として活かすことができます。
営業職以外でもインサイドセールスとして活躍する人は多くいます。例えば、営業事務経験者の場合、CRMなどのデジタルツールを既に利用し業務を行なっている方はITリテラシーが高いとされBDRとして大いに活躍できます。また、コールセンターの経験者の場合、電話やメールのみでの丁寧な顧客対応経験や正確に履歴をデータに残すライティングスキルはSDRとして、そのまま活かすことができます。
5-2. なぜインサイドセールスに挑戦するのか
インサイドセールスはまだまだ新しい職業であるため、未経験からの転職が多いです。未経験にもかかわらず、インサイドセールス職に挑戦しようとする転職者が多い背景に、キャリアパスにつながるポテンシャルの高さがあります。
インサイドセールスには3つのキャリアの道筋があると考えられます。2つは、インサイドセールスとしてのキャリアを極めていく道です。スキルの汎用性が高いことから、異業種出身、かつ未経験者であっても挑戦が可能であるため、新しい業種でキャリアを得るために選択する人もいます。2つ目は、SaaSなどのサービスモデルで存在するカスタマーサクセスに転身しキャリアを広げる道。そして3つ目に、フィールドセールスとしてキャリアアップを望む道です。
このように、インサイドセールス職から派生して得られるキャリアパスは多岐に渡ります。インサイドセールスの経験を積んだ後に続く、キャリアの可能性を感じ、ファーストキャリアとしてインサイドセールスに挑戦する人が多くいます。
6. キャリアアップ毎に求められるスキルとは?
インサイドセールスからさまざまなキャリアに進むことは可能ですが、キャリアアップするために必要なスキルは必ず存在します。ここでは、具体的なキャリアアップ例を3つ挙げ、各キャリアに必要なスキルについてを具体的に紹介していきます。
6-1. インサイドセールスでの昇進
インサイドセールス部門内でのキャリアアップを狙うとした場合、現場業務を行うオペレーターの次の階層にあたる、現場のマネジメントを行うリーダー格(マネージャー)としてのスキルを磨く必要があります。
仮にSDRとBDRの両チームのリーダーとなった場合、行う業務の幅は大きく広がります。両チームのマネジメント、SDRが行うリードの管理状態の把握、そしてBDRが行うリード集客戦略の立案、他部門との連携までの責任を持つことになります。
リーダーとして必要なスキルは、まずはチームをマネジメントする力が必要です。インサイドセールス全体での目標数値をチームで達成することがミッションとなるため、チームを導くための人望力と全体数字の管理能力が大事になります。
リード全体の管理役にもなるため、リード全体の数値と状態管理能力も大事です。BDRで行われる集客施策での状況、SDRで行われる品質状況を確認の上、数値変動を注視します。
リーダーになると責任範囲が広がり、営業全体の売り上げも同時に見ることになります。そうすると、会社の中での存在も必然と大きくなるため、やりがいも感じられることでしょう。
6-2. フィールドセールスへの転身
インサイドセールスはフィールドセールスになるための登竜門という位置付けの企業も中にはあり、フィールドセールスに転身するための第1ステップとしてインサイドセールスに就く人もいます。
フィールドセールスにキャリアチェンジする場合、インサイドセールスとして身につけることのできる基礎的なスキルに加え、「提案力」「クロージング力」が必要になってきます。機会がないため、インサイドセールス業務時にこのスキルを身につけるのは難しいですが、顧客との関係構築方法を知っておくことで、クロージングの打率をあげられることは確かです。
インサイドセールスとしての基礎的なセールススキルを身につけ、フィールドセールスとして提案力とクロージング力を身につけ、打率を高める能力を得られれば、どこの業界でも、営業のプロとして負け知らずのキャリアを積むこともできるかもしれません。
6-3. カスタマーサクセスへの転身
カスタマーサクセスとして活躍したいと考える場合、インサイドセールス時代に得ておくと有利に働くスキルは業界知識の習得スキルです。
カスタマーサクセスは、顧客に寄り添った形での伴走支援を行う立場となるため、コンサルティングに近い職種になります。そのため、顧客の業界やサービスについての深い知識を得ておくと有利に働くことがあるのです。
カスタマーサクセス職も新しい職種であるため、未経験でも優遇されます。インサイドセールスで培った幅広い業界知識があれば、カスタマーサクセスへ転職できる可能性が高まります。
まとめ
インサイドセールスで得られるスキルや、向いている人の特性、キャリアアップにつながるスキルについて解説しました。
インサイドセールスの適性があるか否か、を単純に知りたい! という方には、マーキャリの「デジタルセールス適職診断」の利用をお勧めします。向いているのかを客観的に判断してくれるので、参考にしてみると良いでしょう。

インサイドセールスをキャリアステップを踏むための第1段階として転職する人も多く、インサイドセールスの転職市場の需要が高まっています。興味のある方は、マーキャリNEXT CAREER掲載されている求人もぜひチェックしてみてください。

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執筆者
マーキャリ 編集部