働き方改革が施行されたことにより、会社の体制や制度が変わったなんて人も多いと思います。企業も個人も今まで以上にビジネスマンのキャリア展望に目が向けられている中、マーキャリ会員によるキャリアチェンジに伴った体験談をシリーズものとして連載していくのが本企画です。
今まさに自身の今後のビジネスライフに向けて働き方を変える動きをしている方もまだキャリアプランが漠然としている方も参考になる内容になっておりますので是非ご覧ください。
今回の記事投稿者:koshuheyさん
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はじめまして。koshuheyです。私は現在フリーランスのクラシック音楽家、そしてWebコンサルタントとして働いています。一見全く異なる2つの仕事をなぜ私が両立できているのか、またそれを始めたきっかけは何だったのかをこちらでシェアしていきたいと思います。
1. 憧れの貧しい音楽家生活。
私は中学校時代に出会った楽器の演奏に取り憑かれ音大へ進みました。更にはアメリカへの留学までも経験することができ、たくさんのお金と時間を使い、晴れてプロのクラシック音楽家としてのスタートを切ることが出来ました。「若いうちは下積みだと思って、稼げなくても頑張るぞ!」と意気込み、名古屋のボロアパートで暮らしながら、毎回食らいつくように演奏の仕事をこなし、隙間の時間に倉庫内作業などの日雇いのバイトをして生活費の足しにしていました。
2. 「このままではいけない」そんな時に出会った“Webビジネス”
数年するとバイトをする時間もろくに取れないくらい仕事を頂くようになり、忙しい毎日を送るようになりましたが、収入は思うように上がりませんでした。「こんなに仕事は回ってくるのに、なんでこんなに生活がきついんだ」毎日この自問自答でした。この収入を何十年も続けていくのは現実的ではない。まるで出口のないトンネルの中を進んでいるようでした。
そんな時、何気なく見ていたYouTubeで
「今は個人で稼ぐ時代」
そんな少し怪しげなタイトルの動画に私は目を奪われました。内容はWeb系のフリーランスの方が自分の稼ぎ方やその仕事のやり方などを発信しているチャンネルでした。 「Webか...でも、自分には何のスキルもないしな~」と半分諦めながら、興味本位でそのチャンネルの動画を観るようになりました。これが私とWebとの最初の出会いでした。
3. 「出る杭は打たれる」クラシック音楽業界との相性が最悪の“Web”
まだ音楽家としての活動にしがみ付きたい私から見ると、個人で発信力を持ち様々な事業を起こしている彼らの姿は少し遠い存在でした。「だよね~」くらいにしか思えなかったのです。周りの音楽家の中でもYouTubeやブログ、ツイッターなどに精力的に取り組んでいる同世代の仲間がいましたが、陰で「大した技術もないくせに」などと揶揄されているところを間近で見ていた私は「今の仕事の関係に悪影響を与えたくない」と完全に委縮してしまいました。所謂、老害に迎合していたわけです。
「自分はとても彼らのようにビジネスはできない」とは思いながら、それでも興味は尽きず、毎日暇さえあれば情報収集に勤しみ、かなりマニアックな知識までどんどん溜まっていきました。しかし、それは実践して結果を出さないことには全く価値のないことだということも心のどこかではわかっており、それが時折自分を惨めな気持ちにさせたこともありました。
4. 知り合いの「手伝ってよ!」の一言
そんな中、美容室でいつも担当してもらっているNさんに「koshuhey君、YouTubeって詳しい?」と軽く相談を受けました。私は「やっとアウトプットが出来る!」と嬉しくなってしまい、まるで水を得た魚のように次々と話していました。するとNさんは「ちょっとその話ここだけで終わらせたくないから」と申し出があり、次の日にお店の近くの居酒屋さんで二人だけでの会議を設けました。その翌日の夜、3時間の話し合いの結果「是非始めたい、手伝ってくれ!」と初めてのオファーを得ることが出来たのです。
5. 初めての法人営業
私とNさんで始めようと言っても、始めるにはその費用、少なくとも私の人件費がかかります。(無料でやると申し出ましたが、断られました。)そこでNさんがオーナーに話を持ち掛けたところオーナーから「直接話したいから事務所に来てもらえないか」と連絡を頂きました。初めての法人営業。勝手もわからず緊張もしましたが、出来る限りの知恵と誠意をお伝えし、オーナーからも「是非私たちを手伝って欲しい」と正式にオファーを頂くことが出来ました。
最初はお店のYouTubeだけの話でしたが、今ではオーナーが経営する他の会社のWeb戦略のお手伝いまでさせて頂いています。
6. キャリアチェンジのポイント5つ
私がこのように大きくキャリアチェンジを果たせた理由は大きく5つあります。もちろん例外はありますが、ことWebという観点においてはある程度再現性があるかと思います。
①フリーランスであったこと
企業が人材を採用するというのは非常にリスクのあることです。そんな中「私が使えなかったらいつでも切って頂いて構いません。」という姿勢は、相手のリスクを減らすことができます。確かに仕事を切られたら収入がなくなるというのはこちらの大きなリスクですが、それを自ら取ることによって企業側のリスクを代わりにヘッジすることができるというのはフリーランスの大きな強みだったと思います。
嫌なら結果を出すこと。そうすれば今のクライアントも継続して発注してくれるし、他のクライアント獲得にも繋がります。私も未経験スタートながら、初月に3社ほどから発注をもらいました。
②Webに関しての知識の需要は大きい
ITと聞くと尻込みしてしまう方も多いことでしょう。かつての私もそうでした。AIがどうとかプログラミングがどうとか本当に難しいことももちろんありますが、自分でちゃんと調べれば十分に理解できることの方が実は多いのです。しかし、多くの人がITやWebという言葉を聞いただけで拒絶反応を起こしてしまったり、「ま、後々考えていこう」としてしまったりする人が多いというのが現状です。それは経営者も例外ではありません。
現代では“○○×インターネット”という形でインターネットが関わらないビジネスはほとんどなくなっていきます。その中で一見小難しそうなWebに関することを企業の「代わりに調べて、実行する」ということが、人材不足の中小企業において大きな価値となります。
③ある程度の地頭があった
私は大学こそ音楽大学でしたが、高校は進学校に通っており、同級生はみんな国公立大や難関私立大に進学していました。その中でも飛び抜けて優秀というわけではありませんが、基本的なWebの知識を理解して、クライアントのオーダーや課題をくみ取ることができる程度の地頭はあったのだと思います。学力は必要ありませんが、きちんと話が出来る人間であるということは非常に重要です。
④コミュニケーション能力が高かった
音楽家というのはかなり神経質な生き物で、それこそ変わり者が多い世界です。些細なことで人間関係を壊したり仕事を失ったりしてしまう人を何人も見てきました。私はその中で「悪目立ちせず、人から嫌われず、でも印象には残る」という何とも矛盾に満ちた人物像に近づくため、ありとあらゆる心理学やコミュニケーションの勉強をしました。それによって、業界でもうまく立ち回れていたと思いますが、そのコミュニケーション能力が法人相手の営業にも非常に有用でした。「koshuheyさんは営業のご経験があるのですか?」とクライアントに不思議がられたほどです。
⑤徹底的なクライアントファーストの目線
企業の経営というのはそれこそ答えのない課題と対峙し続ける毎日です。そんな時に自分のエゴや都合ばかりを押し付けてくる営業ほど邪魔なものはありません。特にIT系に関しては専門知識が多いので、それをずらずらと並べられても聞いている方は苦痛でしかありません。つまらない学校の先生の授業を思い出すとわかると思います。
大事なのは圧倒的な相手目線で考えることです。相手のITリテラシーがどのくらいで、どんなことに困っていて、何を目指しているのかをダイレクトに察知する。それができるとクライアントからは「わかってくれる」と信頼してもらうことが出来ます。自分がいかに優秀であるかをアピールするのではなく、いかにその事業を自分事として考え一緒にゴールまで行けるのかを代わりに考える姿勢こそが中小企業の経営者やお店のオーナーと仕事をする上で一番大事なことです。
もちろん他にも要因はあると思いますが、以上の5つが、私が独学で学んでいたフェーズからコンサルタントとして案件を獲得できるようになったことに大きく影響するポイントでした。
特にフリーランスへキャリアチェンジをする際は、専門知識やスキルはもちろん大事ですが、それよりもコミュニケーション能力や相手目線で物事を考えるという当たり前のことをどれだけきちんと出来るかということが本当の意味で自分を守ります。そして何より新しいことへ興味を持ち続け常に自分をアップデートしていく姿勢が自分の市場価値を高めて行きます。「現状維持は衰退」そんな世の中でサボらずに自分を磨くことができ行動できる人は、必ずチャンスをつかむことができると信じています。