マーケティング組織構築コンサルタント デ・スーザ リッキー
Webディレクター経験を経てから3社計12年のマーケティング実務、および組織組成の経験を持ち、各事業者にて、前年比3倍、前月比700%などの数々の実績を成す。最終的には上場企業にてマーケティング部長に。その後、数々のマーケティングイベントに登壇を果たす。その際に感じたマーケティングに対する「人の課題」を解決すべく、商業出版(「ひと目でわかるマーケティング」)を経て、2019年に株式会社Marketer's Brainを設立。「マーケティングのプロ」としてのみでなく「マーケティングの組織を作るプロ」として国内・海外で活躍中。
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さて、ここまでのやりとりを行う中で、橋本さんは「未来と現在」を整理して、自分の中で「目指すべき未来と積むべき経験」を理解したところで、そこに進むための履歴書を作ることができました。
彼女の場合は、近々に転職をする事はないでしょうから、これを今すぐ「活用していく」事はないでしょう。しかし、自分の現在地を「正しく理解」した事で、今後の仕事に、より意欲を持って取り組めることになるでしょう。
ただ、皆様の中には「せっかくだから転職に使ってみたい」と言う人も多いことでしょう。ですから、今回は「有効な転職先を探すコツ」について少しお話します。
まず、基本的な話として「転職」は、「もう限界だ!」となってからする方も多いのですが、そういう時に焦ってことを動かすのは大変危険だなと思います。焦って決めても良いことはほとんど無いですからね。
やはり、事前の準備をして「何をなしていくのか?」が事前に整理出来ている事こそが、「転職失敗のリスク」を減らしていく事になります。
加えて「時機を見る」と言う事もそうです。たとえば、同じ職能の人でも、ほんの数か月ズレただけで「求められる案件」や待遇がまったく違ったりする……というのは良く起こっています。
キチンと準備をし、比較的長い視点で、キャリア形成を考えていく。そして、以下にあるような「自分に合った」かつ「自分の価値を上げる」企業選びについて考えていきます
応募する企業の選び方のコツ
では、手始めに。よく言う「自分に合った企業」とは、たとえばどういう企業を指すのでしょうか?色々なコツが世の中にはありますが、私が大切にしていたポイントは以下の4つです。
(1)自分の将来のターゲットとのギャップを埋めてもらえるような企業か?
(2)企業文化
(3)自分の長所が発揮しやすい環境か?
(4)20のチャレンジが存在するか?
(1)についてはこれまでのコラムで議論をしてきましたが、自分がキャリア形成のために書いた「現在と未来」のギャップを埋めるための職種や、職務内容を募集しているか?という事です。
一般的に転職を志す人々は、「相手の企業にウケるための自分」を演出しようとしますが、それは言い換えれば「合格するために、過剰な無理(背伸び)」をしているかもしれません。
我々のゴールは、転職ではなく「キャリアの形成」だという基本に立ち返れば、ここは目指すゴールでは無いはずです。
ですので、どちらかと言うと私の考え方は逆で、条件(キャリアの理想像)を先にしています。
そして、その条件がクリアできる事、つまり私が企業に受かるために企業に併せるのではなく、私がありのままの表現をして、違和感なく仕事に溶け込める企業を選ぶ。という順番ですね。
そして、その中で(2)~(4)を見ていきます。
(2)は、極端な例を挙げると「社員旅行がある」とか「運動会がある」とか、そういう事です。これ、意外に「学校みたいで受け入れられない」人もいますからチェックしておきましょう。
(3)自分の長所が発揮しやすい環境か?
その後に(3)について考えます。つまり、自分がその転職先の企業で、※希少性を発揮できる事
※独自のポジションを形成できること
これを目指しやすいのか?を考えます。
たとえば、「相手にとって難しくて、自分にとって容易なこと」がもし、その転職先に存在すれば、あなたはその企業において「その分野の1番になりやすい」と言えます。
私は過去に「Webディレクター」の経験を持って、ある大企業のWebプロデューサーに転身した事があるのですが、その企業は大企業故に「Webディレクターの経験者」は存在しませんでした。
そうすると、いわゆる現場の調整ごとが起こった時に、パッと介在できるのは自分だけとなり、結果「会社で一番Webに詳しい人」として社内で認知され、数年後に本社に招聘されることになりました。
「強み」をうまく使い、時に業種を変える事で、このような転身も可能となる訳です。
(4)キャリアアップが出来る転職を成すために
さて、4つ目は私なりの「転職のルール」として、特に若い時に使っていたテクニックについてお話いたします。それが「80-20の法則」です。
つまり、その募集要項が「80出来る事。20チャレンジ」になっているか?です。
キャリアアップとは基本的に「成長」の要素が必要です。これまで紹介したテクニック(1)~(3)にあった条件は、企業に貢献しつつ、自分の価値を発揮するにはベストな選択かも知れませんが、それは「あなたが長所を生かして働く」ことにのみ特化しており、飛躍的なキャリアの向上とは直結していません。
だから、募集要項を見たら、私は必ず「80%は出来そうだ。でも20%はチャレンジングだな」と言う職種に飛び込んでいました。
理由はシンプルです。
20が無いと、成長できない。
80が無いと、活躍できない。
これです。
採用側に回ってから、良く分かったことがあるのですが、基本的に募集要項に「ドンピシャ全てを叶える人材が来てくれた」となる事はほとんど奇跡に近いです。
採用のラインは「もう少しだけ足りないけど、かなりいいなぁ」という部分までなら、容易にハードルが下がるものです。だから20のチャレンジ要素を入れる。私の場合はそれが「部長と言う役職」(課長経験はあるが、部長はチャレンジ)だったりしました。
そこをあえて勝ち取れば、自分のランクを上げられますし、万が一届かなくても、それ相応の水準(80%)は満たすことが出来るため、入社後の(悪い意味での)ギャップは生みにくくなる。そういう「ポジティブ」に理想に近づくチャレンジなら、積極的にリスクをテイクする、と言う考え方も存在するわけですね。
面接に挑む(履歴書の使い方)
最後に。橋本さんとのやり取りの中で、優先すべき自己PRを紹介しつつも「MVPを取る」といった項目の部分で、わざと「そこは詳しく書かなくて良い」と言った部分がありましたね。これは、読みやすい「職務経歴書」を書く事もそうですが、この件について、ちょっと理由を説明すると、たとえば「面接時に気になるであろう」場所を作っているのです。
つまり、あえて「質問させる」ことを狙っているんですね。
彼女の例の場合、このMVPの話を振られれば、前回の会話にあった通り、彼女は「数年かけて自分の短所をPDCAで改善し、成果を出した」と言うサクセスストーリーを「質問に答える形式」で、PRに変換していく事が出来ることでしょう。
これは、シンプルなテクニックである前に、彼女が「意図を持って」職務経歴書をまとめ、頭の中で整理が出来ているからこそできる芸当でもあります。履歴書、職務経歴書をまとめるというのは、そういう「実際の面接」までのすべてをケアしている究極の「転ばぬ先の杖」にすらなってしまうんですね。
まとめ~終わりに
さて、ここまで4回にわたりコラムを連載してきましたが、いかがでしたでしょうか?自分のキャリアの棚卸しをする事は、理想の未来を考えたときのギャップ、そこまでの期間、それらを具体的に認識し、自分の「価値観」を理解・見直すよい手段となります。
その中で、目指すべき方向を見出し、正しく整理しておく事で、もしあなたに「何か」のチャンスが舞い降りたときに、迷わず、迅速に対応する事も出来るでしょう。
このサイトにも履歴書・職務経歴書をまとめる機能がついていますが、その選択に応えていくだけでも一定のヒントにはなります。たとえば、そういう手助けを貰いながら、1日ゆっくり、キャリアについて考える時間を持ってみてはいかがでしょうか。
他の誰でもない、あなたの、未来をよりよいものにするために――。
キャリアを楽しみましょう!