この記事は「ARPUとは何か。重要視される理由とARPA・ARPPUとの違いを解説」の後編になります。前編をご覧になりたい方はこちらをクリックしてください。
ARPA・ARPPUとの違い
ARPUと混同しやすい指標として、ARPAとARRPUがあります。この2つとARPUとの違いをそれぞれ確認していきましょう。ARPAとは?
ARPAは「Average Revenue per Account」の頭文字をとったもので、1アカウントあたりの平均売上を指します。ARPUとの違いは、1ユーザーか1アカウントかということですが、これはARPUに比べてよりリアルな実態がつかめるとされています。 ARPAは「売上÷アカウント数」で求められます。携帯電話を例にすると、スマホやタブレットなどは1人1台しか持っていないとは限りませんよね。1人がスマホを2台所有していたり、スマホもタブレットも持っていたりすることは少なくありません。ARPUで求める「売上÷ユーザー数」では、1人がスマホもタブレットも両方持っている状況を考えないで別のユーザーが持っているとして計算することになります。するとどんな不都合があるかというと、スマホもタブレットも持っている人に対して「タブレットもあると画面が大きくて便利ですよ」「タブレットは通話機能がないのでスマホもいっしょに持つとよいですよ」などといった無駄なアプローチをかけてしまうことにつながることがあります。
ARPAで言うアカウントとは契約者のこと。ARPAでは契約者単位での売上を算出することができるという特徴があるわけです。
ARPPUとは?
ARPPUは「Average Revenue per Paid User」の略称です。これは主にスマホゲームなどの課金と無料どちらでも楽しめるサービスで使われる指標で、課金ユーザーのみを対象としたもの。ARPPUは、課金ユーザー1人あたりの平均課金額を表します。ARPPUは「売上÷課金ユーザー数」で求められます。全ユーザーのうちどれくらいの割合で課金しているユーザーがいるかを示す数値を課金率と言いますが、「ARRPU×課金率」でARPUが求められます。スマホゲームのアプリのように無料ユーザーがいる場合は、無料ユーザーがいくら増えても売上にはつながりません。そのためARPUよりもARRPUが重要な指標となります。
ARPUを高める方法
売上を伸ばす方法は課金してくれるユーザーを増やすかARPUを高めるかの2つがあります。ですが、スマホのようにサービスの普及率が一定以上の水準にある場合、ユーザーの大幅増は難しいためARPUをアップさせることが優先事項となります。 ARPUを向上させる方法にアップセルとクロスセルがあります。アップセルとは、ユーザーがすでに使用している商品やサービスから同じラインナップの上位商品や付加価値の高い商品の購入へと誘導することを指します。たとえばスマホであれば使いすぎると通信制限がかかって、ネットの読み込み速度が遅くなりますよね。そのような場合に速いスピードで使える容量を増やすこと提案するのはアップセルにあたります。
クロスセルとは、サービスのグレードを上げるのではなく関連商品の販売を狙うこと。スマホはすでにサービスに加入しているのであれば、タブレットや自宅で使えるWi-Fiサービスを提案することがクロスセルです。
ARPUの向上を狙うためにはアップセルとクロスセルを狙う、または買い切りのサービスなら商品の購入頻度を上げてもらうことの大きく分けて2つの方法があります。
しかし、やみくもにARPUの向上を狙うことはかえって逆効果となります。サービスを使用しているのは、ブランドや商品自体に心から満足している人だけではありません。たとえばスマホの契約を格安SIMを扱う他社(MVNO)に乗り換えれば安くなるのに、手続きが面倒だからと放置している人は多いですよね。そういう風に考えている人に、ネット広告などを使うなどしてアップセルやクロスセルを推進することは成果を上げにくいどころか解約にもつながりかねません。
ARPUの向上には、前提として顧客がサービスやサービスを提供する企業に対して信頼や愛着が強いことが欠かせません。信頼や愛着が強いことを、ロイヤルティが高いと表現します。 成熟した市場のなかで企業が成長を続けていくには、顧客数ではなくユーザーひとりひとりからの売上を高める必要があります。ARPUは、これからもマーケティングを行う上での重要な指標となるでしょう。まずは、自社が抱える顧客のロイヤルティをどのように高めるかといったところからARPU向上の施策をとっていくことが重要です。