この記事は「現代に適応した購買行動モデル AISCEASとSIPSを知ろう」の後編になります。
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AISCEASに加わった2つの要素
AISASについて確認した上でAISCEASに話を戻します。AISCEASはアイシーズまたはアイセアスと読みます。2005年に、アンヴィコミュニケーションズの望野氏が提唱した購買モデルです。AISCEASの7つの要素は以下のようになります。 ・Attention(注意) ・Interest(関心) ・Search(検索) ・Comparison(比較) ・Examination(検討) ・Action(行動) ・Share(情報共有)。AISASにもあった「Search(検索)」と「Action(行動)」の間に、「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つが追加されています。 それでは「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」の2つについて解説していきます。
Comparison(比較)
興味を持った商品がどんなものだろうと検索をする。検索をするのは商品そのものに対してだけではありません。たとえば食事をするレストランを探すときや、新しい家電製品を買おうとしたときには、必ずといっていいほど口コミを気にする方も多いのではないでしょうか。商品について知るために、比較対象を見つけそれぞれを比べるというのがこの段階です。Examination(検討)
Comparison(比較)した上でどちらがよいか、これを買うべきかを検討する意思決定の段階です。検討の結果、買うべきだと判断すれば次の「Action(行動)」の段階で購入に至るというわけです。 商品について詳しい知識がない場合には、「本当によいものだろうか」といった意識が生まれるもの。そういう場合には自然と「Comparison(比較)」と「Examination(検討)」をしているのではないでしょうか。SIPSとは?
ここからはSIPS(シップス)の説明に入ります。SIPSは2011年に登場した購買行動モデルで、電通コミュニケーションデザインセンターの佐藤尚之氏をリーダーとする社内ユニットが提唱しました。AISASやAISCEASがインターネットの発達により考え出されたものですが、SIPSはさらにSNSの影響を深く考慮しているという点にちがいがあります。SIPSの4つの要素は以下のようになっています。 ・Sympathize(共感する) ・Identify(確認する) ・Participate(参加する) ・Share&Spread(共有・拡散する)Sympathize(共感する)
これまでの購買行動モデルでは、企業側から消費者へPRを行うことで消費者に認知してもらうところからスタートしましたが、SIPSでは企業によるPRではなく、友人や関心のあるインフルエンサーへの「Sympathy(共感)」が消費行動の発端になっていることが特徴的です。Identify(確認する)
共感した消費者は、それが自分にとって有益なものか情報を集め、確認をします。知人などに評判を聞くといった行動も確認にあてはまります。Participate(参加する)
SIPSは、消費者参加型の購買行動モデルです。共感をして、自分に有益であると確認したら「いいね!」や「リツイート」といった形で企業のPR活動に参加します。その結果、実際の購入は至らなくても、新たな消費者に「Sympathy(共感)」を生む流れができます。Share&Spread(共有・拡散する)
購入したら感想を共有・拡散します。これはAISASの「Share(情報共有)」とほぼ同じです。特徴としては、商品の購入をゴールに設定せず、情報の拡散を目指しているということ。数を重視する概念と言えるでしょう。AISCEASもSIPSも購買行動モデルですが、どちらが優れているというものではありません。 自社の商材の特性や事業内容によっても変わってくるでしょう。消費者に対してどのようなコミュニケーションをしていくべきかを考えることで、実施するべき販売戦略が見えてくるはずです。AISCEASやSIPSといった言葉だけにとらわれることなく、自社が目指す姿に即した行動をとることが重要です。