みなさんこんにちは。マーキャリ編集部のやっくんです。
最近、「映画を観る人、映画館に行く人、双方とも減少中」という記事を目にしました。
どうやら、最近の若者は映画館へ行かなくなっているようです。僕も映画は好きなのですが、映画館へはほとんど足を運ばなくなってしまいました……「なぜ映画館に行かなくなってしまったのか?」と問われると、即答できる理由がない気がします。
そこで今回は、若者の映画館離れの原因をマーケティング思考で探っていこうと思います。
記事後半では、「君の名は」「銀魂」など近年、若者間でヒットした映画をマーケティング的な観点で考察しています。「若者が映画館から遠ざかってしまった真相」「映画業界が若者を取り込む戦術」など、身近な娯楽をテーマにマーケティング思考を身に付けられる情報が満載なので、ぜひ最後までお付き合いください!
なぜ若者は映画館へ行かなくなってしまったのか
近年、各種メディアで若者の映画館離れが叫ばれていますが、その実態はどうなっているのでしょうか。まずは、データを元に、若者の映画館来場者数の推移を見てみましょう。
10台の女性を除き、10代・20代男性、20代女性は前年よりも映画鑑賞率は減少傾向にあり、特に20代女性の映画館離れが顕著にみられます。
(男性)年代別の鑑賞率の推移(出典:NTTコム リサーチ)
(女性)年代別の鑑賞率の推移(出典:NTTコム リサーチ)
やはり映画は鑑賞料金が高い
一番の理由はこれです。何と言っても鑑賞料金が高い。一般1800円。学生でも1500円。だったらよほど見たい映画が上映されない限り、レンタルできるまで待つ方も多いのではないでしょうか。日本の映画鑑賞料金は海外と比較しても高く、例を挙げると、同じアジア圏では、韓国が約700円、中国が400円、インドはなんと100円で鑑賞できるそうです!物価の高いヨーロッパでも1500円~1700円が平均値とされていることからも、日本の映画鑑賞料金が諸外国と比べて、高いことが分かります。社会に出たばかりで娯楽に使えるお金が少ない若者からすると、1回の映画鑑賞料金が1800円はなかなか手痛い出費となるでしょう。せめてあと500~600円安ければなぁと思いますよね。主要各国平均入場料金(出典:みずほ産業調査 Vol.48)
フード・ドリンク類も高い
映画鑑賞中のお供であるポップコーンとドリンクの値段が高いことが挙げられます。ポップコーンとドリンクのセットを映画館で買えば、近所のスーパーで買うよりも5倍~6倍は高くついてしまいます。そうと分かっていても、僕は映画館に来た時は必ずポップコーンとドリンクのセットを注文してしまいます(笑)来場者からすると、高値に設定されているフード・ドリンク類ですが、ポップコーンとドリンクは映画館を運営している興行会社の重要な収入源となっているので、現状では値下げするのが厳しいようです。とはいえ、映画鑑賞料金が高い分、フード・ドリンク類ぐらいもう少し安くしてほしいところですよね。
上映時間が定められている
映画館では、作品ごとに上映時間が決められているので、来場者の都合でいつでも好きな時間に映画を見ることはできません。上映したばかりの作品や人気作品は、上映回数が多い傾向にありますが、それ以外の作品は、上映時間にバラツキがあるので、仕事終わりや学校帰りに映画を見たいと急に思っても、時間が合わないために、あきらめてしまうといった若者も多いのではないでしょうか。上映までのCMが長い
映画が上映される前には、10分ほど広告が流れます。「なぜ高い鑑賞料金を支払ってまで長々と広告を見なければならないのか?」と思ってしまうのは僕だけではないはずです。
そして最後には映画泥棒はやめましょうと注意喚起される始末。広告主からの広告収入が映画業界を支えているので、致し方ないと思いますが、せめて2~3分にして欲しいところです(笑)
離席すると内容が分からなくなる
上映中にトイレに行きたくなって、少し劇場から出ると内容が分からなくなってしまう。自宅で鑑賞すれば、いつでもストップ・巻き戻し・早送りができるのに...と、誰もが一度は映画鑑賞中に思ったことがあることでしょう(笑)
作品によっては、わずかな時間であっても離席してしまうと物語の前後が分からなくなってしまう可能性があります。
上映中の姿勢が制限される
基本的に上映中は2~3時間ほど座り続けなければいけません。「座り続けていると作品に集中できない」といった若者は、無意識に映画館へ行かなくなっているかもしれません。疲れてきたら気軽に立ち上がったり、体勢を変えられると良いのですが、一番後ろの席でもない限り、立ち上がってしまうと、他のお客さんの迷惑になってしまいます。映画鑑賞中の姿勢が制限されてしまうことも若者の映画離れの要因として考えられます。上映中は禁煙・マナーモード
上映中は禁煙なので、煙草を吸う若者にとってはストレスになるかもしれません。また、上映中マナーモードにして原則スマホの使用は禁じられているので、「その場で感動や笑いをツイートしたい・友達にLINEしたい」といった若者にとっては窮屈に感じられるかもしれません。映画業界は「好きなスタイルで、周りを気にせず映画を見たい」「娯楽施設でぐらい解放感を得たい」といった若年層を映画館に来場させる施策を練る必要があるでしょう。娯楽の多様性
近年は、映画以外の若者が楽しめる娯楽や趣味が多く存在しています。例を挙げると、中には、ほとんどお金をかけずに楽しむことができる趣味も多くあるかと思います。
若者を対象とした娯楽マーケットが多様化したことにより、映画鑑賞以外の趣味や娯楽を楽しむ若者が増えてきていると言えます。
若者が「わざわざ1800円出してまで、映画見なくてもいいや」と思うのは自然な心理かもしれません。
レンタルDVD・有料動画配信サービスの普及
近年の有料動画配信サービスやレンタルDVDの普及により、いつでも好きな時間に何度でも映画を視聴できるようになりました。大画面や立体音響で映画を楽しむことができるのは、映画館ならではのメリットですが、スマホやTV画面で映画を見ることに慣れている層からすると、わざわざ高い鑑賞料金を支払ってまで映画館に行く意味を見出すことができないかもしれません。
若者の映画館離れを防ぐために
ここまで、若者が映画館へ行かなくなってしまった理由を考察してみました。では、若者に今まで以上に映画館へ足を運んでもらうためには、映画業界はどのように変化していくことが求められるのでしょうか?マーケティング的な視点から考察していきます。
20代~30代の映画鑑賞料金を引き下げる
気になった作品が上映されていたとしても、「鑑賞料金が高いから見送ろう」という心理的ハードルを引き下げるために、鑑賞料金を引き下げることは効果的だと考えられます。では、具体的にどれぐらい料金が値下げされれば、鑑賞回数に変化が起きるのでしょうか。下記の図によると、1500円では約20%の人が増えると回答していますが、1000円まで引き下げると、半数以上の人が増えると回答しています。僕もせめて鑑賞料金が1000円だったら、もっと映画館に行くだろうなと思います。(笑)
映画料金値下げによる鑑賞回数の変化(1800円からいくらに変わったら)(出典:ガベージニュース)
映画館のチケット料金について妥当だと思う金額(大人の一般料金)(出典:ガベージニュース)
また、現在の鑑賞料金が妥当であると感じている人は極めて少なく、約半数の人が、鑑賞料金は1000円が妥当であると感じているようです。
若年層に限定した統計ではありませんが、鑑賞料金を1000円まで引き下げられれば、来場者数が大幅に増えると考えられます。
客単価当たりの鑑賞料金を引き下げてしまうと、興行収入が減少してしまうリスクも孕んでいますが、せめてもう300~500円は安い価格帯を実現して欲しいというのが、若年層の声なのではないでしょうか。
エンターテイメント性のある映画館を目指す
娯楽が多様化している現代において、映画業界が若年層を取り囲むためには、エンターテイメント性があり、おしゃれな雰囲気がある観光スポットとしても訪れてみたいと思わせるような映画館を目指す必要があります。ありふれた映画館の形を脱却し、個性的な映画館として差別化することができれば、友達同士やカップルでも行ってみたい映画館として付加価値を持たせることができます。
また、それぞれの映画館が差別化を目指し、ユニークで若者を楽しませるサービスを提供することができれば、映画館の生き残り戦略となり、業界全体の活性化に繋がることでしょう。
コアなリピート客を増やす応援上映
近年では「応援上映」という新しい上映スタイルが若者や作品ファンの間で流行しています。
映画上映中に観客の声援、コスプレ、アフレコなどが許される新しい映画鑑賞スタイルであり、映画館では静かに映画を鑑賞するという従来の概念を覆すものである。盛り上がるシーンで歓声や声援を上げたり、ツッコミを入れたり、劇中のセリフを唱和したり、サイリウムを持ち込んでコンサートのように楽しむことができる。
出典元:応援上映-Wikipedia
応援上映は、主にアニメ作品に多く見られる上映手法で、立ち上がって声を出すことが認められている、これまでの映画館の常識を覆す新しい上映スタイルです。劇中のキャラクターや出演者にエールを送るほどの熱量がある層が来場する映画館なんて想像するだけでワクワクしますね!
応援上映は、ファン同士の交流も生まれやすく、「大勢でワイワイはしゃぎたい」「作品への愛着を共有したい」といった若年層のニーズも満たしています。
マーケティングにおいて、リピート顧客の創出は、安定的な収益ベースを築く上で非常に重要です。
映画業界におけるリピーターの創出は、何度も鑑賞したいと思わせるようなヒット作を生み出せるかどうかということにかかっています。
よほど作品が気に入ったか、コアなファンでなければ、特定の映画を何度も鑑賞することはないでしょう。
その点で、応援上映は若年層を取り込み、リピート客を増やすことも期待できる優れたマーケティング手法であると言えます。
若者向けの作品を製作する
若年層を取り込むために、映画館の関連施設を充実させ、サービスを工夫することも有効であると思われますが、そもそも若者が見たいと思うような映画がなければ、料金や上映時間等の障壁から、映画館まで来場させるのは難しいでしょう。近年、若年間でヒットした作品の傾向を分析し、友達やカップルでリピート鑑賞したいと思わせるような映画を製作することができれば、FacebookやTwitterなどのSNSで拡散され、口コミで広がっていき、映画業界全体を盛り上げることに繋げられるはずです。
映画をヒットさせるためには、出演者に各種メディアで宣伝してもらう。CMを流すなど、公開前にどれだけ作品の認知を広げ、ポジティブなメッセージを届けることができるかということが鍵となっています。SNSが発達する以前は、公開後に作品を周知させる手段は、口コミによるところが大きかったようですが、近年は、公開後にTwitterやFacebookなどで、作品がシェアされ、ヒットするケースが増えているようです。
ここでは、若者間で話題になった映画から、ヒットの傾向をマーケティング思考で探ってみようと思います。
君の名は
最近、若者間で爆発的にヒットした作品と言えば、2016年8月26日公開の「君の名は」が挙げられます。
アニメ映画はあまり見ることがないので、公開当初は、なぜ来場者数が伸び続けるのか、なぜヒットしたのか謎でしたが、職場の40~50代の先輩も流行に乗っかって見に行っていたので、僕も連れられて見に行きました(笑)
下記の図を見ると、興行収入がツイート数に比例していることが分かります。
角川アスキー総研(出典元:映画のヒットは、ソーシャルメディアが左右する時代へ~映画興行収入2016発表~)
今後、若者向けの映画をヒットさせるためには、SNSでの拡散性も意識していく必要がありそうです。「君の名は」はSNS、Twitterのツイートによって、ヒットした代表作と言えるかもしれません。
銀魂2
僕が小学校5年生ぐらいに友達から勧められて読み始めた銀魂。
惜しげもなく、他のジャンプ漫画をパクっていく姿勢と、テンポの良いギャグとシリアスの二重奏が最高に面白いです。漫画を映画化するのは、「原作ファン」がいるので、下手に原作を改変して、オリジナルストーリーを展開させたり、原作キャラのイメージと違うキャストを起用すると、大コケ必至のリスクがついて回ります。そのため、原作ファンを敵に回してしまうと、口コミや映画レビューが辛口になってしまうので、ヒットさせるのは至難です。
では、なぜ漫画が原作の映画「銀魂」は若者間でヒットしたのでしょうか。ヒットの要因として、原作が表現の幅が広いギャグ漫画だということが挙げられます。ストーリー性・テーマ性の高い作品は、時間や予算の関係から作品を改変してしまうと、もれなく原作ファンの鉄槌を食らう事になります。
ギャグマンガである「銀魂」は、読者の想像の斜め上を行く突拍子もない展開に発展することが多く、実写版の表現を原作ファンも受け入れやすいため、老若男女を巻き込んでヒットに繋がったと言えます。
また、面白系・ネタ系の映像や話題は若者にツイートされやすい傾向にあります。
神楽役の橋本環奈の体当たり演技など、原作を忠実に再現したギャグシーンが若者間でブームとなりSNSで拡散させることで、友達やカップルで鑑賞したい作品として認知させることに成功しています。
映画「銀魂」オススメなので、ぜひ見てみて下さい!
まとめ
「若者の〇〇離れの原因をマーケティング思考で紐解いていく」シリーズ第1弾である「若者の映画館離れ」いかがだったでしょうか。後半は僕個人の映画レビューなってしまった感は否めませんが(笑)映画業界における若者のニーズと今後、若年層にヒットする映画の傾向がお分かりいただけたかと思います。
身近な商品やサービスにおける市場の動向を探っていくと、背景にあるユーザーや時代の流れつかむことができるので、マーケティング思考を身に付けるトレーニングになること間違いなしです。これからマーケターを目指す方は日頃から意識してみてはいかがでしょうか。