2019年1月に中途入社、当メディア・マーキャリチームに配属され、新人マーケターとして日々奮闘する25歳の冨沢を追った連載記事。
6大卒という学歴や元カーディーラーという肩書がありながら自己ブランディングを全くしていない為、キャリアを活かしきれていない彼が、<マーキャリチームメンバーと関わる中で自身の希少価値の見出し方を日々学び、成長していくドキュメンタリー>です。本人許可の元、プライベートも完全にさらけ出したリアルな内容はメディア記事としては大変珍しいのではないでしょうか。創業30年以上のBtoBマーケティング専門会社の一員として働きマーケティングノウハウを吸収する中で自己ブランディング能力を身につけていくことができるかが見どころです。
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第4回「冨沢の一貫性」
セルフブランディングに必要なのは「一貫した言葉と行動」これができない人間が多いから、仕事では差ができる。
恋愛でも一貫性のある男に女性は惹かれるともいう。
結婚を考えるのであれば、さもありなんだろう。
僕は散らかったデスクの上でいつものように頭を抱えて悩んでいた。
周りの人間どもから
「土日に家に篭ってないで趣味でも見つけなさい!」
「もてたいんだったら、もう少し自分を磨いたら!?」
「セルフブランディング!セルフブランディングよ!」
と口酸っぱく言われても一ミリも理解できない。
(そういえば、どっかのお偉いさんが言ってたなぁ。人は集団の中で生活をする時、分厚い仮面(ペルソナ)をつけているらしい。男性ならより男性らしく、女性ならより女性らしく見られたい為にいいように取り繕ってふるまうんだとか)
そんな夢想をしているとふとひらめいた。
「周りの人のイメージで自分という社会的人格ができあがっていくのなら、それだけに力を入れてうまく印象操作すれば他人からの評価はうなぎのぼり、がっかりさせないように自分自身ももっと頑張ろうという気持ちになり、相乗効果で自己ブランディングができるに違いない!」
「もう、すでに自分がだらしない人間だと気づいている社内の人間は論外なので、自分のことをあまり知らない、もしくは初対面の人間から試しいけばいい!」
その日のうちに、学生時代、あまり深くは話をしてこなかった同級生の女性数名にLINEで連絡をしてみた。
「お久しぶりです。冨沢でございます。
朝夕はしだいに涼しさを感じるころとなりましたが、○○ちゃんはお健やかにお過ごしのことと存じます。
僕といえば、日々新たな出会いを探して紋々とした毎日を過ごしているゆえ、突然ではございますがもしご都合がよろしければ一度秋空の下でお茶でもご一緒にいかがでしょうか?」
第一印象はどんなケースにおいても繊細な注意を払うべきだと、
ああでもないこうでもないと試行錯誤した結果、変態紳士さながらな怪文書が出来上がり、
考えることに疲れ切った僕はそれをそのまま送った。
しかし思いのほか、返信が一通あった。
「どうかしましたか?具合でも悪いのでしょうか? 美千代」
母の優しい問いかけに僕はほろりと涙がこぼれそうになるのを我慢した。みっともない姿をみせてごめんよ母ちゃん…
そんな母のアカウント名は「mitiyo♥」であった。イメージの植え付けという点では母のブランディング力もなかなか高いといえる。
同時に僕は、今流行りのマッチングアプリにも挑戦していた。
あくまでマーケターとしての市場調査も兼ねて行ったものだ。
そして僕は奇跡的に一人の女性と週末にご一緒にお茶をする機会を得た。
お昼過ぎに待ち合わせの場所につき、5分程時間をつぶしていると一人の女性がこちらに向かって歩いてきた。
彼女は腰まで伸ばしたロングの髪に白いワンピースを身にまとい、柔らかい素敵な笑みを浮かべる麦わら帽子が似合いそうな女性であった。
僕が彼女に抱いた印象は「おしとやかな女性」である。
「あの…冨沢さんですか?」
「はいそうです」
そう答えた僕の姿形はというと
真っ黒なキャップをかぶりサングラスをかけ、9月だというのに黒金で胸に「DINASOR」と書かれたダウンジャケットを着衣して待ち構えていた。
オンライン上では紳士なイメージをもってもらう為に、これでもかというほど丁寧に受け答えをしていたので、彼女は戸惑っていたに違いないが、
これには僕なりの戦略があるのだ。
僕は「強くてしっかりした男性」を目指して日々邁進しているつもりだ。
オンライン上では「礼節を重んじて、顔も知らない相手との距離感を適切に測れるしっかりとした男性」=冨沢 という計算式が刻まれるようにしていた。
そうであるならば次のステップに移り、「強い男性」×「しっかりとした男性」=冨沢というイメージを持ってもらうのだと意気揚々と仕込んできた策なのである。
うろたえていた彼女に僕は気を使い、エスコートしますよという意味合いを込め、腰に手を当て「行こうか」とおしゃべりした。
しかし、彼女は気づいてないのか
「このあたり、詳しいです! おいしいコーヒーを淹れるカフェはこっちですよ!」
と言わんばかりにスタスタと先に進んでしまった。
僕は仕方ないと思い、腰に手を当て、モデル歩きをしながら彼女の後をつけた。
店についた僕たちは存分におしゃべりを開始した。
どうやら彼女は27歳で保育士をしているらしく、そのおっとりとした物腰から、普段職場でどんな風に子供たちに接しているかを想像するのは難くない。
そんな彼女もどうやら恋人との関係で悩んでいるらしく、
オンライン上では終始、紳士に徹していた僕を絶好の相談相手と感じて本日は会ってくれたらしい。
「彼氏が最近そっけなくて…」
そんな悩みを吐露した彼女に対して僕は待ってましたといわんばかりに独自の見解を述べた。
「そうであれば彼女さん、あなたが今意識すべきは一つです。それは自己ブランディング。
あなたが優しくおしとやかなのは十分伝わりましたが、彼氏さんがそれに飽きてしまっているという可能性は考えられませんか?
であるならば、違う印象をエッセンスとして加えればいい。僕みたいに!
そうですね…たとえば普段とのギャップを出すために機嫌が悪い時は語気を強めるとか」
「冨沢さん、面白半分にアドバイスしないで!!!!」
「ワォ...」
いきなり実践した彼女とは裏腹に、気の弱さが漏れてしまった僕に男らしさのかけらもなかった。
その後は当然のごとく気まずくなり、早々にお会計をして二人それぞれ帰路に立った。
帰宅後、当然僕はいたたまれなくなったので、もう一度会って謝罪をさせてほしいと連絡した。
彼女からの返信は
「最初はすごく丁寧で信頼していたのに、会ってみたら容姿も中身も全然違ったので、もう信頼できません」
であった。言葉のナイフが僕の胸に突き刺さった。
僕は学んだ。
他人によく思われたいがための過剰なイメージの擦りつけは全く逆効果であること
人がせいぜい一人に対して持つイメージというのはせいぜい一つか二つなのだからその持ってもらいたい、伝いたいイメージはぶれてはいけない。
どんな場所でもオンラインでも、洋服でも、しゃべり方でも、一貫したメッセージを持つことが重要なのだと。
先日の彼女はどれ程自己ブランディングができていたか。
口惜しさと情けなさから僕はしばらく呆然としていた。
しばらくして誰かにかまってほしくなったのでTwitterに
「もう自己ブランディングなんてやめたい…」とつぶやいた。
間髪入れずに一件のアカウントからリプライがつく。
mitiyo♥「元気出して」
心の弱い僕は一筋の涙を流した。
第5回 マーケター冨沢「冨沢の生き様」はこちら。