弱冠36歳にして現在170名のマーケターを取りまとめている若き取締役。
着実にキャリアを重ね、入社10年にして現取締役として会社を牽引する傍ら、2018年に新規事業部署であるメディアプラットフォームDivの責任者に就任。マーケター歴10年を節目に、未経験の領域に踏み入れた彼を追った連載企画。
第一回目は、自身のようにある程度キャリアを積んだ上位レイヤーが次を見据えてすべきことは何か、経験を踏まえ語ってもらった。
大学時代はウィスコンシン州へ留学、本場アメリカのマネージメントやマーケティングを学び、
2008年に法人マーケティングのパイオニア企業である株式会社エムエム総研に入社。
テレマーケティングやインサイドセールスなどのリアルコミュニケーションからデジタル領域まで多岐にわたり、
マーケティング活動全般のプランニングを担当。外資系、国内大手IT企業に対して多くのプランニング実績を積む一方、ITproマーケティングなどセミナーにて講師やパネラーとしても講演実績を積む。更に2017年には同社経営陣と共に自身初となるビジネス書籍『少人数チームからはじめる失敗しないBtoBマーケティングの組織としくみ』を出版、少人数チームにフォーカスしたBtoBマーケティングの組織作りと仕組みを解説した同書は、多くのマーケターに支持され、一躍して彼の名はプロのマーケターという肩書と共に広がった。
「キャリアがあるからこそのセルフブランディング」
河村:組織を取り纏める立場の人間が、自分の市場価値を考える機会って、転職だったり起業をしようとした時なんですよ。我々経営層は、会社を存続させることは当然、同時に社員の生活を第一に考えなくてはなりません。
そうなると、自分のキャリアをどうこう考えるよりも優先すべきことが山積みなんです。僕の場合は現時点で転職や起業は全く考えていないので、個人的な価値を高める暇があったら、
どう会社を良い方向へ持っていくかに注力すべきだと感じていました。
でも実は、それは逆で、経営する立場だからこそ自分の市場価値にもっと向き合わなければならないと気づいたのです。
経営陣はその会社の中では、地位も価値もありますが、世の中においては必ずしもそれが高いとは限りません。
我々自身の市場価値は会社、さらには提供するサービスに紐づいています。
だから会社やサービスにブランド力がなければ、尚更です。
例えば高級ブランド品は、興味の先に信用があるから皆が欲しがり、そこに希少性があるから高い値段で買われます。
サービスも同様で、提供する人間に信用がなかったらどんなに良いものであっても売れません。
市場価値というのはブランド力、つまり信用なのです。
多くの人から信用を得られていない人間が自社サービスをどんなに魅力的に伝えたところで、それを使おうとは中々なりません。
これは社内にも言えることです。
僕が新規事業を立ち上げた際にこれまで全く関わったことのない部下を複数人抱え、最初に直面したのは彼らの合意や納得です。
指示に対してではなく僕自身がまだ受け入れられていなかった、だから彼らに指示ごとの意図を説明したところで表面上の納得しか得られていなかったのです。
当然、その状態で上手くはいきません。本来の力も発揮できませんから。
先ず、すべきことは彼らから僕自身の信用を得ること、つまり彼らにとって価値ある存在になること。
そこに気づけたことで部署全体が上手く回るようになりました。
外に対しても同じで、どれだけ多くの信用を得られるかでビジネスは変わります。
キャリアは信用を得る為の最大の武器です。
何が出来てどんな事をこれまでしてきて更にどういう実績を上げてきたのか。
どうしてもセルフブランディングを考えると、自身のキャリアアップの為が一番に浮かびますが、
会社を大きくする為にも必要なことなのです。
最近だと、経営者がSNSアカウントを開設して世の中へ向けて自分の考えを発信し始めたなんて、よく見かけます。
会社と自分自身の両軸でのブランディングを目的としている人が多いですが、発信される言葉に価値を感じて貰えるのは既にその会社やその人自体に市場価値があるからなんです。
まだ市場価値のない段階で、それをブランディングツールとして使っていくのは余り賢いとは言えないように僕は感じます。
ではどのようにブランディングしていくべきか......