パラレルキャリアとは、副業ではなく「複業」と訳されることが多い言葉で、働き方が目まぐるしく変化し従来のような終身雇用制度などが崩壊している現在において非常に重要になってくる考え方です。この記事ではパラレルキャリアについて詳しく解説するとともに、そのメリットや注意点などもご紹介していきます。
パラレルキャリアとは
まずは言葉の意味について解説します。パラレルキャリアとは現代経営学やマネジメントを生み出したことでも有名な、経営学者のドラッカー氏が1999年に発表した著書『明日を支配するもの』内で提唱した、これからの社会における生き方の1つです。
パラレルキャリアの意味
パラレルとは平行・並列という意味があります。ドラッカー氏はパラレルキャリアについて「本業を持ちながら、第二のキャリアを築くこと」とまとめています。第二のキャリアとは、副業に限らない広い範囲での社外活動を指します。ボランティア活動や資格をとるなど自分のスキルアップや夢の実現、新しいビジネスを自営やフリーランスで開業するなどさまざまなものが第二のキャリアに当てはまります。副業と混同されやすいパラレルキャリアですが、副業が本業のおまけや、収入アップのために行うアルバイトのようなものであることと違い、パラレルキャリアとはお金を稼ぐことが本質ではありません。社外で行う活動と本業が相乗効果を生むなど、収入以外の面で個人にプラスの影響をもたらすことを目的とするのがパラレルキャリアの本質です。本業をおろそかにせず、別の活動に対しても本業のような姿勢で向き合うことから、「複業」と表現されるようになったという背景があります。
パラレルキャリアが注目されるようになった理由
ドラッカー氏の著書『明日を支配するもの』が1999年発行ですので、日本で注目されるまでは約20年経過しています。それではなぜ今、「パラレルキャリア」が注目を集めているのかについて解説をしていきます。
パラレルキャリア注目の理由1.<働き方の多様化>
働くとひと口に言っても正社員・契約社員・派遣社員・アルバイト・パートタイマーなどさまざまな雇用形態があります。企業に正社員で雇用され、定年退職するまで終身雇用され、年功序列で給料が上がっていくのが主流であった時代とは大きく変わってきています。パラレルキャリアが注目を集めているのは、日本における働き方が大きく変わってきていることが理由に挙げられるでしょう。正社員として入社したとしても、自身のキャリアアップのために2、3年で転職することも一般的になってきました。さらにはワークライフバランスの見直しをきっかけに、会社に縛られないフリーランスへの注目が集まったことから、1つの働き方にこだわり過ぎずに複数キャリアを形成するパラレルキャリアに注目が集まったのです。
パラレルキャリア注目の理由2.<大企業の経営破綻>
不況のあおりなどを受け、大企業が経営難になり最終的には倒産してしまうことも珍しくなくなりました。従来では「大きな企業に入れば一生安泰」だったのは過去のものとなり、自分の身を自分で守るために新たなキャリアプランを立てる必要が生じました。 若いうちならまだしも、50歳や定年間近で会社が倒産したとしたらどうでしょう。あてにしていた退職金はもらえず、雇ってくれるところもなく、仕事をしたくてもできないといった悲惨な状況になることも考えられます。パラレルキャリアが注目を集めているのは、人々の将来に対する危機意識も要因となっています。パラレルキャリアのメリット
将来のことを考えての保険としても、本業と平行して活動を行うパラレルキャリアには大きなメリットがあります。ここからはパラレルキャリアのメリットについて述べていきます。メリット1.視野が広がり柔軟な思考ができるようになる
どんな仕事でも慣れてくればある程度ルーチンワーク化します。すると新しいやり方に対して拒否感を示すなど、考え方や仕事の仕方に偏りが生じます。オフイスでは毎日同じ人と顔を合わせるわけですから、程度問題こそあれそうなってしまうのは避けられないと言えるでしょう。パラレルキャリアでは、本業とは異なる活動を行うことになるので、周りの人・環境・活動内容も本業とは異なります。そのため自然と視野が広がり、柔軟な思考が可能になります。自分ひとりではなく、周りの人と協力して行う活動であるならば、人脈作りにもつながるでしょう。メリット2.安定した状態でやりたかったことが始められる
本当はやりたいことがあるけれど、成功するか分からないから踏み出せず時間だけが過ぎてしまった経験は誰にでもあるでしょう。パラレルキャリアなら、本業はそのままに余暇でやりたいことにチャレンジができます。安定した状況から始め、もし軌道に乗ればそちらを本業にすることもできますよ。逆に失敗したとしても大丈夫。本業を継続しながらまた新たにチャレンジをすればよいのです。パラレルキャリアの最大の注意点は本業との兼ね合い
複業とも呼ばれるパラレルキャリアは、本業と同時進行で行うというだけでなく、キャリアとしてかたちにするには、ある程度力を入れる必要はあります。力を入れる必要はありますが、本業に支障をきたすようでは本末転倒です。たとえば土日の休みを丸々使うという時間の使い方ではなく、平日家に帰ってからの2時間を活動にあてるなど、無理なく続けられるところから始めるのがパラレルキャリアの始め方としておすすめです。パラレルキャリアがお金を稼ぐことも本質としていないといっても、自身が活動していくなかで収入を得ることもあるでしょう。これはモチベーションにもつながる大きなメリットである一方で、注意が必要な点でもあります。それは会社の就業規則に抵触するという可能性です。副業解禁と叫ばれている昨今ではありますが、まだまだ副業を認めていない企業は多いです。パラレルキャリアにおいて自身が行おうとしている活動が、本業を続けていく上で問題にならないかはきちんと確認しておきましょう。
働き方が多様になり、正社員になることが全てではなくなりました。自分の将来は会社が用意してくれるものではありません。日々の仕事で忙殺され、気づけば新たな道を模索することすらできなくなってからでは遅いのです。自身のパラレルキャリアを考え、実行に移すことは結果的に自分の市場価値を高めることにもつながります。ぜひ、一度自分のキャリアについて改めて考えてみてください。