企業の販売戦略を担うマーケティング。ニーズの調査から販売促進に至るまでの広い範囲で行うのがマーケティング活動です。企業によっては専門職ではなく広報や営業職が兼務しているところも多く、企業ごとで全くことなる領域を指すこともあります。
この記事では、マーケティングに携わる上で外せない人物の一人であるコトラー教授をピックアップして、彼のマーケティング論について紹介していきます。コトラーやマーケティングについて詳しく知っていなくても理解ができるように「マーケティングとはなにか」といったところから説明していきますので、コトラーについて知りたい方だけでなく、これから就職・転職でマーケターを目指す方でも参考になりますよ。
マーケティングについて知ろう!
普段の生活でマーケティングについて意識することはないでしょう。そのため会社の中にマーケティング部門があったとしても「どういう仕事をしているのかよく分からない」と思っている方も多いのではないでしょうか。なんとなく、市場調査を行う仕事だと捉えているかもしれませんが、市場調査はマーケティング活動の一部に過ぎません。マーケティングとは簡潔に述べるなら「販売戦略」を企画・実行することだといえます。製品を売るにしろ、サービスを売るにしろ、企業が利益を上げていくためには「売れるものを作る」ことが最重要です。
単純に良いものや、他より安いサービスというだけでは、顧客を獲得するヒット商品にはなりません。ヒットにつなげるためにはニーズの把握が重要なのです。たとえば暑い地域でこたつやダウンを売るのはターゲットの選定ミスだと分かるでしょう。マーケティングとは、「何を誰にどうやって売るか」の全てを包括する行動です。そのためニーズを掴むための市場調査や、企業のブランディングや商品の認知度を高めるための広報や広告、PRのためのイベント活動もマーケティングの一部と言えます。
コトラー教授ってどんな人?
フィリップ・コトラー(Philip Kotler)は、1931年米国生まれ。シカゴ大学で修士号を、MIT(マサチューセッツ工科大学)で博士号を取得。現在はノースウェスタン大学大学院(ケロッグスクール)の名誉教授です。ケロッグ大学院(ケロッグスクール)は、マーケティング界では最高峰と称されています。著した書籍は40冊を超えるとされ、主要な学術誌で発表した論文は100以上にのぼり、「マーケティング界の第一人者」と呼ばれています。マーケティング界に大きなイノベーションを起こした人物であることは間違いありません。『マーケティング・マネジメント』
コトラーの著書で最も有名なものです。1967年の出版以来、何度も手を入れながら版を重ねられています。800ページ近い重厚な著作で、古今のマーケティングを体系化して解説したこの本は世界の経営大学院のマーケティングのテキストに採用されています。何度も重版になっているこの本ですが、脚注の追加や、多少の加筆修正ではなく、改訂の度にほぼ全ページにわたって大幅に見直し、時には章の構成や目次まで見直されています。古い理論や昔の教科書とならないよう時代と共に現れる新しいテクノロジーやマーケティングの手法、フレームワークなどもきちんと盛り込まれています。そのため1967年が初版であるにも関わらず、インターネットやEコマースなどのWeb関連、そしてオンラインコミュニケーションの役割などに関する記述もあるのが驚くところです。この本のなかで、コトラーはマーケティングについて「ニーズに応えて利益を上げること」だと要約しています。
コトラーの功績
代表的な著作『マーケティング・マネジメント』で40年以上にわたって行ってきたマーケティングについて体系化してきたことがまず挙げられます。本の中でマーケティングの言葉の定義や、顧客中心の考え方、マーケティング理論やフレームワーク、顧客分析、ブランド、マーケティングに関わる組織などあらゆる事が体系化されて網羅されています。STP分析の提唱
マーケティングにおけるもっとも基本的なフレームワークであるSTPを提唱したのがコトラーです。STPとは「セグメンテーション」、「ターゲティング」、「ポジショニング」の頭文字のこと。このSTPについて少し説明します。モノを作れば売れるという時代では今はありません。過去には市場全体を対象として製品やサービスを提供することが重視されます。作れば売れるので、ターゲットを絞る必要がなかったのです。しかし、現在では安いだけ、新しいだけ、良いだけといったものでは売れません。顧客の嗜好が多様化しているので、市場全体を対象に製品やサービスを開発することができなくなったのです。たとえ無理矢理作ったとしても誰にも響かないものとなってしまうでしょう。ターゲットを絞って商品開発をする必要が生じました。これを「ターゲット・マーケティング」と呼び、それまでのものを「マス・マーケティング」と呼びます。ターゲット・マーケティングでは、市場の中から共通のニーズを持つグループを定めます。市場をグループ分けすることを「セグメンテーション」と言い、それぞれのグループのことをセグメントと呼びます。セグメンテーションの次の段階が「ターゲティング」です。それぞれのセグメントの中で自社にとって有利となるものを選出します。自社の強みを発揮して顧客を満足させることができるセグメントをはっきりとさせる作業がターゲティングです。
つづいて定めたターゲットに対してぴったりと顧客を満足させられるような商品を検討します。このことを「ポジショニング」と呼びます。この「STP」のフレームワークが、マーケティングを行う上で最も重要なもので、ありゆるマーケティングの活動の指針となります。
非営利組織のマーケティングの確立
ソーシャルマーケティングとも呼ばれるもので、これもコトラーが提唱したものです。非営利組織とはNPOだけでなく病院などの医療機関、美術館や博物館といった文化施設、大学などの教育機関、オペラやバレエ、オーケストラなどのことを指します。コトラーが提唱する以前は、これらの団体にはマーケティングは不向きだと考えられていました。そのため各団体や機関はスポンサーや資金集めに非常に苦労することが少なくなかったのですが、現在ではこれらの非営利組織においてもマーケティングが確立され、多くの大学などが自身のマーケティング組織を持っています。マーケティングの分野において、コトラーの功績は非常に大きなものであると言えるでしょう。これからマーケティング職としての活躍を目指すのであれば、コトラーの理論を学んでおくことは欠かせない作業となります。入門書としては『マーケティング・マネジメント』を少々難解ですので、基本的な知識を身につけてからトライするのがおすすめです。進化を続けるマーケティング作業は企業にとっても要の項目。大きなやりがいを持って働くことができるのではないでしょうか。