企業における経営戦略の上で重要なマーケティング。それを行うマーケターは、インターネットやスマホの普及によるデジタル化により、ますます活躍する機会が増えています。とはいえ、企業によってマーケターの役割は千差万別で、マーケティング職やWeb専門部門を設けず営業職がマーケティングを行うケースもあります。
この記事では、マーケティング業務を始めたばかりの方や、これから転職してマーケターを目指す方に向けて「マーケターに資格は必要か」というテーマについて解説します。また、マーケティングに関わる資格・検定の紹介や資格取得における注意点も記載しておりますので、資格取得を目指す場合にも参考にしてください。
マーケターの仕事
まずは「マーケティング・マーケターとは何か」について整理しましょう。
担当する業務の幅が広いことから、マーケティングの仕事について一言で説明するのは難しいと考えている方も多いのではないでしょうか。未経験の方ならマーケティングのことを「市場調査」と考えている方も多いはずですが、マーケティングとは、企業が抱える顧客(消費者)やその市場を分析して、顧客が潜在的に求める欲求を探り出すことで既存顧客の満足度向上や新たな顧客の獲得につなげる活動のことをいいます。
顧客を想像し、顧客を創造していく
キーワードは「欲求を探る」ということ。どんなによい商品やお得な商品で、他社と圧倒的な違いがあったとしても、ニーズがなければいくらWeb広告を行っても販売につながりません。それはファッションアイテムを扱うアパレルショップで、どんなに質が良くても奇抜過ぎるものだと売れにくいのと同じです。顧客がどんな商品を求めているかを分析することで売上の予測を立て、初めて商品化することができます。つまり、新商品の発売や新規事業を始めるにあたって、これなら成功するだろうという裏付けとなる分析データ全般をさまざまな角度から集めるのがマーケティングになります。もちろん既存の事業に関してもどうすればより良くなるかと分析するのもマーケティングにあたります。このようにマーケティングに携わる人間のことを、マーケターもしくはマーケティング職と呼びます。
マーケティング職には幅がある
マーケティングとは、調査することではなく戦略全般の仕事と考えるとよいでしょう。たとえば認知度を高めるために行う広報は、認知度を上げることによって企業の売上につなげるプロモーション戦略の1つです。つまりは広報もマーケティング活動の一部と言えます。現在では、企業でマーケティング関連の業務を行うだけでなく、副業をする方も増えてきました。自身でホームページを開設するなどして集客を狙う場合や、Web関連の仕事を受注する場合にもマーケティングの知識やWebスキルを取得することは重要になってきています。
さらには、個人で活動する場合にはホームページのアクセス解析などのWeb知識が売上に直結することも多いです。戦略を立てて収益を上げるためにもマーケティングやWebに関する知識・スキルは必須のものとなります。
活躍中のマーケターが資格を取得する意味
マーケティングに関わる資格や検定はたくさんありますが、現役バリバリのマーケターが勉強をして新たに資格を取る必要性は高くありません。弁護士や医師などの資格がまずは必要となる職種と異なり、マーケターは資格がなくても実務ができるからです。さらには、ひと口にマーケターといっても活動の幅が広く、企業によってマーケターに求められることが全く異なるからです。マーケターとして知識不足やスキル不足を感じていなければ、現在マーケターとして活動している人が資格を取ることは必須ではありません。マーケターに最も求められるのは資格の有無ではなく知識やスキルによって導かれる結果です。
資格取得の際のポイント
もし、資格を取りたいというのなら目的をはっきりさせるのが重要です。自身がマーケターとしてカバーできていない広い範囲での知識やスキルを身につけたい場合や、仕事上の問題はないが、マーケティング関連の資格の勉強をすることでマーケターとして働く自分に足りない部分を発見したいなどといった場合には、資格取得を狙う価値があるでしょう。また、資格や検定の勉強をすることがマーケターとして仕事をしていく上でのモチベーションにつながるといった場合にも、資格の取得や検定の受検はおすすめです。これからマーケティング職を目指す人には必要か
それでは、未経験の方やマーケターになりたての初心者の方が資格を取得することについてそれぞれ解説していきます。
マーケター未経験の場合
まずは、転職市場ではマーケターの未経験での採用が多くはないことを知っておきましょう。なぜかというと、それはマーケティングの重要性にあります。企業の戦略の根幹に関わってくる業務なので、基本的には営業職や広報、リサーチャーなどさまざまな分野での経験を経て、全体的な知識を身につけて初めてマーケターに配属されることが多いからです。転職で未経験からマーケターを狙う場合には、マーケティング関連の資格を取得していることはアピールポイントの1つになりますので、熱意を見せるためにも資格取得は有効です。また、未経験からの転職を目指すのなら、資格取得は知識を身につけるためにも重要な意味があると言えます。
マーケターになりたての場合
すでにマーケターとして配属されている場合にも資格取得を目指すことは、初心者マーケターにとって業務にも活かせる有意義なことです。Web知識やスキルは実際のマーケター業務でも身につけられますが、広い分野を扱う職場で働いている場合は、あまり使わない知識もあります。マーケターとしてクライアントに専門用語で質問を受けた場合など、何のことか分からないことがあってはなりません。実際に社外で会社のマーケター代表として取引先の方と話す機会があるのなら、マーケティング知識を身につけるための資格取得は大変有意義なことだと言えます。また、企業内でもマーケターによって担当分野が異なる場合などにも、資格や検定にむけての勉強で知識を身につけることで、同僚とも共通言語で会話がしやすくなるでしょう。
マーケティングに関わる資格・検定
ここからは、マーケティング関連の資格・検定のうち主なものをいくつかピックアップして紹介します。数あるマーケティング関連の資格・検定の中でもマーケターとて働く上で実践的に役立つ、おすすめできるものに絞っていますが、それぞれに特徴がありますので、自分の立場や目指すマーケター像に応じて選んでください。マーケティング・ビジネス実務検定
出典:マーケティング・ビジネス実務検定
マーケティング知識を総合的に学べる検定です。C級・B級・A級の3つの級に分かれており、C級で基礎知識を、B級でマーケティングの運用に関する知識を学びます。C級とB級が初心者向けのものとなっています。
特定の職業、業種などにとらわれない共有のマーケティング実務知識が学べるので、全くマーケター経験がなく、ウェブの知識もスキルも不足している初心者の方は、マーケターとしての第一歩にこれを目指すとよいでしょう。
Webアナリスト検定
出典:Webアナリスト検定
Googleが提供する「Googleアナリティクス」というアクセス解析ツールの使い方を学び、実務に活かしたいときに役立つ検定です。単純にツールの使い方や統計データの読み方だけでなく、データをもとにどこに課題があるのかといったところまで分析するスキルを養います。
すぐに使える知識なので、マーケター実務にも有用です。GoogleアナリティクスはWebマーケティングを行う上で使わない方が珍しいほどですので、最低限のWeb知識としても抑えておきたいところです。
IMA検定
出典:IMA検定
Webを活用した実務スキル取得する検定で、初心者向けのStandardコースとProfessionalコースの2つがあります。インターネット広告やFacebook広告の活用手法など、最新のWebマーケティング知識が身につけられます。テキストをもとにした講座の受講と受験がセットになっています。
プロモーショナル・マーケター認証資格
出典:プロモーショナル・マーケター認証資格
セールス・プロモーションに特化したマーケター認証資格です。顧客となるターゲット層を購買行動へ移すための動機づけの仕組みにフォーカスして学習することができます。マーケティングを行う上で重要な知識が得られるでしょう。
プロモーション戦略の設計や開発、メディアやツールの制作が試験科目で、知識試験と実技試験の2部構成となっています。
ネットマーケティング検定
出典:ネットマーケティング検定
Webマーケティングに関わる基礎知識全般が問われ、レベルは比較的やさしいです。SEOやSEM(検索エンジンマーケティング)の知識をゼロから得たい人向けの内容となっています。Webを利用した集客やプロモーション手法などを身につけるための基本が学べます。
MBA(経営学修士)
出典:MBAのグロービス経営大学院
マーケティングと経営両方に役立つ資格を取得したいならMBA(経営学修士)がおすすめです。経営の視点からマーケティングを捉える力が身につけられるので、マーケターに限らずさまざまな業界でも役立ちます。
ただし、MBAを取得するためには講座を受けにビジネススクールに通う必要があり、資格取得までは時間がかかります。TOEICなどのようにキャリアアップの目的で通う方も多いです。資格によってレベルや内容の違いがあり、一概にどの資格が良いかを述べることはできません。まずは、マーケターとして活動していく上で「資格を取得するべきか」から考えて、マーケターの自分に欠けている知識を補う、基本的な知識を身につけるなど、目的に合わせて内容を吟味した上で、資格や検定の取得に臨むことをおすすめします。