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面接官「では、最後にBさん。お願いします」
応募者B「ハイ!私をものに例えるなら、潤滑油です。」
それはもうすがすがしいほどの言い切りでした。おそらくこの質問が来たら潤滑油と返すと決めていたのでしょう。もうぶれないし、芯が強い。絶対潤滑油じゃなくて鉛筆の2Hとかの方がよかったんじゃないかと思う。
面接官もこれには予想外だったのか割と食いつき気味で話を聞いていましたが、言っていることは僕やAさんと同じような事だったので、面接官もどうリアクションすればいか困っていました。
そうして面接会場を油まみれにして、僕たちはその場を去りました。何かシンパシーを感じるものがあってか、その後みんなで連絡先を交換したのを覚えています。そしてその後の報告で3人目のB油だけ選考が進んだことが判明しました。おそらく、あの空気の中で周りに流されず我を通した芯の強さが買われたのでしょう。
僕が後悔していたことは面接会場に潤滑油が3人もめぐり合わせてしまった運命に対してではありません。自分の準備の甘さと自己表現力の乏しさに対してです。自己分析をした結果自分のアピールポイントが「円滑な人間関係を築き上げるコミュニケーション力」や「業務バランスを考えて効率よく進められる能力」だとするならば、それを表現する方法は「あなたをモノにたとえると何ですか?」という質問だけにとどまらないはずです。
例えば、「あなたの長所はなんですか?」という質問に単に
「アルバイト経験で培ったコミュニケーション力です」と答えるのではなく
「アルバイトのみんなが働きやすいように場を和やかにすることです。顔も似ていることから渡部戦場カメラマンのモノマネをよくしておりました」と回答すると、「じゃあちょっとやってみてよ」とその後のコミュニケーションの流れを生み出します。
コミュニケーション力を強みするのならただ実績や経験を話題に出すよりかはこちらの方がよっぽど面接官に強みが伝わりやすいです。
また、効率がいいことをアピールするにも面接官の質問には、【結論→理由】という順番を守って答えることで効率の良さが相手に伝わる確率がぐっと上がります。例えば
「あなたの尊敬する人物は誰ですか?」といった面接官の質問に
「柔らかな物腰で、丁寧に自分の話を相手に伝えようとするその姿勢を立派だと思い、私は渡部戦場カメラマンを尊敬しています」と答えるよりかは
「私は渡部戦場カメラマンを尊敬しています。理由としては自分の話をしっかりと相手に伝えようとしている姿勢が立派だと思ったからです。柔らかな物腰で相手がスッと話に入り込めるような喋りの雰囲気を演出していることと、だれが聞いても聞き取りやすい声で話している彼の表現スタイルは尊敬に値します」と伝えたほうが効率の良さをアピールできるでしょう。
そういったちょっとした工夫やアクセントを加えることで相手のイメージが大きく変わることがあります。
そんな感じで面接時の表現方法について少なくとも当時よりは確実に自分の魅力を面接官に伝えられる自信があります。
あの時の質問を今聞かれたらきっと僕はこう答えるでしょう。
「あなたをモノにたとえると何ですか?」
「潤……滑……油……です」