• 2022/11/11
  • 連載企画
  • はりこらむ

はりこらむ 第66回「スタートアップ ~自分たちが置かれている共通認識の重要性~」

  • 萩原 張広  
article-image


スタートアップ

~自分たちが置かれている共通認識の重要性~


⇒第65回「ベテランになっても再新再生する重要性 ~一人でスナックに飛び込む~」はこちらから


 私自身が会社経営を客観的に見る勉強になればと思い、古くからの友人に依頼され、個人的に顧問を引き受けている会社があります。その会社は歴史的にはもう30年近い会社なのですが、以前よりやっていた事業を売却し、SaaSモデルの新規事業にチャレンジしています。

 事業売却により社員は10名ほどになり、利益は出ていないので事業としてはスタートアップの状態と言えます。現在の社員には以前の事業からミッションを変えてやっている方もいるので既存事業からスタートアップへの転身とも言えますね。

 顧問として見ていると、社員の方の意識改革が結構大変だと感じています。既存事業は、利益は出ていて成功パターンは出来上がっていたので、そのやり方を踏襲して業績を上げる事が重要なミッションになっていました。営業は期間業績の目標達成に重点をおいて活動し、サービス部門は顧客の要望にともかく対応する事を大切に日々の業務に取り組んでいました。基本的に昨日と同じ考えとやり方で全力を尽くしていく事が重要だし、当然そこで働いていた皆さんはそういった思考回路と習慣になりますね。

 一方、スタートアップの場合は、現状の延長線上に未来はなく、赤字ですからそのままの状態が続くと、いつかは資金が枯渇して終了する事になります。現実には、ビジネスの可能性を示して経営者が追加の資金調達に動き、さらにチャレンジを続けるというシナリオもありますが、昨今の市場の変化や不透明性、SaaSベンチャーの期待感の低下などからセカンドステージの資金調達の難易度は上がっていますね。SaaS系のビジネスモデルに可能性がある事自体には変わりはないと思いますが、今後キャズムを乗り越えてさらなる成長を続けるSaaSベンチャーと負け組になるところの二極化が進むかも知れません。

 スタートアップのとりあえずのゴールを、「継続的な利益成長モデルが出来た状態」と定義すると、そのプロセスはプロダクト開発→営業開発→事業開発という3段階に分かれると思います。もちろん優秀なスタートアップ経営者は最後の事業開発までのシナリオを仮説で作成してチャレンジする訳ですが、仮説の検証の場となる事業の現場は、まずはリリース出来るプロダクトを開発する時期、そしてそれを拡販しながらサービスを市場にフィットさせていく時期、そしてチャーンレートや顧客フォローコストなども含めてちゃんと利益が出てそれを拡大再生産できるモデルとして完成させる時期になるのかと思います。

 事業の現場を居酒屋に例えると、まずは店の顧客ターゲットやコンセプトを策定してお店の設計やメニュー開発などを行う時期、そして開店して「ぐるなび」などに広告も出して、集客して実際にお客様と接して、メニューやサービスをフィットさせていく時期、ある程度リピーターとか出来て、集客のCPAとかも予測できて、収益構造が見えて来て、まずは1店舗でお客様に喜んで頂いて利益も出る状態が確立する。そして再現性を再度検証して、多店舗展開かFC化とか次の利益成長のステージを模索していくみたいな感じですね。

 スタートアップの場合、そこで従事する人達は「今自分がどういう状態の会社・事業の中で働いているのか」「その状況や目的の中で自分はどんなミッションと役割を果たし、日々の業務の中でどういう観点で仕事に向かって行けばよいのか」をちゃんと理解している事が重要だと思います。

 例えば営業の仕事でも、既存事業でモデルが出来ていれば、まずは受注をとる事だけに集中すればよいですが、サービス開発から営業開発に至るプロセスでは、「その1件の受注に再現性はあるのか?」「1件受注する為にかかったパワーは、生産性の観点で見た時に最適なのか?」という視点が重要になります。事業開発の最終段階に入るとカスタマーサクセスの対応なども含めた事業全体としての収益性と再現性が問われる様になります。

 以前は、起業間もないベンチャーの場合は、トップがその観点を持って見張りながら一人で進める事が多かったように思いますが、これをマネージメントチーム、もしくは実際に業務を行っているメンバーがトップと同じ意識で進める事が出来ると、PDCAが高速で回るため、成功確率が上がるようになるのだと思います。

 企業規模が大きくなると、こういった認識を全社員が共有する難易度は格段に上がって難しくなり、組織的な施策で対応する場合が多くなります。人数が少ない間は、泥臭いですが、頻繁に課題意識や視点の共有みたいな事をダイレクトに行っていく必要性があるのだと思います。昭和っぽいですけど、私も起業間もない頃は、ほぼ毎日の様に仕事後に社員と飲んで仕事の話ばかりしていましたね。そういった活動がしづらい世の中ではありますが、基本的なところは変わっていないのだと思います。

■萩原 張広 Profile
株式会社エムエム総研代表取締役CEO。株式会社リクルートにて法人営業、営業マネージャーとして7年のキャリアを経て、株式会社エムエム総研を設立。法人営業のコンサルティングサービスを大手IT企業やベンチャー企業に向けて多数提供。1998年、ニューヨークでの視察経験から日本でのBtoBマーケティングの必要性と可能性を感じ、業態をBtoBマーケティングエージェンシーとする。以降、数百件のマーケティングプロジェクトに関わる。

「マーキャリNEXT CAREER」無料キャリア相談実施中

マーケタースキル診断公開中!!

関連記事

検索条件を変更する

フリーワード

記事カテゴリ
タグ