• 2020/12/18
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【DX Interview】株式会社マクニカ・堀野氏「デジタル化で必要性が増した顧客・ユーザーへの『寄り添い感』」

  • マーキャリ 編集部
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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、営業やマーケティングのデジタル化が加速する中、デジタルによる効率化が謳われつつも、多くの企業が新しい課題にも直面しています。このインタビューでは半導体、セキュリティ、ネットワーク、AI/IoTにおけるトータルサービス/ソリューションプロバイダーであるマクニカでコーポレートマーケティング室長と子会社のマクニカネットワークスでマーケティング部長を兼務する堀野史郎さんに、実際の現場の変化についてお話を伺いました(聞き手: エムエム総研取締役 河村 芳行)

従来からのデジタルへの取り組みが、コロナ禍でも活かせた

河村:現在、堀野さんはマクニカ本体のコーポレートマーケティング室でデジタルマーケティングにおけるデータの統合推進や運用ポリシーの管理をされていると伺いましたが、データ統合についてはどのように進められてきたのでしょうか。

堀野:これまでは営業部門や各カンパニー単位で個別にデータ管理していましたが、現在では統合しつつあります。MAはもう、昨年度の途中から完全に一つになっています。

河村:デジタルトランスフォーメーションの潮流を受けて加速してきたのでしょうか?

堀野:もともと、おととしぐらいからマクニカネットワークスで根幹の設計をして、インサイドセールスとMAと、当時入れていたSFAとの連携のあたりの粗い青写真を作っていました。テスト運用フェーズを経て、昨年度の下半期ぐらいからはそれを全社に広げています。年明けにコロナ禍になりましたが、2年ぐらい前からインサイドセールスのノウハウやウェビナーのノウハウも、社内へ共有していたのは幸いでした。

当社は基本、フィールドセールスが行けるエリアを中心に営業活動をしつつ、パートナー様とともに全国をカバーして活動をしております。対面を重視したセミナーを行ってきたものの、全国をカバーすることも重要視し、ウェビナーも行っていたのです。そのノウハウのおかげで、新型コロナウイルスが広まってきた2020年3月に入ってからはすべてのセミナーをウェビナーにシフトすることがスムーズに行えました。
ツールはお客さんに合わせて使い分けています。基本はWebexですが、Zoomが必要であればZoomでやる。というように。


今回のインタビューはオンラインにて実施。

セールスのオンライン化による課題

河村:ウェビナーやインサイドセールスに関しては、このコロナ禍で全社的に一気に取り組みを始めているということでしょうか?

堀野:そうですね。セールス側はWeb会議ツールによる非対面で、いかに初めてのお客様とビジネスになる種を作れるかがカギになっています。すでにリレーションがある方とは、リモートになってもコミュニケーションを取れると思いますが、問題は新しいお客様を作ることですので、そのための施策を考えて実施をしています。

河村:他の企業様へのインタビューではリードタイムが延びている話しが上がってきましたが、御社の状況はいかがでしょうか?

堀野:リードタイムが長くなっている認識はあって、それをどう短くするかが今の課題ですね。進めている取り組みに関しては極めてベーシックです。会議の先方様とこちらのメンバーが、事前に会議のアジェンダを整理しています。名刺交換できないですから、誰が出席されるとか、その会議できちんと最初に自己紹介をやりましょうなどと準備しています。オンライン名刺交換ツールも出てきていますが、そういう極めてベーシックなことをしながら、いかにアジェンダ通り淡々と進んでしまいがちなWebミーティングに行間、バッファを作れるかを大事にしています。

河村:商談シーンで複数の先方様が出席された時に、いわゆるリアル現場で言う目配せがないので力関係が分かりづらいという話も聞きますね。

堀野:いかに先方との関係性をつくれるかに尽きると思っています。やり方は、先述のとおり極めてベーシックで、その中でも密なコミュニケーションを心がけています。例えば、受信したメールに対しては自分が決めた時間の中で必ず返事をして、自分でボールを持たない、答えがなくても「承りました。何時間以内に返事をします」と返事を出すなどです。ソーシャルディスタンスによってコミュニケーションを密にしづらい中でも、やり方次第で密にできるのではと社内で話しています。

河村:オフライン時と比べて、オンラインセミナーやウェビナーでは施策として得られる成果も変わって来ていますよね。

堀野:やはり、隙間時間に参加しやすいですし、ながら参加もしやすいですから量は増えています。ただオンラインセールスと同じで、次のフェーズに行きづらいですよね。

リモート下での成果管理

河村:今、在宅勤務はどのような状況でしょうか? またリモート下におけるマネジメントの取り組みについて教えてください。

堀野:グループ会社も含めた全体で4月から9割が在宅勤務です。コロナでデジタル化は3、4年分ぐらい前倒しになったと感じています。またマネジメントに関しては、弊社はもともと、営業の活動量を可視化していて標準値が決まっているので、活動量を全員分並べて見ています。

河村:活動を数値で見てPDCAを回して意思決定につなげる、マネージャーの活動はどうでしょうか?

堀野:そうですね。残業が多い方の負荷を落とすような振り分けや、リソースが不足している箇所に人を増やすなどのマネージはしています。その中で、活動量については、管理職が各々権限委譲されたプロダクトのオーナーと調整をして組織運営を行っています。

河村:在宅下における社内の課題やメンバーのフラストレーションに感じることはありますか?

堀野:やはり、リアルで訪問したいと言うメンバーは多いです。一部、お客様先への直行での訪問は行っていますが、お客様側でリモート勤務というポリシーの場合、どうしてもリモートでしかできないですから。また、案件をどれだけスピードを上げて受注まで持って行けるかは苦労しています。 また、チームコミュニケーションを重視し、毎日の朝礼・終礼の実施、ウェブ会議ツールでの顔出しの奨励などを行っています。

河村:定性的なノウハウ・情報共有については、どのようかたちで実施されているのでしょうか?

堀野:弊社では、全社でコンテストを行っています。「こんな工夫をしてこういった結果が出ている」というのを営業の皆さんには応募いただいて、そこから順位を決め授賞式まで実施します。マーケ側では毎月テーマを決めて『デジタルマーケティングキャンペーン』を行っています。例えば、ウェビナーのパフォーマンスに関しては、アンケート結果でウェビナーを評価していきます。「Aというウェビナーで顧客満足度が5点満点で4.1でした」というかたちでの競争です。ウェビナーの最終的な目的は売上貢献ですが、売上自体はコントロールがマーケはできないので、まずはリードの質の評価としてのアンケート結果になります。

社内ミーティングの変化と人材マネジメント

河村:社内のミーティングでは、頻度の変化は起きていますか?

堀野:増えていますね。移動時間がないですから。傾向としては、この人に相談をすれば課題が解決できる、あるいは解決できる誰かにたどり着けると思われている人にはやはり会議依頼が集中しています。

一方で、会議に招集しても何も発言をしない人、貢献しない人はだんだん呼ばれなくなります。ジョブアサインでその人に割り当てられていても、会議で期待されている発言がなければ、呼ばれなくなって、後々情報共有、忘れ去られるといったシビアな状況になります。そうならないためにはマネージャーのフォローが必要ですね。

河村:デジタルが進む中で、これからマネジメントに必要になるスキルとは、どのようなものでしょうか?

堀野:デジタル化に対しての教育は、以前からスキルセットとかトレーニングのポートフォリオみたいなのは作っていました。それをちゃんともう一回整理し直して、今は計画的に内製でコンテンツを用意しウェビナーを通じた育成をやっています。専門的な内容の場合には、外部講師を招聘することもあります。そして、ウェビナーは録画して教育コンテンツをリスト化し、「見てね」っていうのもやっています。コーポレートマーケ室で計画をして、全社に「コンテンツライティングの初級編やります」とか。

インタラクティブ性が鍵となるオンラインセミナー

河村:最近のオンラインセミナーの場合、質問やチャットなどの参加者とのインタラクティブなコミュニケーションの促進が課題とも思いますが、その点いかがでしょうか。

堀野:ライブで盛り上げるのは、やはりチャットやFAQへの対応の「寄り添い感」ですね。そのためには、プレゼンする人とチャットで対応する人を分けて、プレゼンの最中から質問に対しては返事担当の人が答えるといったインタラクティブ性が満足度を高めますね。以前、私はFORCASさんのセミナーに事例登壇してパネルディスカッションしたのですが、3人登壇して、話していない2人は質問に真面目に答えていったことで、盛り上がりましたね。そこでの経験はヒントになりました。

これから求められる人材要件

河村:人材要件に変化は出ていますか?

堀野:必要なポジションによりけりですね。例えば、今まで私が欲しいと思っていても遠慮があって言えなかったポジションに関しては採用活動を進めることができています。
というのも、コロナ禍によってデジタルが進んだことでデータマネジメントができる人材はマストだと言えるようになりました。あとはWeb製作の人材です。外注だとどうしても、要件定義やテストで工数が都度かかり、「Web1枚で1~数週間もかかってしまう」という話になるので、ここも今、模索しています。
また、Webコンテンツの量を増やすのは必然ですので、スピードを上げるためにはやはり内製化は必須です。

河村:セールスに求める要素に関しては、今後変わる可能性はございますか?

堀野:変わりますね。従来の正しき営業もできているかもしれませんが。きちんとデータからターゲットリストを作る、インサイドセールス的なスキルが必要になってくると思います。フィールドセールス自体がよりインサイドセールス化していき、インサイドセールスがより売上、受注のサインをもらうフィールドセールスの役割までに対応していき、だんだんと同化していくと思っています。

もし私が採用担当者であれば、インサイドセールス出身で「私はフィールドセールスをやりたいです」といった人を採りたいですね。「今いる会社だとキャリアパスがフィールドのほうに行けないんです。だから私は自分のキャリアをフィールドに振りたいので転職したいです」みたいな人がいればナイスですね。

編集:森田 旭洋
■編集後記
コロナ禍の前から行っていたウェビナーやインサイドセールスのノウハウを社内へ共有できたというお話からもわかる通り、既にデジタルへシフトが進んでいたマクニカさん。さらにデータ統合やデータを扱う人材の採用も進められており、その活動もまた詳しくお聞きしたいと思いました。堀野さんありがとうございました。


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