• 2020/09/24
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小売業の最終形態? OMOによるデジタルトランスフォーメーション(DX)

  • マーキャリ 編集部
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目次

この記事では、近年業界を問わず話題となっているデジタルトランスフォーメーションについて、小売業で行われている「OMO」戦略と関連付けて解説しています。詳しい事例や、用語の説明についても基礎的なところから紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

OMO(Online Merges with Offline)とは?

「OMO」とは、主にオンラインがオフラインを包み込んだ状態のことや、オンラインとオフラインの融合を前提とした戦略のことを言います。ひとことで言えばオンラインとオフラインを別のものと捉えず、1つのものとして融合させ、より質の高い顧客体験を目指す動きとなるでしょうか。


インターネットやスマートフォンが発達した現代においては、リアルの生活においても常にオンラインとつながっています。商品を購入したり外食をしたりする際には当たり前のように「検索」をして「他と検討比較」をして購入を決定しています。


そこで企業側には、オンラインとオフラインを融合・駆使することで、「どうすれば質の高い情報を届けられるか、価値を伝えられるか」、「顧客と継続的な関係が築けるか」を考え抜き、サービスに反映させることが求められています。  

OMOはO2Oやオムニチャネルの進化系

OMOは急に現れた概念ではなく、これまでにあったO2Oやオムニチャネルが進化したものだと考えられます。OMOへの理解を深めるためにO2Oとオムニチャネルについて確認しておきましょう。  

O2O

O2Oは「Online to Offline」の略称です。直訳すると「オンラインからオフラインへ」となるように、ECサイトなどのオンラインから実店舗(リアル店舗)への誘導を目指すものです。O2Oの段階ではオンラインとオフラインは完全に別のものとだと切り分けて考えられています。O2Oの代表的な施策としては、ECサイトに訪れたユーザーに実店舗で利用可能なクーポンを発行するといったものが挙げられます。あくまで実店舗のためにデジタルを利用しているのが特徴的です。  

オムニチャネル

オムニチャネルとは顧客が商品を購買するまでのプロセスについて、オンラインとオフラインの垣根をなくすことを意味します。購買する際のプロセスとは、認知・情報収集・比較検討・購入・アフターサポートなどがあてはまります。オムニチャネルはO2Oの進化版と捉えて問題ないでしょう。オムニチャネルではそれまで完全に切り分けられていたECサイトと実店舗の垣根をなくすため、たとえばECサイトの在庫と共有したり、ECサイトでしか紐づけできなかった購入者の情報を実店舗でも利用できたりというようにO2Oと比べてはオンラインとオフラインの境界が薄くなっています。


オムニチャネルの代表例として挙げられるのが、アメリカの大手百貨店チェーン「メイシーズ」です。メイシーズが行ったオムニチャネル戦略は、実店舗とお店のECサイトの在庫を統一し、店舗スタッフにはタブレット端末を貸与することで、そのお店にある在庫だけでなくECサイトの在庫も含めた商品の提案が行えるようにするというものでした。これまでECサイトとリアル店舗は別のものと考えられる傾向にありましたが、ECサイトで購入した商品を実店舗で受け取れるようにするなどの顧客に合わせたサービスを展開し、大きく業績を回復させました。


メイシーズの成功例から、リアル店舗とECサイトの顧客・販売データ、在庫データを統合したりリアル店舗とECサイトのサービスを近づけたりしようとする企業の動きが活発になり、近年ではそれがスタンダードになってきた状況にあります。


日本のオムニチャネル事例としては無印良品が有名です。無印良品はスマートフォンアプリの「MUJI passport」を使ってオムニチャネル戦略を実施しています。これは無印良品のニュースや各店舗在庫検索に加え、ECサイトのように商品の注文もできるアプリです。リアル店舗とECサイトの垣根をなくすオムニチャネル戦略として、アプリをECサイトとして完結させるのではなく、実店舗への誘導も可能なように、商品を購入しなくても実店舗を訪れるだけでポイントが加算されるマイレージプログラムというサービスを実施しています。各店舗の600m圏内に入るとマイルが溜まるチェックイン機能も搭載し、チェックインした場所や時間帯に応じてクーポンや最新情報が受け取れるようにもなっています。


オムニチャネルの特徴は、リアル店舗からECサイトに誘導する、またその逆というような一方通行の流れではなく、リアル店舗とECサイトの連携を強化することで、顧客の都合によってどちらも不便なく利用できることを目指し、結果として事業全体を成長させていこうとするものです。


OMOが話題になる中でも、しっかりとオムニチャネルが実行できている企業は少ないです。実店舗には基本的に売上目標がありますので、店舗の在庫をECに回すことや、実店舗に訪問してくれたお客様が最終的にECサイトで購入した場合、実店舗の評価はどうなるのかといった現場の不満を解消できていないことが多いのです。この解決にはリーダーシップを持った経営陣の経営戦略の発信が欠かせないでしょう。


また、現場側は今やECサイトが実店舗への訪問につながっていることも知っておくべきでしょう。実店舗に足を運ぶ人であっても事前にECサイトなどで商品を確認し、欲しいと思ったものをその目で確かめたり試着したりする目的でリアル店舗に行くことが多くなっています。  

OMOとオムニチャネルの違い

OMOがオンラインとオフラインの融合、オムニチャネルがオンラインとオフラインの境目をなくすといった考え方ですが、この2つの違いは少し分かりにくいかもしれません。


実際にOMO戦略として実施されているプロジェクトが実際はオムニチャネルと同様のものであることがあり、誤解や同一視されやすい傾向にあります。 OMOとオムニチャネルの一番の違いは、「視点」です。オムニチャネルはECサイトと実店舗で在庫を共有するなど、いわば機会損失を防ごうとする企業視点の考え方です。一方でOMOは「オンラインとオフラインを別のものと捉えず、1つのものとして融合させ、より質の高い顧客体験を目指す動き」ですので、消費者やユーザーといった「顧客視点」であるという違いがあります。実際の施策の内容よりも、考え方の違いと捉えると分かりやすいでしょう。


顧客によりよい購買体験をしてもらうために、オンラインとオフラインを分けて考えるのではなくオンラインがオフラインを内包したものであると捉えていこうとしているのです。このような状態を「アフターデジタル」と表現することも多いです。  

OMOの事例

OMOについて語る上では中国の現状が好例です。現在中国ではスマートフォンで支払をする文化が既に根付いています。公共料金や百貨店などでの買い物だけでなく、屋台でまでもスマホで決済できる状況にあるほど、デジタル化が進んでいます。そんな中国において、世界で最もOMOの推進が進んでいると言われているのが、中国EC市場最大のモールを経営するAlibaba(アリババ)が出資しているスーパーマーケットです。どのようにオフラインとオンラインの融合を図っているのか見ていきましょう。


・スマートフォンアプリでの決済

圧倒的にスマートフォンで支払いを行うモバイルペイメントが普及している中国らしく、アリババ出資のスーパーではアプリを使って商品のバーコードを無人レジにかざすことで支払いが完了します。


・アプリを使って「購入」以上の顧客体験

スーパーの専用アプリで商品に付属しているQRコードを読み取ると、商品が産地から店舗までどのような手順で届けられたのかのすべての履歴を確認できます。さらにその食品を使ったおすすめ料理の調理動画や、料理にはほかに何が必要なのかといった情報も得られます。もちろんその場で食材や調味料をまとめて購入もできます。食材を買う際の安心感といったものだけでなく、買い物をすることに「楽しい」という付加価値を与えています。


・魅力的な店舗づくり

単純に食品を買う場所としてだけでなくアトラクション性も備えた実店舗運営をしています。お店が買ったものをその場で調理してくれるイートインスペースなどを設けECサイトにはない実店舗ならではの価値を創造していると言えるでしょう。


・30分以内の配達

お店に行かずとも専用アプリで注文ができるだけにとどまらず、注文したものはお店から3km圏内なら30分以内に配達してくれます。もちろん自宅から注文可能ですが、実店舗で実際に目で見てからその場で注文すれば、手ぶらで家に帰っても家に着くころにちょうど届きます。



もう1つOMOの例として知られるのは「Amazon Go」です。Amazon Goは、レジに人がいない無人コンビニです。人がいないと言うよりは、レジ自体がありません。専用のアプリをインストールし、入口のゲートで自身のQRコードをかざして入店します。店内の天井にはたくさんのカメラがあり、棚にはセンサーがついています。これらで人の動きを判定し商品を棚から取るとスマホ上にその商品が表示される仕組みです。


もちろん表示が間違っていれば自分で削除も可能です。商品を戻せば商品の表示は一覧から消えます。専用の買い物かごではなく自身で手に持っても自分のショッピングバッグに直接入れても問題ありません。会計は入場時のゲートを通るだけで完了しますので、レジに並ぶ手間は発生しません。レジにスタッフを配置する必要がないので、人件費を抑えることができます。人の手で行うのは商品の在庫と鮮度のチェック、品出し程度です。


OMOの事例を見ると、日本に比べ大分進んでいることが分かるでしょう。しかしここで頭に入れておきたいのは、中国のスーパーにしろAmazonにしろ、自社の中で膨大な量のデータをどんどんと蓄積し、それをマーケティングに活かすことが可能だということです。


たとえば中国のスーパーなら、誰がいつどの商品のQRコードをスキャンした、何を買ったという顧客の行動データはもれなく取得していることになります。そのデータを元にして店舗ごとの精度の高い需要予測や仕入れが可能になりますので、店舗ごとの大きな倉庫も必要なくなります。コストカットにもつながるので高品質な食材がより安く販売でき、顧客満足度は上昇し続ける流れが生まれます。


つまりOMO化が遅れれば遅れるほど企業としての競争力が相対的に遅れることになります。日本は小売業に限らずデジタルトランスフォーメーションが遅れていることが大きな課題となっています。次はデジタルトランスフォーメーションについて確認しておきましょう。  

デジタルトランスフォーメーションとOMO

近年耳にすることが増えてきた「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」。経済産業省はデジタルトランスフォーメーションについて以下のように定義しています。「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」。


つまりは製品やシステムをデジタル化するといった取り組みではなく、「デジタルを使ってビジネスモデルに変革を起こすこと」と言えます。当然ビジネスとは企業や一般消費者に向けて行うものですので、企業内だけでなく社会全体に変革が起きることになります。 デジタルトランスフォーメーションの推進が日本は大きく遅れているのです。しかしなんとなく新しいツールやシステムを導入しさえすればよいというイメージを持っている人も少なくないでしょう。


デジタルトランスフォーメーションについてのよくある誤解としては「デジタル化=デジタルトランスフォーメーション」というものです。環境の変化に適応するための手段としてデジタルのテクノロジーやツール、データを活用することがデジタルトランスフォーメーションの本質です、デジタル化はあくまで1つのステップにすぎません。この点についてはしっかりと頭に入れておいてください。


新たなデジタル技術を利用したこれまでにないビジネスモデルがどんどんと生まれてきています。時代につれてビジネスモデルの展開方法が変化し新規参入企業も増えてきています。そのような状況の中で既存の企業が収益を上げ続けるためには、場合によっては業務全体の抜本的な改革が必要となります。


そこで求められるのがデジタルトランスフォーメーションを進めること。競争力を維持するためには従来通りのやり方では革新的な新規参入企業に太刀打ちできません。デジタルトランスフォーメーションを進めることは競争に勝ち抜いていくために避けては通れないものなのです。


日本はすでに人口減少が始まっている国です。単純に考えて日本の労働人口も減少しますので、「今まで通りのやり方」では人手不足で通用しなくなります。今後日本が国際社会で競争力を保つためにも、小売業においてはすでに人々は常時オンライン状態にあることを前提に、実店舗の役割や価値について考えていく必要があると言えます。

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